癌は早期発見なら治癒率は上がる

日本人の死亡原因で一番多いのは、悪性新生物(悪性腫瘍)によるものです。
悪性新生物という言葉はあまり耳にしないと思いますが、言葉から想像出来るように平たく言えば「癌」です。少し古いデータですが、癌は日本人の死因のなんと30.1%を占めています(厚生省・平成21年)。
以前は、癌と聞くと死に直結するイメージがありましたが、最近では癌は治る病気という認識が広がりつつあります。
ただし、どの書物を読んでも、“ほとんどの癌は早期発見・早期治療をすれば治る”と書かれています。
そこで今回は、癌を早期発見するための製品を手がける会社に注目したいと思います。

高精度検査で早期発見を目指すGrail

「癌だったらどうしよう...」という恐怖心から検査・治療が遅れるという、心理的な要因で早期発見が遅れる場合もあります。
その一方で、自覚症状は全くないけれども検査が面倒であったり、簡易検査をしても早期発見が出来ないケースも目立ちます。
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出典:www.technologyreview.com
バイオテクノロジーで業界大手のイルミナ社(Illumina)は、年明け早々に新会社設立の発表を行いました。
Grail社と名付けられイルミナ社からSpin-Offした新会社は、手軽に高い精度の血液検査をし、癌の早期発見ができる製品を開発するために設立されました。
 
イルミナ社はバイオテクノロジーの中でも、DNA塩基配列の分野で高い評価を得ている企業です。この高い技術を応用して、癌の早期発見を実現することになります。
癌は人間の体のあらゆる部位に発生します。Grail社が目指すのは、どの部位に癌が発生してもそれを逃さず発見する製品です。イルミナ社CEOのJay Flatly氏は「Pan-cancer screening test」と自社の製品を表現します。

ビル・ゲイツ氏やジェフ・ベゾス氏も出資

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出典:(左)ja.wikipedia.org,(右)ja.wikipedia.org
Grill社が開拓を目指すこの分野は、マーケットが大きく広がる可能性を持っています。
Flatly氏はGrill社創設にあたり、将来的には200億米ドルから2,000億米ドル(約2兆4000億円~約24兆円)まで、このマーケットが広がるポテンシャルを持っていると語ります。
 
今回のSpin-offで注目されるのが、出資額の大きさと出資者の顔ぶれです。
まず出資額は、イルミナ社以外にもARCH Venture Partner社等の有力ヴェンチャーキャピタルからの出資で、1億米ドル(約120億円)を超えています。
一方、出資者にはマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏や、アマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏等の超有力者が名を連ねています。
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出典:www.technologyreview.com
出資者の名前を見ても非常に大きな期待がかかっていることが分かるGrill社ですが、今後は3-5万件の臨床試験を行い、早ければ2017年にトライアルを始め2019年には正式販売を目指す計画になっています。
最終的には1000米ドル(約12万円)を切る価格で、この製品を世に普及させたいとFlatly氏は抱負を語ります。

風邪の診療のついでに癌検査?

早期発見が重要だと分かっていても、なかなか検査に足が向かないのが多くの方の実情だと思います。
また、既存の簡易検査では癌を見逃してしまうケースもあると聞きます。
簡単な採血で精度の高い検査が受けられるGrailがあれば、風邪で病院へ行き、そのついでに癌検査を行うことができるような日が来ることも近いかもしれません。
 

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