デザイン思考という言葉を聞く場面が増えています。それもそのはず、なぜならデザイン思考はあのGoogleやAppleも取り入れている「イケてる」考え方だからです。
デザイン思考はイノベーションを起こすプロセスと言われており、昨今、デザイン思考をもとに様々なイノベーションが生まれています。例えばiPodやWiiなどがデザイン思考で生まれたと言われています。
また、SAPという会計ソフトなどを手がける会社はデザイン思考を導入してイノベーションに成功し、売上を2010年から2015年の5年間で2倍に拡大させています。日本で例えると、ヤマハほどの規模の会社が5年で売上2倍になったと言う感じです。
今回はそんな今更知らないとは言えないデザイン思考について導入例を交えながらわかりやすく解説したいと思います。
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デザイン思考とは?
出典:www.photo-ac.com
デザイン思考とは、アメリカのデザインコンサルティング会社のIDEOが提唱した問題解決のプロセスで、一言で表すと、「ユーザーの本質的なニーズを見つけ、イノベーションを起こすプロセス」と言えます。
この方法がなぜ今流行っているのかというと、
・イノベーションを促進する
・良いアイデアが生まれやすい
・遊び感覚でアイデア・イノベーションを生み出す
・強いチームを作る
といった効果が期待されるからです。
「本当に?」と思う方もいるかもしれませんが、紹介するプロセスを理解し実践することでその効果を実感できるでしょう。
デザイン思考のプロセス
それではデザイン思考のプロセスをみていきましょう。ハーバード大学デザイン研究所(d.school)のハッソ・プラットナー教授が提唱する、『デザイン思考の5段階』によると
①共感
②問題定義
③創造
④プロトタイプ
⑤テスト
という順序で実現されます。
①共感
デザイン思考はまずユーザーからスタートします。既存の製品やサービスのユーザーがどのようにそれらを利用し、どのようなことに不満を持っているのかを徹底的に調べます。
そして気がついたことやわかったニーズをどんな小さなことでもメモしていきます。
②問題定義
そうして調べたことから、何が問題・課題なのかを定義していきます。「ユーザーの本質的なニーズは何か」この問いから問題・課題に落とし込んでいきます。
d.schoolでは、問題定義を3つのSにそって考えると良いとしています。
1.Short(短く)
2.Specific(具体的に)
3.Sexy(魅了的に)
問題定義を考えたら、一度これらに合うかどうかチェックすると良いでしょう。
③創造
そうして導き出した問題定義の解決策を考えていきます。どんなくだらないアイデアでも良いので、「質より量」でどんどんアイデア出しをします。いわゆるブレインストーミングです。そしてつぎつぎとアイデアを検討していきましょう。
その中で出てきた、有望そうなアイデアはプロトタイプ段階へと持っていきます。
④プロトタイプ
創造段階で出たアイデアをプロトタイプとして形にしていきます。ここではプロトタイプなので、紙コップや割り箸、ダンボールなど、身近にあるもので作って構いません。
とにかく形にしてみることで、絵や想像だけではわからなかったことが見つかり、より良いものに作り変えることが可能です。紙だけ使うペーパープロトタイプはこちらから(新規タブで開きます)
⑤テスト
最後に実際に知り合いなどにテストしてフィードバックをもらいます。なぜなら外部からの意見で今までの開発メンバーだけでは気が付かなかったことが分かるからです。そして、プロトタイプをまたより良いものへと作り変えます。
このように見ると、デザイン思考がクリエイティブであることがわかると思います。また、ブレインストーミングやプロトタイプの作成を行う段階でチームのコミュニケーションが促進され、強いチームを築くことも可能です。
ここまでデザイン思考について見てきましたが、まだ良くわからないというのが本音だと思います。そこで、以下からは実際にデザイン思考を使って作られたと言われているiPodの開発をこの5つの段階に分けて見て、デザイン思考の理解を深めていきましょう。
iPodから見るデザイン思考の実践例
①共感
iPodの開発チームのメンバーはまず、既存の音楽プレーヤーや、そのユーザーの利用状況を調べました。当時、MDで音楽を聞くことが主流でしたが、聞きたい音楽を聞くためにはMDをわざわざ取り替える手間がありました。
音楽データをプレーヤーに取り込んで聞くiPod型の音楽プレーヤーもありましたが、CDから音楽を一旦、PCに取り込んでそれからプレーヤーに入れ直して聞くというな面倒作業をしなければなりませんでした。
ユーザーはただ音楽が聞きたいだけなのに。さらにプレーヤーには少ししか音楽が入らないという問題もありました。
②問題定義
そうして、iPodの開発チームは簡単に音楽が取り込めて、なおかつ沢山音楽を入れることができるプレーヤーを作ることにしました。それは初代iPodのキャッチコピーであった「ポケットに1000曲」という言葉にも現れています。
③創造
そして、解決策を色々と考え出しました。簡単に操作ができるクイックホイール、PCにつなぐだけで自動的に同期ができるAuto-Sync、聞きたい曲を探しやすい画面サイズやすぐに見つけ出せるUIなどが編み出されました。
④プロトタイプと⑤テスト
彼らは良いと思ったアイデアはすぐプロトタイプにしてメンバーでテストしました。あのクイックホイールはアイデア出しからプロトタイプ制作の繰り返しまでの中で生まれました。
「ふと頭に浮かんだアイデアを説明すると、一同はすぐにピンときた。片手で持って親指で操作するのに、この機構はピッタリだ。即座にプロトタイプが作られた。プロトタイプを見たメンバーは、一度で気に入った。」
このようにしてiPodは誕生しました。以上の一連の動作は正にデザイン思考のプロセスを踏んでると言えるでしょう。
デザイン思考で新たなイノベーションを
いかがでしょうか。このように、デザイン思考は現在様々なところで使われ、大きな成果を上げています。デザイン思考は、とにかく実践することで身についていきます。
みなさんも、日々の課題をデザイン思考的に考えてみることからはじめてみてみると良いかもしれませんね。