今回の記事では両利きの経営について考えていきます。
実現することは決して簡単ではないと言われている両利きの経営。
何故イノベーションには両利きの経営は必要だと言われているのでしょうか。
実際に事例を見ていきながら解説していきます。

両利きの経営とは

両利きの経営とは、「簡単に言えば二兎を追う経営」です。
既存事業の強化と新規への模索、この2つを同時に行い、環境の変化についていく会社経営を目指します。
一般的な経営戦略では既存の強化に偏りがちになります。
しかしそれでは変化の激しい現代においてはかえって企業を殺してしまうことにつながるのです。
近年は「イノベーション」という言葉が随分身近になりました。世界はイノベーションによって進化を遂げてきました。
飲食業界にイノベーションを起こしたウーバーイーツも、「飲食店」という既存の知に、「配達」という既存の知、そして「アルバイト」という既存の知がかけ合わさってできたものです。つまり、既存の知を深めていくだけでは、イノベーションは起きないと言えます。

両利きの経営は「知の深化」(既存を深める)「知の探索」(新しいものを切り開く)の二つを高い次元でバランスを取る経営です。
しかし、深化と探索は「水と油」であり、簡単な手法ではありません。
既存事業を強化しつつ新規事業への参入も怠らない、両利きの経営が注目を集めています。
イノベーションを世界に起こしていく上で両利きの経営は大きな意味を成すのです。

両利きの経営を要素分解する

この章では、両利きの経営を要素分解し考えていきます。

知の深化

既存の事業や商品、サービスを深めていく取り組みを、「知の深化」と言います。少しずつブラッシュアップしながら、既存のサービスの価値を高め、競合優位な状況を維持します。
知の深化は、既存の政策とも言えます。利益を上げていくという観点においては既存のプロダクトを深めていく方が遥かに効率が良いからです。多くの企業もこの手法を主に使っています。

しかし、知の深化ばかりを続けていると企業は傾きます。そして、次に解説する「知の探索」を行おうとすると、変化を嫌う文化が出てきてしまうのもまた、事実なのです。
そして、「コンピテンシートラップ」という目先の利益に囚われ、その後停滞を招いてしまう現象も起こりやすくなるという懸念もあります。

新規事業を始めようとすると、
・自分たちは売り上げや利益を上げているのに、新規事業の予算で無駄遣いしているのでは
・新規事業は成功するのか
深めることと開拓していくことは双極に存在しているからこそ、両利きの経営を体現するのは難しいのです。
では、知の探索の解説に参ります。

 

知の探索

では、知の探索とはどんなものなのでしょうか。
知の探索は既存に依存することなく、新しい領域や分野に対して投資を行い、新しいサービス事業を生み出していくことを言います。
しかし知の探索には手間やコストがかかる上に利益に繋がるかどうかも不確実性が大きく、企業は知の探索を疎かにしがちです。
しかし、知の探索を怠らない組織、ルール統制を行い、政策を構築すれば、イノベーションにつながります。
事実、イノベーションを世の中に起こしている企業は両利きの経営を体現していることが多いです。
知の探索は組織を、企業を大きくしていくことにはもちろん、環境の変化に適応していくためには欠かせません。
コロナウイルスの大流行を受け、事業を深めていくだけの経営方針のリスクが明るみになりました。
知の探索はまさに、現代における経営の勝利の方程式だと言えるでしょう。

両利きの経営の事例

この章では、実際に企業が両利きの経営を体現している事例について紹介します。理解を深めていきましょう。

Amazon

今や世界的な大企業、Amazon。Amazonが現在の規模にまでサービスを発達させた背景には、両利きの経営が必要不可欠だったのです。
Amazonは創業当時は今のようなECサイトではなく、小売業として営まれていました。
そして様々なサービスを開拓、そしてアップデートしながら、現在に至っています。

具体的に開拓したサービスとしては以下が挙げられます。
・ネット書店(創業当時〜)
・他の企業も参画できるe-マーケットプレイス(2000年ごろ〜)
・独自の検索エンジン、広告サービス、A Iなどの開発(2006年〜)
・電子書籍への参入(2007年〜)

この流れの中に、両利きの経営は存在しています。
自社の自信のあるサービスを深化させながら、ECショップ以外のサービスにも時代の流れに合わせて挑戦していきました。
具体的には書籍以外の商品、マーケットプレイスの導入などが挙げられます。
Amazonは知の深化と探索を交互に行い、自社の強みを強化しながら新しい分野に挑戦し、そしてまたそれを強化し続けていきました。

その経営戦略こそが両利きの経営であり、その結果イノベーションの最先端を生き続け、世界的な大企業へとAmazonを押し上げたのです。

 

富士フィルム

日本の企業で言えば、富士フイルムが代表的な例で挙げられます。
現代の時代の流れを考えると、写真フィルムというものが以前よりも使われなくなり、危機的な状況に陥ってしまってもおかしくないと。
その危機を両利きの経営によって脱し、イノベーションを世界に起こしたのです。
ではどんな政策を実行したのでしょうか。

大きくまとめると以下の2点です。
・既存の独自技術を追求し、分析分解
・分析、分解を元に新規事業に参入

そして富士フィルムはエレクトロニクス、医薬品、化粧品などの分野に進出し、結果を残すことに成功したのです。
両利きの経営は思い切った政策によって一見関係のない分野でも結果を作ることが可能になるのです。

まさにそれを体現したのが、富士フィルムでしょう。

両利きの経営は世界にイノベーションを起こす経営戦略

いかがでしたでしょうか。
確かに利益追求を求めるのであれば知の深化だけをしていても短い目で見れば良いのかもしれません。しかし、世界にイノベーションを起こす企業は、そして事業を確実に大きくしていく、成長していく企業は両利きの経営を体現しています。
時代の変化が目まぐるしい現代において、現状維持はもはや衰退を意味します。だからこそ、強気の経営戦略で新規参入を行っていくべきだと言えます。
知の深化と知の探索のバランスを見直し、世の中にイノベーションを起こすのです。

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