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中小企業庁元長官・北川慎介が語る「中小企業政策の考え方」<前編>

経歴

前中小企業庁長官

慶應義塾大学経済学部卒業後、通商産業省入省。中小企業庁事業環境部財務課長、資源エネルギー庁資源・燃料部長、大臣官房総括審議官、内閣官房内閣審議官、貿易経済協力局長等を経て、中小企業庁長官に就任(2013~2015年)

地域ごとの開廃業について

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開廃業率は雇用保険に入っている事業所の数値を使うことが多いですが、統計によって扱っているものが違うので注意が必要です。どの統計結果で開業率・廃業率を見ても、長期的には開業率も廃業率も下がっています

それが1つの流れではあるのですが、なんとかどちらの数値も押し上げたいと思っています。「廃業がダメだ」ということはなくて、新陳代謝という観点からも必要です。前向きな選択肢として廃業もあることを広く認識してほしいですね。

 

地域ごとに見てみますと、開廃業率は沖縄や福岡、東京が特に高いですね。経済的に活性化しているところは開廃業率が高くなるのはイメージしやすいですが、「沖縄がなぜ高いのか」と思ってしまいますよね。

1つは公共事業や観光業が盛んで経済的に盛り上がっていること、そしてもう1つは失敗をとがめない社会構造であることが要因だと思います。「やってみればいいじゃないか、応援するよ」という共通認識があるので、創業のしやすさに繋がっているのだと思います。

経営者の個人保証

お金を借りている人だけじゃなく、創業する人も怖いものだと思います。親の家がなくなってしまうと聞くと、どうしても躊躇してしまう人もいるでしょう。

この心理的なハードルを下げるためにも、最低限の保証を認めた上での仕組みを作っていかないといけません。海外でも、経営者の個人保証がないわけではないので(下記、参照)。

 スクリーンショット (566)

出典:www.chusho.meti.go.jp

中小企業側も、金融機関が欲しい情報を開示しないのは問題なので、事業計画をきちんと伝え、生活費は別で確保しておくことが大切だと思います。銀行は「この人に貸して、本当に大丈夫か」というところを心配しているのでね。本当は税理士がしっかり言ってあげないといけないのではとも感じています。

企業が生み出すイノベーションとは

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ものづくりにおいては、下請けからの脱却をしなければいけないと感じています。できればグローバルニッチトップ、それに近い存在になってくれればと思いますね。

やはり、付加価値を地域外から持ってくる地域中核企業が育つことが必要です。これがないと地域が衰退するだけです。これがなくなって困ったのが、例を挙げると東日本大震災後の三陸の水産加工業です。

水産加工場が働く場所となり雇用を生み、外からお金を稼いで域内の需要を生み出していました。これが潰れてしまって大きなダメージを受けてしまったのです。このように、地域で外と繋がり、付加価値を生み出す企業が増えればいいなと思っています。

 

一方、商業・サービス業は労働集約的なので、生産性を上げるのはなかなか難しいと思います。ここで重要なのはIT化と差別化です。差別化によって付加価値を生み出すことを考えないといけません。そのためには経営計画が立てることが重要です。

IT化はまずはコストダウンですので、それだけではイノベーションは起こらないと思います。コストカットだけじゃない、次の一手が必要で、ブランド化していく必要があります。ものづくりのイノベーションはわかりやすい分、商業・サービス業はそこにしかない何かを生み出さないといけないと思います。

イノベーションは「いいもの作れば普及する」と考えてしまいがちですが、経営者や支援機関は、全部がそうとは限らないことを認識しないといけません。

廃業について

廃業の決断を後回しにしてしまうのは、「自分はまだやれる」と思っていることと、お金を借りていて、たためないことが大きな原因だと思います。

とある経営者は80歳を超えていて、「会社を潰すと社員の生活が確保できないので会社を続けている」と話していました。事業譲渡すればいい話ですが、借り入れがあるので難しいですよね。借金がすぐに返せたり、チャラにできるわけではありませんので、実際そういう経営者は多いですよ。業績も悪いわけではないのでね。

本当は誰かが第二創業の形で継いでくれるのがいいのでしょうけど、オーナーも「自分が作った会社」という認識が強く、気持ちを割り切るのが難しいのだと思います。