今回はMarketing-Robotics株式会社、代表取締役の田中亮大氏に「インサイドセールスの現在と今後」や「ユーザーにヒアリングしてやるべき3つのこと」についてお話を伺いました(聞き手:アントレプレナーファクトリー 菅野雄太)。
−インサイドセールスの現状や今後について教えてください
田中:インサイドセールスを多くの人が勘違いしてます。「インサイドセールス=訪問しない営業」「フィールドセールス=訪問する営業」と思っている人がいますが、何の意味もないですよ、そんな定義。
要は、何をするか?ということで、インサイドセールスとは何をする仕事なのか?を考えないといけません。契約をするのがフィールドセールスの仕事です。こちらからプレゼンテーションをして契約に結び付けることがフィールドセールス。オンラインで契約を取ったとしても、フィールドセールスです。
じゃあ、インサイドセールスって何か?っていうと、フィールドセールスの御膳立てがインサイドセールスです。つまり相手の状況を聞き出して把握し、クオリファイドリード(ある基準や条件をクリアして、絞り込まれた見込み客)を作り、リードナーチャリング(有益な情報を提供することで見込み顧客の購買意欲を高めていくこと)をして、商談を設定するのがインサイドセールスです。だから、逆に言えば、訪問をしたっていいわけですよ。
例えば鳥取の営業マンが成果を出せておらず、東京にトップ営業マンがいる会社を想定します。デジタルが発達していない時代なら、東京のトップ営業マンを鳥取に出さないといけなかったんですが、今なら鳥取の営業マンがお客様にニーズを聞くことができます。そのニーズを参考に、Web会議を使って、東京のトップ営業マンがプレゼンをすることがあるじゃないですか。
この場合、鳥取でお客様を訪問している営業マンがインサイドセールス。東京からweb会議で契約を結ぼうとする営業マンがフィールドセールスとなります。
セールスというからわかりづらいですけど、インサイドセールスってマーケティングの領域です。それぞれの領域で求められるものが真逆です。フィールドセールスは話すこと、インサイドセールスは聞くことが仕事ですから。
営業部という組織を作ろうと思ったら、やっぱり機能を分解してそれぞれに特化させることがマネジメント上は大事です。
今後、非対面でのインサイドセールスの仕事はますます増えます。理由はお客様が情報をますます出さなくなるから。例えばチャットボットに自分の本音を話せるわけないじゃないですか。本音って人との会話でしか話せないですから。
「インサイドセールスは聞く仕事」だと理解して、聞く能力を高める人はますますインサイドセールスの領域で活躍すると思いますね。そして、聞く仕事から、「コンシェルジュ」としての気遣いができるまで昇華したインサイドセールスは、どこの会社からも求められるようになります。
ユーザーにヒアリングしてやるべき3つのこと
−視聴者へのメッセージをお願いします
田中:「起業やビジネスをする人へという事で言うと、みんなちょっと冷静になって、踊らされずに考えた方がいい」ということですかね。何か事業を作るときにみんな誰も思いつかなかった事業をやらなきゃって、変な前提がある。あり触れているけど、ユーザーへのヒヤリングは必須で、何を聴くべきかが大事だと思うんです。
聞くべきことは3つしかありません。1つ目は「本当はやった方がいいってみんな気付いているんだけど、やっていないこと」「自分がやるって言いだすと責任が取れないからやりだせないこと」を聴き、代わりにやり始めることができる事業を作ること。
2つ目は「本当はやめたほうがいいと思っているんだけど、今までの習慣とか、自分がやめたほうがいいと言うと、上司から怒られそうで誰も言い出せないこと」を辞めさせる事業を作ること。
3つ目はピーターティールが”隠れた真実”と呼んでいるような「誰も気づいておらず、誰もやっていないこと」をやることです。これは、誰も気づいていないから、ユーザーにヒアリングして出てこない。自ら発見するしか道はないです。
しかし、いきなりこの3つ目を実行するのは無理なので、1番目か2番目をやった方がいいと思います。これは聞けば分かる話ですから。「本当はこうしたいんですけど、できないんですよね」「本当はこれはやらない方がいいと思っているんですよね」ということを変える事業を作ったらいいんじゃないでしょうか。
商売をしようとしたときに「こういったお客さんに売りたい」というイメージはありますよね。その人に「本当はこうしたいということはありますか?」と聞けばいいし、「本当はこれやめたほうがいいって思っていることありますか?」と聞いてそれを解決するサービスをするだけで、十分商売できると思います。
1番や2番を繰り返していくことによって、3つ目の全体を俯瞰した考えができるようになると思います。