後継者としての不安を乗り越えたタイミングとは?

「ホテルの使命って何だろう?」


まず舵をとるという以前に、自分がこの仕事を後継者としてやっていくんだと腹を決めるまでが一番大変でした。
入って3年間くらいは逃げ出したい気持ちがすごく強くて、前の会社を仕事もやりがいがあって充実していて定年まで居ようと思っていたのに、何で辞めて来てしまったんだろうという後悔がものすごく大きかったです。
そう言いながらもいろいろ経営者の集まりに顔を出すようになって経営者同士の友達ができていく中で、やっぱりみんな同じような思いを乗り越えながら後継者として承継して行っているということを知って少しずつ勇気を頂けたり、私に考える機会を与えていただけたことで、少しずつ事業承継していこうという気持ちになっていけました。
後に引けないというのももちろんありますけども、なんとかしないといけないという焦りの方が大きかったですが、支えてくれる仲間がいたので気持ちが前向きになったというところは非常に大きいと思います。
また、ある勉強会で「自分のホテルの使命ってなんだろう」と考える機会がありまして、そこでカプセルホテルを父がなぜ作ったのか、カプセルホテルを通して世の中のどんな役に立とうとしたのかというところを真剣に考えました。
なかなかそういう話は父とは直接しないんですけども、きっとこうなんだろうなという思いと、自分だったらこういういう人達の役に立つホテルでありたいという想いを持つようになってから、真剣に事業に取り組んでいこうと思えるようになりました。

時代とともに変わるカプセルホテルの存在


カプセルホテルの存在は時代とともに変わっていきます。できた当時はバブルでしたから、残業や接待で遅くなってタクシーもまともに捕まらない時代だったので、そういう人たちにはすごく役に立ったと思います。今は外国人の観光客が、日本にしかないカプセルホテルに泊まることも一つの観光の楽しみとして来られる方も多くいらっしゃいます。
使命というものは時代とともに変わるかもしれないですけれども、どういう人たちに役に立って存在意義があるのかというところは忘れずに運営していかないといけないと思うきっかけにはなりました。
昔と違って女性も非常にアクティブになり、仕事で一人で出張に行くことも多いですし、そういった時にできるだけ安価で安全に泊まってもらえるホテルというところでは非常に役に立っているんじゃないかと思います。

本気でやれる覚悟を決められるか


実際には自分のやりたいこととは違うかもしれないですけども、創業者が築いてきた財産だったりがありますので、一から自分が作らなくてもあるものが使えるというのは一番の魅力じゃないでしょうか。
大変なところはやはり「自分がやりたいことかどうか」というところですよね。
おそらく創業者は、すごい夢を持って起業されていると思うんです。
でも、後継者はあるものを受け継がないので、本気でやれるかどうかという覚悟を決められるかが大変でした。

創業者の想いを理解する


会社に入って色々後悔したり、自分がやっていけるか悩んでいた中で前向きに取り組んでいこうと思えたのは、親がどういう想いでこの会社を立ち上げたのかということがわかった時が1番大きかったです。
親がどんな想いでこのホテルを作ったのかという想いを知るということがすごく大事だなと思いました。
そこの起点を理解した上で次のステップへ行くことはできるけれども創業者の想いが抜けた状態で次にステップアップするのはなかなか難しいと思うので、まず親の想いを理解することが一番大事なことかなと思っています。

従業員にも幸せになってもらいたい


私が今一番力を注いでいるのは、社員教育です。やはり事業をやるからには、うちで働いてくれている従業員の方みんなに幸せになってもらいたいと思っています。
幸せになってもらうためにはみんなが仕事に対して誇りを持ってもらう必要があるため、人材教育に一番力を注いでいます。
元々カプセルホテルは地元のサラリーマンの人たちが困った時のためにありますので、地域活性というところにはできるだけ積極的に取り組むようにはしています。
もう一つは、カプセルホテルというのは「汚い、怖い、暗い」というようなマイナスなイメージが強かったんです。
女性のお客様が泊まれるようにはしたけれど、未だに「カプセルホテルって怖いんでしょ?」というような声を聞きますので、できるだけカプセルホテルがいかに安全でコストパフォーマンスがいいのかということを宣伝していきたいです。
一時期、40代~60代くらいのちょっと年齢層が高い客層になっていたんですけども、若い方にもだいぶ受け入れてもらえるようになってきましたので、こういった若い方たちにもっと積極的にアピールしていきたいと思います。
女性の方で一番多いのはイベントです。京セラドームでイベントがあるときにはすぐに満室になり、チケットの申し込みと同時にホテルの予約もきます。
あとは、大阪のミナミという立地柄、観光で来られる方が非常に多いですので、泊まりに来られる若い男女が増えてきました。
また、就職活動や受験でもカプセルホテルが利用されるようになってきて、そういうときにできるだけコストがかからないような施設として十分泊まっていただけるのかなと思っています。

後継者となる方へのメッセージ


元々うちのホテルは弟がする予定で、ましてや私は「来るな」と言われた人間ですから、会社を継ぐという気持ちは全くなかったです。声がかかったのが30代後半で、結構遅かったんですね。
今となってはもっと早くから親の会社に入って、若い時から勉強したかったなという想いがすごくあります。
サラリーマンの時も非常に充実はしてましたけれど、またそれとは違った真剣に前向きに取り組むことも可能性としてはもっと開けますし、もし継ごうと思っているのであればできるだけ早いうちに決断して、ぜひ親の会社を手伝って行って欲しいと思います。
 
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