ニューヨークのオフィス賃料は過去最高値を記録
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スタートアップを立ち上げたり、独立してフリーランスで働く人々が真っ先に考えるのが「オフィスをどこにするか」です。オフィスの場所を重視する人、広さを重視する人、優先順位は人ぞれぞれだと思います。
しかし共通して重要なのは、「賃料」です。例えば東京23区の場合、2011年の第1四半期の空室率が10%近かったのに対し、5年後の2016年第1四半期では4.5%まで空室率が下がっているようです。
都心部ではビル建設の数が増えたように思えますが、それでも旺盛な需要には追い付いていないことが、この数字から読み取れます。東京で起業する場合、年々オフィスの確保の条件が厳しくなっています。
しかし東京以上にオフィス確保が難しいのが、好景気に沸くアメリカです。特に金融系企業の業績が好調であることから、金融の中心であるニューヨークのオフィス賃料は高騰しているようです。
不動産コンサルティング会社コリアーズ・インターナショナルは、マンハッタンの2016年第3四半期オフィス賃料が過去最高を記録したと発表しました。
スタートアップなどがマンハッタンにオフィスを構えるのは難しい状況ですが、この現況で注目を浴びているのが、シェアオフィス運営会社・WeWork社です。今回は創業者Adam Neumann氏をご紹介いたします。
イスラエルのシングルマザーの家に生まれる
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(左:Miguel McKelvey、右:Adam Neumann)
Neumann氏はアメリカ・インディアナポリスで誕生します。シングルマザーであったNeumann氏の母は、母国イスラエルから医療研修を受けに来ていたこの地でNeumann氏を産みます。
2年後にイスラエルに戻ったNeumann氏は、ガザ地区のキブツ(集産主義的共同体:KIBBUTZ)で育てられます。成長したNeumann氏は5年間海軍に在籍しますが、自分の居場所では無いと考え、海軍を辞めます。
海軍を辞めたNeumann氏は、ニューヨークへ渡ります。先に渡米した姉が、モデルをしていたので、姉のマネージャーを務めながら、ニューヨーク市立大学バル―ク校に入学します。
起業しては失敗を繰り返す
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ニューヨークでの生活にも馴染んだNeumann氏は、自分でビジネスを起こすことに興味を持ちます。まずモデルの姉の影響を受け”Egg Baby”というアパレル会社を起業します。赤ちゃん用のアパレル会社でしたが、経営は上手くいきません。その後も数社を起業するも、全て失敗に終わります。
そしてNeumann氏が起業した5社目が、WeWork社でした。2010年にMiguel McKelvey氏と共同で起業したWeWork社は、オフィス賃料高騰に悩むスタートアップやフリーランサーのニーズにマッチし、急速に成長します。
ビルをオーナーから借り上げ、ビルの中を様々なタイプの部屋やスペースに区切り、企業や個人事業主にオフィススペースを提供します。一か月から契約が出来たり、共有スペースの他、専用デスクを確保出来る点など、利用者にフレキシビリティーを与えることでWeWork社は利用者を増やして行きます。
5度目の起業で総資産3000億円
現在では5万人の会員を保有し、世界34都市で139か所の共有オフィスを保有するまでに成長します。近いうちに5大陸全てで事業を行うことを目標にしているNeumann氏は、2016年にはインド不動産大手エンバシー・グループとの提携したことを発表し、インドへの進出も決定しました。
フォーブス誌が発表している“40歳以下のアントレプレナー総資産額ランキング”8位のNeumann氏の総資産額は、US$25億(約3000億円)にも上ります。
会社が大きくなった今日でも、Neumann氏はスタートアップのカルチャーをWeWork社の中に継続して根付かせようとしています。Neumann氏本人も“NEVER SETTLE(妥協しない)”と書かれたTシャツを着て、従業員の前に現れたりもします。
Neumann氏の生き方を見ていると、「何度も起業に失敗しても、成功するまで決して諦めない心」が大事だということが伝わってきます。何かに挑戦している人も、ぜひNeumann氏のように、成功するまでやり抜いてほしいと思います。