UXとストーリー


出典:pxhere.com
私たちはいつも物語に魅了されてきました。

小説・マンガ・映画はいまだエンターテイメントの王道を走っています。
「君の名は。」は多くの人々に感動を与えました。

また、ストーリーは小説や映画の中だけにあるものではありません。
モノや人の中にもストーリーがあります。
そして、私たちはストーリーのある方に惹かれるものなのです。

例えば、SHOWROOMの前田裕二氏。
若手起業家としての活躍、DeNAからのスカウト、国民的女優との熱愛など、ともすれば嫉妬の対象になりそうな人です。

しかし、前田氏は幼いころに両親を亡くし兄に育てられ、時には荒れた時代を送りながらも、
大学のためのお金を路上ライブで稼ぎ出し、その後も数多の努力を重ねながら現在までやってきました。
このストーリーを聞くと、孤独の辛さ、支えてくれる人の大切さを知る前田氏だからこそSHOWROOMを立ち上げられたのだ、と考えてしまいます。

ストーリーは人の主観を容易に変えてしまう力を持っているのです。

長くなりましたが、ここからが本題です。
モノ消費からコト消費の時代に移り、UX(ユーザー体験)の重要性が叫ばれています。

UXとは、ユーザーがそのプロダクト・サービスと関わる中で体験する一連の出来事。
それはつまり、ストーリーなのです。

UXデザインが重要であるということは、ストーリー作りの力が求められているということです。
今回は「ストーリーを用いたUXデザイン」について学んでみましょう。

ストーリーはどのように役に立つのか

UXデザインにストーリーがどのように役に立つのかをもう少し見ておきます。

1つ目が、ストーリーは人を惹きつけるという性質です。
ストーリーを顧客に伝えることで顧客をファンに変え、さらなるエンゲージメントが期待できます。

2つ目は、筋道(論理)のあるUXがデザインできるということです。
ストーリー上の矛盾点がないか、登場人物が変わっていないか、ストーリーマップに照らし合わせることで問題を回避できます。

3つ目は、ビジョンを共有できることです。
チーム内でストーリーを崩さないようにUXデザインを進められます。
さらに顧客とのビジョン共有もやりやすくなります。

加えて、ストーリーを考えておくことでプレゼンがしやすくなります。
特に、次に紹介する「ナラティブアーク(ストーリーアーク)」に沿って説明することで簡潔にポイントを伝えることができるようになります。

ナラティブアーク(ストーリーアーク)とは?

ストーリーにはある基本構造があります。
それがナラティブアーク(ストーリーアーク)です。

上図のようにx軸に「時間」y軸に「行動」をおき、ストーリーの様子を描きます。
ナラティブアークには7つのプロットポイントがあり、クライマックスでアークが最高点に達します。

このプロットポイントが欠けていると物語として不完全なものになってしまいます。
逆に言えば、このプロットポイントに従って説明すれば簡潔で過不足のない説明ができるのです。好きな映画について話すときに使ってみるといいかもしれません。

まずは普通の物語における各プロットポイントの役割を紹介します。

① 状況説明

物語の世界観や登場人物、目的などの紹介行うポイントです。
観客を物語の世界に誘い、共感を引き出します。

② 事件や問題の発生

物語が動き出すきっかけとなる部分です。多くの場合何らかの問題が起こり、主人公はその解決へと乗り出すことになります。

③ 盛り上げ

問題解決のためのさまざまな行動をしていくところです。新しい登場人物が出てきたり、別の問題が発生したりします。

④ 危機

主人公がとてつもないピンチに陥る場面です。観客をハラハラさせ、クライマックスへの下準備をします。

⑤ クライマックス

ナラティブアークの頂点、多くの場合ここで問題が解決します。主人公の成長を描いたり、作品全体のテーマを表現したりできるところです。

⑥ 落とし込み(オチ)

クライマックスで終わってしまうとどこか尻切れ感のある作品になってしまいます。そこで必要になるのがオチ、物語の締めです。最終的に問題がどのように解決したのかを描きます。

⑦ エンディング

問題の解決までしっかり描いたあとにあるのはエンディング、オープニングの時と何が変わったのか、主人公やそのほかの人々がどう変わったのかを描きます。
クライマックス~エンディングは区切りが曖昧です。

ナラティブアークについて理解したところで、UXデザインに役立つ3つのストーリーについて学んでいきましょう。

3つのストーリー


UXデザインでは、3つのストーリーをつくります。
コンセプト・ストーリーオリジン・ストーリーユーセージ・ストーリーです。

コンセプト・ストーリーは、ストーリーの全体像のようなもので、プロダクトの中核となるコンセプト、価値提案にあたります。
オリジン・ストーリーは、潜在顧客が実際の顧客になるまでのストーリーです。AIDMAや5Aモデルなどに近いものとなります。
ユーセージ・ストーリーは、顧客がプロダクトを使っていく過程を表したものです。UIデザインにあたります。

コンセプト・ストーリー

コンセプト・ストーリーは最もそのプロダクトを示すストーリーです。
コンセプト・ストーリーでは、以下のようにプロットポイントを使います。

①状況説明:今の状態(現状)
②事件や問題の発生:プロダクトが解決する問題
③盛り上げ:プロダクト名や簡単な説明
④危機:競争
⑤クライマックス:その解決策と価値提案、競争優位性
⑥オチ:感想
⑦エンディング:目的の達成

ターゲットの現状を分析し(①)、そのニーズ・インサイトを定義します(②)。
そのソリューションを紹介し(③)、競合や顧客にとっての不安な点を明確にします(④)。
そして、その課題を解決するような価値提案を持ってきます(⑤)。
最後にそのソリューションに対する評価を整理し(⑥)、ユーザーがどのような体験を得られるのかを伝えます(⑦)。

以上の流れでプレゼンをすれば、そのプロダクトがどのような体験を与えるのかがわかりやすく、感動的に伝えられるのです。

オリジン・ストーリー

オリジン・ストーリーは、コンセプト・ストーリーに対して、よりUXデザインに役立つものとなっています。顧客がプロダクトを利用するまでのストーリーを描くからです。

①状況説明:今の状態(現状)
②事件や問題の発生:プロダクトが解決する問題(ユーザーが解決策を欲しがるきっかけ)
③盛り上げ:獲得のチャネル
④危機:ユーザーがプロダクトを使う上での障害・抵抗
⑤クライマックス:それでもユーザーがそのプロダクトを気にする理由
⑥オチ:ユーザーの行動
⑦エンディング:ユーザーの目的達成

基本的にはカスタマージャーニーマップと同じような構成になるはずです。
オリジン・ストーリーでは、危機とクライマックス、つまりユーザーがどのようにプロダクトを使うハードルを乗り越えるかを描写することを重視しています。
UXデザインで何を考えたればいいかわからなくなった時にオリジン・ストーリーを組み立てるとよいかもしれません。
社内でのプレゼンでも有効でしょう。

ユーセージ・ストーリー

ユーセージ・ストーリーもカスタマージャーニーマップに似ています。
オリジン・ストーリーではユーザーが顧客になるまでに着目していましたが、ユーセージ・ストーリーではユーザーがどのようにそのプロダクトを使うのかに着目していきます。

①状況説明:今の状態(現状)
②事件や問題の発生:出来事(ユーザーがプロダクトを使うきっかけ)
③盛り上げ:いくつかのステップ
④危機:ユーザーがプロダクトを使う上での障害・抵抗
⑤クライマックス:ユーザーが価値を体験する瞬間
⑥オチ:最終ステップ
⑦エンディング:使用後のユーザー

ユーセージ・ストーリーはプロトタイピング、UIデザインに役立ちます。

コンセプト・ストーリーでプロダクトの価値提案を描き、オリジン・ストーリーでユーザーに届ける方法を描き、ユーセージ・ストーリーでユーザーとそのプロダクトの体験を描きます。
この3段階のストーリーでUXは劇的に改善するはずです。

UXデザインとストーリーマッピング


出典:photo-ac.com
ストーリーを軸にUXデザインを行う手法は非常に有効です。
実際にストーリーマッピングの視点で既存のプロダクト・サービスを見てみると、多くの実践例が見つかることでしょう。

そして何より、ストーリーマッピングによるUXデザインは楽しいと思います。
ぜひストーリーを取り入れてみてください。

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