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進むロボット時代に立ちはだかる壁
出典:free-photos.gatag.net
十数年前に比べると、ロボット技術は随分と進化しました。AIと合わせて、彼らロボットによって私たち人間の仕事が奪われるという話も現実味を帯びてきましたね。
しかし、やはり現時点では多くの壁が立ちはだかっています。その壁の1つに産業ロボットの「使いにくさ」という問題が存在します。
ロボットはプログラムされた単純な作業は得意ですが、臨機応変な対応は苦手としています。例えば、対象の物体の位置がずれていたり、形状が異なっていたりした場合、ロボットはその変化に対応できないことが多いです。生産プロセスに変化を加える場合には、その都度面倒なプログラミングをし直さなければなりません。
最近では、このような「使いにくさ」を解消するために、自分で考えるロボットが開発されてきています。今回はそのうちの1つ、浜松で生まれたベンチャー企業LinkWizについて紹介します。
LinkWizが生み出す3つのL
出典:linkwiz.co.jp
LinkWizは浜松市で2015年に吹野豪氏によって設立されました。3DCAD技術をコアとした、自動で物体を認識するロボットソフトウェアの提供を行っています。
浜松は世界的にも有名な3DCAD技術の本場であり、卓越した腕を持つ3DCADシステムのエンジニアが多数存在している場所です。*3DCAD:CADはコンピューターによる設計、またはそのためのツールを指す。3DCADは3次元のモデルをコンピューター上で構築する技術
LinkWizの代表取締役、吹野氏もそんな浜松で鍛え上げられた技術者の1人です。
吹野氏は、「大企業や専門技術者でなくても、ロボットを簡単に操作できる魔法のような技術を提供したい」と言います。そんな想いをもつ吹野氏のもとでLinkWizが生み出しているのは3つのL、L—Robot、L—Qualify、そしてL—Factoryです。
L—Robot~物の形を認識し、考えるロボット~
出典:photo-ac.com
第1のL、L—Robotは自動で物体の形状や位置情報を取得し、その情報に合わせた動作プログラムを自動生成することができます。この技術は、3DCADの本場、浜松で培われた三次元フレームワークをベースとしているもので、高精度な空間座標、形状認識を実現します。
従来の産業ロボットでは、「ティーチング」と呼ばれる、ロボットの動作プログラムの作成・入力作業が必要となります。その作業は人がしなければならないので、不具合や変更がある度に、多くの時間と労力をかける必要がでてきます。
しかし、L—Robotを使えばそのコストを軽減することができるのです。さらに、部品のばらつきにも対応できます。
人間のように3次元空間のなかで物体を認識して、自分で考えるロボット。この技術はロボット時代には不可欠なものですね。
L—Qualify~時間と労力を節約できる自動検査ソフト~
L—QualifyはLinkWizの技術を活かした自動検査ツールです。ロボットによる三次元情報把握のテクノロジーを利用して、製品の検査・測定・品質保証などを可能とします。これらの情報は履歴として保存し、不具合の傾向などの分析にも使えます。
L—Robotと同様、L—Qualifyも人の労力・時間の節約につながるツールです。その上で、より質の高い検査の構築を目指します。
L—Factory(開発中)~工場全体をリアルタイムで改善!?~
出典:gatag.net
最後はまだ開発中の第3のL、L—Factoryです。L—Factoryは、L—Robot、L—Qualifyによって取得・蓄積したデータを活用して、工場全体をリアルタイムで改善していくことを目指したものです。言うなれば「自分で考える工場」をつくるということですね。
生産を行うロボット自体からデータ取得を行ということは、従来ならいくつかの部品や製品を抽出して行っていた調査から、すべての部品・製品、工程の調査に基づく改善計画を構築への移行を可能にします。
まさにIoT工場が出来上がるのです。
時代とともに生まれるベンチャーたち
革新的なコア技術の進化に伴って、時代は大きく変化します。その革新的な技術はその他の多くの精巧な技術を基盤としています。さらに、その革新的な技術が社会で使われるために必要な技術も生まれてきます。
これら様々な技術を持つ企業が新たな社会を形成し、支えるのです。LinkWizもその流れの中で生まれてきました。
新たな時代の幕開けは、数多のベンチャー企業が誕生する合図なのです。