なぜ学生で起業しようと思ったのか?

銭本:高校生の時には、将来起業しようとは決めていました。ただ、当時はまだ大学在学中に起業しようとは考えていませんでした。

 

大学を卒業して、どこかに就職をして、それから起業しようと思っていたんですが、大学1年生の時に夏休みを利用して、起業家支援などを行っているNPO法人の企画に参加しました。

 

起業やスタートアップで働くことに興味を持つ学生が、起業家と会って話を聞けるイベントで、参加した時に起業家の方々に相談に乗ってもらい、ある方に「僕は将来起業したいんですけど、大学在学中に何をやっておいたらいいと思いますか?」と質問したら、「まず起業してみたらどうですか?」と言われました。

 

そして、もう一つ「起業する上で大切なことはなんですか?」と、今思えばくだらない質問をしました。
その答えは、「覚悟です。それは何かわかりますか?すべてを受け入れる決意です。」と。

 

その言葉をきっかけに「とりあえず何かやってみよう」と思い、衝動的に決断しました。直感と覚悟だけで、合理的な理由は何もありませんでしたね。

 

同級生を中心に10名くらいのメンバーを集めて、2年生の11月に株式会社ライフルーツという会社を設立したのが最初の起業です。事業としては、大学生向けのSNSの運営とフリーペーパーの発行を行っていました。

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学生起業の苦労とは?

銭本:そもそもビジネスの経験もお金もなく、失うものも何もない状態からのスタートだったので、苦労と言うと違和感があるのですが、そういう状況だったので、設立費用を含め最初諸々の費用を捻出するのはいろいろと試行錯誤しましたね。

 

学生向けSNSの利用者数をどうやって伸ばそうか悩み、貯金も全くなかったので広告などとても打ち出せず、そこで考えたのがフリーペーパーの発行でした。

 

フリーペーパーをSNSと同じ名前で展開し、冊子内にサービスの紹介も入れて、対象エリアのお店などに広告を掲載していただき、資金を得ながらユーザー数も伸ばそうという狙いでした。

 

しかし、実際動いてみると、様々な壁がありました。まず、フリーペーパー自体がショボいと手に取ってすらもらえないし、広告も集まらない。スナップ写真など広告以外のコンテンツも入れて、ある程度しっかりしたものを制作しようという話になり、見積りをとると、印刷・製本が前払いで100万円くらいかかることがわかりました。

 

もちろんバックナンバーなどもないので、企画書だけで営業し、それを少し上回る広告掲載の依頼は受注できたのですが、発行できない…。ここでキャッシュフローという概念を学びました(笑)
なんとか前払いで支払っていただけないかクライアント店舗に交渉してまわり、さらに印刷会社に着手時半金、納品後に半金というかたちで調整していただき、無事発行することができました。

 

そこで手元に残ったお金で会社を設立し、銀行から500万円くらいの融資を受け、なんとか事業をスタートできました。

 

ちなみに、当時の私には、エクイティファイナンスの知識が全くなく、こんな方法しか思いつきませんでした(笑)

 

もし知識があったら、もう少しスマートにやっていたのかもしれませんが、今振り返ると、あの経験はその後の起業家人生においても、非常に重要なものとなりました。

事業が軌道に乗ったタイミングはいつだったか?

銭本:それはFISMではなく、ライフルーツ時代のことでよろしいでしょうか?
軌道に乗ったというほどでもありませんが、今展開しているインフルエンサーマーケティング事業の前進となったタレントブログを活用したプロモーションを始めた頃から、ビジネスをしているという実感を持てるようになりましたね。

 

ブログプロモーションを始めるまでには少し間があります。もともとやっていた大学生向けのサービスはなかなか上手くいかず、銀行から借り入れたお金も1年半ほどで底をつき、一緒に立ち上げたメンバーもみんな就職活動を始めたんですが、私は銀行融資の連帯保証人にもなっていたので、そういうわけにもいかず…。そこで一人になり、現預金もないし、売り上げもないし、仲間もいない。とてもサービスを継続できる状態ではなく、その事業からは撤退しました。

 

とりあえず銀行には毎月返済していかないといけないので、大学を中退し、日銭を稼ぐ為に何かやらなければと、インターネット広告代理業のようなことを始めて、なんとか食い繋いでいました。

 

しかし、こんな状況ですが、人のご縁には恵まれ、意外と毎日充実していました。たくさんの先輩経営者に可愛がっていただき、その頃からタレントやモデルなど、今インフルエンサーとして一緒に仕事をしている方々とも交流が増え、ある日この広告代理業の延長として受注した「読者モデルのブログで化粧品を紹介する案件」があり、それが転機となりました。

 

そのブログに貼ってもらったURLから広告費に対して数十倍もの売上が1日で計測され、それ以降「この商品もお願いします」「もっとブロガーを集めてください」というような依頼が集まり、正直あまり働いていませんでしたが、売上は伸びていきました。

FISMという社名に込めた想いとは?

銭本:FISMを設立したのは今から4年前で、私が28歳の時ですが、25歳くらいのときライフルーツの年商は1憶円くらいでした。ほぼ一人でやっていたので、たしかに食う分には困らないけど、何か違うなと。先ほどお話したような経緯で始めた事業だったので、はっきり言って大した思い入れもなく、むしろ自分の事業に対してコンプレックスを感じているくらいでした。

 

その頃から「何のために起業したんだろう」「どんな会社をつくりたかったのか」と真面目に考えるようになり、そこから本当に3年くらい悩み続けました。

そこで、心の底から出た答えを明文化したものが、

事業を通じて、

FUNDAMENTAL
社会が抱える課題の根本的な解決に貢献したい

INNOVATION
社会的意義の大きな新しい価値を創造し革新を起こしたい

SUSTAINABILITY
社会の永続的な発展においてなくてはならない存在となりたい

 

ということでした。
こういったISMを培っていきたいと、それぞれの頭文字をとってつけた名前がFISMでした。

 

その後、ライフルーツはFISMが吸収し経営統合しています。

なぜインフルエンサーマーケティングを行っているのか?

銭本:同じ頃、中途半端にいろいろ手を出してみて「これも違う、あれも違う」と思っているときに、ちょうど日本でも「インフルエンサー」という言葉が使われ始め、その表現を聞いたときに何かピンときたんです。それまでコンプレックスとも感じていた自分の事業に対して、少し違った見方が出来ました。

 

「インフルエンサー」という言葉の定義について、一般的にはSNS上でフォロワーが多い人たちのことを指していると思いますが、おそらく「第三者に影響を与える個人」というのが正しい定義です。
つまり、友達が一人でもいて、何かしらの影響を与えていたら、広義ではインフルエンサーと呼べるのではないかな、と私は思っています。

 

この影響の与え合いと言いますか、人と人との繋がりやコミュニケーションの相関性を研究することで、新しい社会を創造できるのではないかと考えました。

 

マーケティングのような経済活動だけでなく、例えば、交友にしても教育にしても、私たちの生活は、生まれた土地、通った学校、就職した会社など属する「コミュニティ」に影響を受けています。

 

これまでは国や市町村など、物理的距離をベースに発展したコミュニティが強い影響力を持っていたと思いますが、インターネットの発達、とくにSNS以降は、精神的な距離というのでしょうか、趣味趣向や哲学などの近い人たちが互いに影響し合ってコミュニティを形成し始めているように思います。

 

そういった背景の中で、消費というのは、その人の「価値観」を定量的に説明する上でわかりやすい指標だと思っており、私たちはまずインフルエンサーマーケティングに注力することにしました。

これからインフルエンサーマーケティングはどうなっていくのか?

銭本:私たちは、価値観やライフスタイルが多様化しつつある現代において、個別最適された情報を発信して、見ている人たちを豊かにできるのがインフルエンサーだと考えています。

 

ただ、実際のインフルエンサーマーケティングの現場では、その特性を最大限に活かしきれていないことも多く、様々なところでその背景となっている課題を感じています。

 

例えば、この業界では、インスタグラムのいいね数をフォロワー数で割ったものをエンゲージメント率と呼んでいますが、これだけでは大した指標にはならず、本質的に「エンゲージメント」を定量化したものにはならないと思っています。

 

あくまで個人的な感覚の話ですが、対象コミュニティの年齢が若かったり、肌の露出が多い(水着や下着の写真を投稿している等)ほうが、いいね数やコメント数はつきやすいです。

 

また、ブログでのプロモーションが主流だった時代は、クリック数やCV数の計測用URLを貼り付けていましたが、当時PV数と効果の相関性は、ないとまで言いませんが、少なくともブログのアクセス数順に効果が出るということはありませんでした。

 

もっと深いインサイトに触れていかないとわからないことが多く、そうでなければ、そもそもインフルエンサーマーケティングである必要もないのではないかと思っています。

 

そこで私たちは、各インフルエンサーのフォロワー数やインフルエンサー自身のプロファイルだけでなく、フォロワーの属性や行動データを機会学習で解析することで、本格的に個別最適されたマーケティングを目指しています。

今後の組織戦略、成長ビジョンについて

銭本:これらのデータを当社では、インフルエンス・データと呼んでいるんですが、この数値をもとにグラフ上に分布していくと、近い属性も持った人たちが同じようなところに固まり、ひとつひとつが村のように見えてきます。

 

今後は世界中のインフルエンサーを対象に研究していきたいと考えていて、ここで得られる世界規模のデータを元に同じようにマッピングしていくと、価値観やライフスタイルが多様化するこれからの時代にふさわしい「新しい世界地図」を描けるのではないかと思っています。

 

既に海外でも事業展開していて、社員は外国人も多いです。今は、中国、台湾、香港、タイ、ベトナムといったアジアが中心ですが、これからもっと広げていき、将来的には、国境を意識せず、グローバルというよりはボーダレスな事業展開をしたいですね。

欲しい人物像について

銭本:まず、何よりもビジョンに共感して参画してもらいたいと思っています。FISMが掲げている理念は崇高なものだと認識しています。

 

簡単に実現できるものではないし、リアリティーがないと受け取られることも多いんですが、そのあたりを「いいですね」「おもしろいですね」と言って、本当でやる気になってくれる人とやりたいですね。

 

今ある現実も、過去に誰かが想像したもので、やはりそこで「自分には無理だ」と考える人もいれば、「自分が出来てもおかしくないんじゃないか」と考える人といると思いますが、後者の人に来てほしいと思います。

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