『鬼速PDCA』


-鬼速PDCA。
2016年に株式会社ZUUのCEO富田和成氏が掲げ、書籍『鬼速PDCA』は話題を集めました。

通常のビジネス本と同程度のサイズ・価格ながら、その中にはPDCAの基礎や応用法がこれでもかと詰め込まれています。

今回は「鬼速PDCA」がなぜすごいのか、その仕組みについて考えてみました。
興味が出ればぜひ『鬼速PDCA』を読んでみて(または再読してみて)ください。

まずは鬼速PDCAの基本的なところ

著者はPDCAを「前進を続けるためのフレームワーク」と定義しています。
そして鬼速PDCAは、そのサイクルを高速で回し、より早く前進し続けるための考え方です。

ここでの「前進する」とはいかなる意味でしょうか?
成果を出すこと? 成長すること?
どちらも当てはまると思いますが、もう1つの捉え方として「新たな課題を見つけること」があります。
鬼速PDCAは新たな課題を次々と見つけて、成果・成長につなげるフレームワークなのです。

さらに「速さ」は正のフィードバックを生みます。

次々と課題を見つけ対処していく過程は自己効力感の獲得につながるでしょう。
自己効力感はモチベーションになり、成果につながります。成果が上がると当然モチベーションもまた上がるわけです。
「速さ」がこのサイクルの熱を冷まさず、キープします。

そして、鬼速PDCAはこの「速さ」を獲得するための仕組みが備わっているのです。

スパンを短くする仕組み-<階層化>


PDCAを回すからには何らかの目的(ゴール)があるはずです。
ゴールの設定をしなければPDCAは始まらないわけですが、ビジネスにおいてはこのゴールは長期スパンのものになりやすい傾向にあります。
数値(フィードバック)の取得に時間がかかる場合もあるでしょう。

当然、これらの問題を放置していて鬼速PDCAは実現しません。
そこで1つ目の仕組み「PDCAの階層化」が登場するのです。

大本の達成目標(経営目標等)をゴールとする大PDCA
そのために達成すべき中期目標をゴールとした中PDCA
さらに短期で回せるよう設定した小PDCA

このようにPDCAサイクル自体を階層化して、短期で回せるようにします。
面倒な仕組みに思えるかもしれませんが、これは歯車のような仕組みになっています。
つまり、実際に回すのは小PDCAだけで、中PDCAや大PDCAは小さな歯車と連携して回っていくわけです。

鬼速PDCAでは、この1つ目の仕組みによってPDCAを回すスパン自体を短くしています。

目標設定・測定の仕組み-<KGI→KPI→KDI>


「速さ」を獲得するための2つ目の仕組みは目標設定のやり方にあります。
まず、前提となるルールは具体化・定量化・期日設定の3つです。このルールに従って階層的に目標を設定していくことになります。

最初に設定するのはKGI、そのPDCAサイクルにおける達成目標、ゴールです。
そのサイクルの成功基準にもなる重要指標ですが、設定はそこまで難しくないと思います。

ゴールを設定すると、当然そこには現状との間のギャップがあることでしょう。
それが「課題」です。

この「課題」を使って次に設定するのがKPI、サブ目標です。
ここでもルールに沿った目標になるよう注意しましょう。

KPIが決まったら、つぎはそれらをどう達成するか、「解決案」を考えるはずです。
ここで考えた「解決案」がDoの方向性を規定します。
この段階で具体的なDoを決めるわけですが、同時に設定しておくべきものがあります。
それがKDI(Key Do Indicator)です。

KDIはDoを定量化したものです。例えば、「本を読む」というDoの時、「1日当たり〇ページ読む」のように設定します。

そして最後にDoとKDIから具体的なタスクレベルにまで落とし込んだToDoを設定します。

この KGI →(課題)→ KPI →(解決案)→ Do、KDI → ToDo というプロセスが鬼速PDCAの第2の仕組みです。

なぜこの仕組みが鬼速を実現するのでしょうか?
それはこの先のプロセスを考えるとわかります。

まず次のDoでは、先ほど設定したToDoをクリアしていくだけです。

そしてCheckでは具体化・定量化・期日設定のルールに沿った各指標をチェックしていきます。
最初にKGIの達成度合い、そしてその要因となるKPIの達成要因、さらにその要因となるKDIのチェックです。
これで客観的に構造化された情報が出てくるので、ここから詳細な要因分析を行えます。
KGI、KPI、KDIはこのチェックのプロセスを大幅に単純化・効率化してくれているのです。

最後のAdjust(鬼速PDCAではActionではなくAdjust)では、KGIからToDoまでのプロセスをCheckで発見したことに合わせて調整するだけです。

第1の仕組みによってPDCAを階層化し短期でフィードバックが得られるようにする。
第2の仕組みによって評価指標とアクションを構造化し、後のプロセスを効率化する。

この2つの仕組みによって、鬼速PDCAは「速さ」を獲得するのです。
第2の仕組みを見ればわかる通り、鬼速PDCAは回すほどに加速します(調整がより精密に効率的になる)。

この2つの仕組みを活用し、実行するだけでも鬼速は手に入りますが、鬼速PDCAにはほかにも役立つ仕組みが存在します。
ここでは鬼速PDCAの精密さと実行力を向上する仕組みを2つ紹介しておきましょう。


仮説を精密にする仕組み-<因数分解>


1つ目は「因数分解」です。
PDCAのPlanでは「仮説」を使わざるを得ないわけで、この仮説の精密さによってサイクル全体のスピードは変わってきます。
この精密さを上げる仕組みが因数分解です。

因数分解は対象をなにかの掛け算の形で表す方法ですが、わかりにくければロジックツリーをイメージしても大丈夫です。

因数分解によって、MECEに近い形で対象を分析し、またアクションにしやすい形に昇華できます。

鬼速PDCAでは、KGIからToDoまで様々なポイントで因数分解を導入すると良いでしょう。

因数分解の時には「プロセス」「質×量」などいくつかのフレームワークを活用することがおすすめです。ここで使えるフレームワークを貯めておくとPDCA力が上がります。

因数分解については『鬼速PDCA』第3章に詳しく説明されているので、より詳細なポイントが知りたい方は目を通してみてください。

実行を確実にする仕組み-<タイムマネジメントの3大原則>


もう1つの仕組みは「タイムマネジメントの3大原則」です。

Planで設定したToDoの実行のためには当然「時間」というリソースが必要ですが、多くの人はこの点で上手くサイクルを回せず、スピードが落ちてしまった経験があるでしょう。
鬼速PDCAはこの課題もサポートしています。

そのための仕組みが「タイムマネジメントの3大原則」です。
タイムマネジメントを以下の順番で行うよう奨めた手法になっています。

①捨てる
②入れかえる
③圧縮する

この3大原則のエッセンスは、時間リソースを圧迫する既存のToDoをいかに減らせるか、ということにあります。

詳しくは『鬼速PDCA』第5章にて説明されています。

鬼速PDCAの「速さ」をつくる仕組み

鬼速PDCAは決して「PDCAをガンガン回そうぜ」などという精神論ではありません。

そこには「速さ」を獲得するために考え抜かれた明確な仕組みが備わっていました。
特に第1の仕組み「階層化」と第2の仕組み「KGI→KDIプロセス」は「速さ」と「回転」の根幹をなす仕組みです。
まずはこの視点から今の自分のやり方見つめなおしてみてください。

『鬼速PDCA』には本記事で触れることができなかったエッセンスがまだまだあります。
ぜひ読んでみてください。

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