みなさんは「上場」という言葉を聞いて何を思い浮かべますか?
新聞の株式欄で上場企業の株価がリストアップされていたり、就職先や投資株式の銘柄を選ぶ際の判断材料の一つの目安になったりと、上場は比較的身近なものです。
しかし実際のところ「上場」とは何なのか、そしてそのメリット・デメリットを見てみましょう。
上場とは?
「上場」とは、会社が自社の株式を証券取引所で自由に売買されるようにすることです。そして、「上場企業」とはその株式を発行し、証券市場に登録している会社を指します。
上場は、会社が創業者の手を離れて、社会一般の公のものになることを意味しています。
株式の上場により、会社は資金調達が容易にできるようになるほか、会社の知名度アップにもつながり、ビジネスへの追い風となります。
ただ、上場には株式単位数、時価総額、利益額、事業継続数、株主数などの項目で満たすべき基準があり、会社はそれをクリアしないと上場することはできません。
現在は、将来性のある中堅企業に上場の機会を与える目的で審査基準が緩和される傾向にあったり、ベンチャー企業向けの証券取引所もあり、比較的緩やかな基準で上場できるようになっているようです。
➡こちらの動画でも上場について解説しています。
上場の種類
上場の基準は各取引所に設置された市場ごとに異なっています。
日本には証券取引所は複数ありますが、全上場企業のうち9割以上が上場しているのが東京証券取引所です。
市場第1部、市場第2部、JASDAQ、マザーズという4つの市場に分かれています。
上場審査は二部より一部の方が、条件が厳しく設定されています。
初めて上場する会社は登竜門として二部上場し、実績を積んでから一部を目指すのが一般的なようです。
JASDAQとマザーズは新興企業やベンチャー企業向けの市場で、この上場基準は一部・二部よりさらに緩くなっています。
上場のメリット
ここからは、上場のメリットについてまとめています。
上場のメリット1:社会の信用が格段に高まる
上場によって、財務状況や業績、将来性への公的なお墨付きを得ることになり、社会や金融機関に対する信用力も上がります。
上場のメリット2:資金調達が容易になる
メリット1に示した通り、上場は社会からの信用の証となるので、融資も受けやすくなります。
上場のメリット3:知名度アップ
社会に広く知れ渡ることになり、ビジネス面でも追い風となります。
能力のある人材や新卒社員の確保も以前より楽になります。
上場のメリット4:健全な経営体制の実現
上場の基準をクリアするためには、社内の経営体制の見直しが不可欠です。
その改善プロセスの実行過程で、法令順守や内部統制、コーポレート・ガバナンスといった、リスク面を考慮して不正を防ぐ仕組みのある健全な経営体制が築かれていきます。
上場のメリット5:社員のやる気が上がる
会社が従業員や取締役に対して、予め決めた価格で将来買い取る権利を与える「ストックオプション」や従業員持ち株制度の導入が働く意欲を高めます。
上場のメリット6:創業者利益の享受
上場後株式の新規公開時に、創業者が保有する自社株式を売り出すことで利益を得ることができます。
上場のデメリット
上場のデメリット1:上場の準備に時間と費用がかかる
上場にかかる費用は、上場審査手数料の他、引受手数料、監査報酬、印刷会社への支払いなど多岐にわたります。
会社の規模や上場による調達資金の額が大きい程コストも増大します。
上場のデメリット2:上場継続のための費用
上場後も、年間上場料や監査報酬、株主名簿管理料などの支払いは続き、更に内部管理体制強化・株主総会運営コストも発生します。
比較的規模の小さい中堅会社でも上場維持のために、年間5,000万~1億円ほどかかると言われています。
上場のデメリット3:情報開示の義務
自社の業績や経営に関わる情報を、有価証券報告書や事業報告書等により、投資家や株主に適時開示しなければなりません。
会社にとって不都合な事実も公にする必要が出てきます。
上場のデメリット4:経営について長期的な視野が持ちにくくなる
持続的な業績・企業価値アップへの圧力がかかり、直近の業績に捉われやすくなります。
上場のデメリット5:幅広い株主の出現
会社の経営に対し、より多くの株主から広く意見を聞き、それに応えていくことになります。
上場後はオーナーの思いを経営に直接的に反映させるのが難しくなる可能性があります。
上場のデメリット6:買収リスクが増す
自社株式が市場で自由に売買されるため、会社にとって不利な株主に買われることもあり得ます。
「上場とは」まとめ
いかがでしたか?
上場のデメリットは、裏を返せば非上場のメリットにもなります。
上場と一口で言っても、複数の種類があり、上場するためには相応のコストと準備が必要です。
上場企業は厳しい基準をクリアしている会社であり、すぐに倒産してしまうようなリスクも少なく、投資家も安心して売買できます。
上場は最終ゴールではなく、あくまでも通過地点にすぎません。
上場するかしないかの判断は、必要なコストに対して前述のメリットを十分に活かしきれるかどうかが分かれ目になりそうです。