今回は、生きがいラボ株式会社 代表取締役の福留幸輔氏に、自律分散型組織における人事制度と会社・マネージャーに求められることについてお話を伺いました。

(聞き手:株式会社アントレプレナーファクトリー 代表 嶋内 秀之)

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自律分散型組織における人事制度とは

嶋内:今回は自律分散型組織における人事制度ということで福留さんにお話をお伺いします。福留さんよろしくお願いいたします。

 

福留:お願いします。

 

嶋内:先ほどティール組織やホラクラシーというお話を伺いましたが、やはり世の中の環境変化が激しくて、仕事そのものがやっぱり難しく昔よりなっていると思います。

その中で全部を中央集権的に決めて落として、それを1年、2年、3年を追うということ自体が上手くいかないというのは、皆さん何となく感じていると思いますし、その中で自律分散型組織というコンセプトに対して興味というのも、増してきていると思います。

ただ、会社なので給与も払っていかないといけないし、やっぱり承認というものも認められた感とかですね。こういったこともないと運営できないと思います。

そこでこの自律分散型組織において、どんな人事制度が適してるという風に思われるのかお話お伺いしてもよろしいでしょうか。

 

福留:まず自律という言葉ですけれども「自ら」「律する」というですね。私はこの自律を私なりに定義しててですね。

まずは自分で考える。自分で決めるですね。決めたことして責任を持つ。というこの三つの要素が自律かなと思っています。

この自分で決めるという範囲をどんどん広げていくというのが自律分散型組織のイメージですね。その自分で決められる範囲というところでは例えばその目標とか、あるいは働き方もこれからそうなっていくでしょうし。私の経験上、この社員さんが自分の給与は決められないという風に感じてる方が多いんですね。

なので、私はこの給与という、その社員さんからするとこれは自分で決められなくて自分が伺い知らないところで上司や経営者が決めるんでしょと思ってるところにも自分で決められるという、そういう要素を入れていくというか取り入れていくっていうのがこれからの自律分散型組織の在り方というか進んでいくべきというか進んでいったほうがいい方向性かなという風に感じてます。

 

 

会社やマネージャーに求められること

嶋内:どうしてもそういう仕組みになりますと、例えば、自分の仕事はこうだから、給与はこうあるべきだと。もしかしたら私とか、そういうこと言いたいタイプなんで言っちゃってる気もするんですが。一方でその給与のことを話すとは良しとしない、控えめな方もいらっしゃると思うんですね。その声の大きい人だけが得をして控えめな方が損をする。そんな風に思う方もいらっしゃるかもしれないんですが、その辺どうなんでしょう。

 

福留:難しいところですね。非常に難しいところで。やはりアピールが得意な方もいれば苦手な方もいらっしゃいますね。なので、給与を私はこれだけの貢献するのでこれだけの給与が値すると思いますというのを申告してもらう制度を私は取り組んでおるんですが。

やはりそれが得意というかきちっとできる方もいらっしゃればなかなかアピールしきれない方もいらっしゃるので、そこはやはり自律分散型組織とはいえどもその上司というかマネージャーのサポートは必要なのかなと思います。ノーレイティング、欧米型のノーレイティングは給与もマネージャーが一任で決めるという取り組みなんですが。私の場合は、それはちょっと日本の文化的なところではちょっと合わない部分はあるかなと思っててですね。

なので、私の場合は一人一人が給与を自己申告してくださったものを全管理職、経営者さんが集まって、お一人お一人の頑張りをしっかりと対話の中で共有した中でお一人お一人のお給料を承認するかどうかを決めていくと。

その中でアピールは下手だけれどもすごい頑張ってくれてる方もいらっしゃいますし、アピールはうまいけどもアピールほどでもないっていう方をもしかしたらいらっしゃるのかもしれないんで、その辺をしっかりと情報をすり合わせてしかるべきというか、普段から社員さんのことをよく見ておられる皆さんで一人一人のことをしっかり考えて決めていきましょうという、そういう運営をしておりまして。そこで完璧とは言わないですけれども、ある程度アピールベタの方が損をするとか、そういったことがないようにしていきたいなという形で取り組んでおります。

 

嶋内:欧米にもいろんな企業はあると思いますが、特にわれわれから見て欧米的に見える企業、そういうのはそのマネージャーと働く個人が給与も含めて仕事も握る。いわゆる組織内における個人事業主的な、そういう側面がより強くなっている。そんな風な印象も受けますし、確かにいわゆる管理的、科学的管理技法のテイラー時代とかの鉱山とか、その後の工場モデルと違って今は何時間で生産量いくらじゃない時代においてはそういう握り方のほうがなんかやる気が出る。そこはすごく直感的に理解できました。

一方で日本における慎ましやかなことが良しとされる文化的背景の中で、でも従業員全体の把握、理解ができる、今おっしゃった福留さんが進められているやり方もイメージが具体的に湧いてきました。

とはいえ会社側のスキルとかマネージャーのスキルっていうのがより問われてくることになりそうですね。

 

福留:マネージャーというよりも組織のリーダーですね。組織のリーダーとしても働いてる方の生きがいややりがいってどこから生まれてくるのかというと、同じように働いてるメンバーさんがよりよい人生になったりとか、あるいは成長されたりであるとか、やりがいを持って仕事をするということがリーダーとしてそういう役割を任された方の素晴らしいやりがい、生きがいにつながると思ってますんで。

なので、やはり組織のマネージャーさんにはそこをしっかりと見ていただいて。

このノーレイティングというか私が生きがいラボで提唱してるノーレイティング型人事制度の中では、社員さんの申告に基づいては給与を承認するかどうかをマネージャー、経営陣が決めていくわけですけれども。その中でなぜそういう取り組みをやってるかというと、より対話をしてもらいたいということなんですね。

先ほど嶋内さんがおっしゃられた、ちょっと仕事に本気になってないというか、頑張ってない方もやはり何かしらのご事情はあるかもしれないので、そこをしっかりと管理職、上司が理解はしたいという風に関わっていくであるとか。あるいは口下手だけれども普段からはコツコツ頑張ってくださっている方で自己評価ももしかしたら低い方が、もっと頑張ってくれてるよと、実際自己評価はすごく低いけれどもすごく貢献してくれてるんだよという風にサポートしてあげたりとかですね。

あるいはちょっと自己評価が高すぎて言ったらアピールはうまいけれどもちょっと貢献度はそんなに高くないっていう方がいらっしゃったら、やっぱりそれを率直にフィードバックして、それが悪いということではないのでその貢献度に、アピールに見合う貢献度、貢献してもらえるようにサポートしていくとか。

そういった関りをしっかりとしていただきたくてそういうノーレイティング型人事制度であるとか、給与を自己申告してもらって上司がそれに寄り添ってしっかり対話した中で承認するかどうかを決めるという取り組みをやらせてもらってて。なので、別に給与を決めたい、給与を決める仕組みを作りたいということではなくて。

もちろんアウトプットとしては給与は決まるんですが、そのプロセスが大事だと思ってですね。そのプロセスの中で組織と個人がお互いの考えとか違いというのを尊重して、じゃあ一緒にハッピーになっていくためにはどういう業務のアサインの仕方があるんだろうねとか、あるいはどういう目標があったり、あるいは組織側が何かサポートできることはないのかなという風に考えたりとかですね。そういうお互いがハッピーになる道ってどういうものがあるんだろうねというのを対話で探っていってもらいたいためにやらせてもらってるというような感じです。

 

嶋内:よく分かりました。

 

福留:給料っていうのは何か聖域みたいな、触れてはならないみたいな感覚があって。それは経営者さんも社員さんも両方あったと思うんですね。

経営者さんは、給与制度や人事制度というもので、社員さんが納得してやる気が上がるような給与額を何か自動的に弾きだしてくれるような、そういう仕組みがあったら嬉しいねということを人事制度に期待していますし、社員さんは自分が納得できる給与を算出してくれるような、そういう人事制度があったら嬉しいと思います。

ただここで大事なのは、自分が話し合って決めるということではなくて、インプットしたらアウトプットが自動的に出るようなもので決めてほしいというニーズがやっぱりあったと思うんですね。

それはなぜかというと、給与というのが聖域であんまり触れたくない。もうちょっと言うと向き合いたくないということがあってですね。

ただやっぱり私はそういう関係ではなくてしっかりと触れたくない、話し合いたくないものも向き合って、お互いに率直な意見交換をしながらお互いを尊重しながら、尊重というかお互いというのは組織側と個人がですけども、お互いに尊重し合いながらじゃあ完全な納得まではいかないかもしれないけれどもお互いにこれでやっていこうという、そういったものを探求していくプロセスが大事で。そこがなかったら本当に、よく最近組織議論とかでエンゲージメントとか言われますけど、本当の意味でのエンゲージメントって生まれないのかなという風にも思ってますんで。そこをごまかすことなくしっかりと向き合うことを取り組みとしてやっています。

 

嶋内:非常によく分かりました。自己評価を高く出して、返却されるのも嫌ですし、かといってやっぱり低い、今までうんと言っててもやっぱりどこかでフラストレーションがたまって結局やる気がなく。多分なんですけど何で俺の評価こんなに低いんだと思ってやる気をなくしてる方も、もしかしたら多いかもしれませんよね。じゃあその辺りを新しい時代に合わせて必ずしもそれで全てが解決するわけではないかもしれないし、問題点もあるかもしれないけども、少なくとも鉱山であったり工場であったり、そういう労働をモデルとした従来型の制度よりは今のところとすごく適合するっていうのがノーレイティングであり、その導入のお手伝いをなさってるということですね。

 

福留:そうですね。

 

嶋内:よく分かりました。もっといろんなことを相談したい場合はどうすればいいんでしょうか。

 

福留:個別でご相談いただければ、メールでも結構ですし、何かしらの形でコンタクト取っていただけたら必ず無料で対応させていただいてます。

 

嶋内:分かりました。どうも本当に貴重なこれからの働き方、それからこれからの人、組織について非常に多岐にわたって、なおかつ深い話勉強になりました。どうもありがとうございました。

 

福留:ありがとうございました。

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