リモートワークと働き方改革

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働き方改革の動きが各地で起こる中、それより以前から注目され始めていたリモートワークがその広がりを加速させています。

ベンチャー、スタートアップだけでなく日本を代表する大企業もリモートワークを導入・運用し、また海外では一風変わったリモートワーク・スタイルも出現しています。

日本は今、人材不足に悩まされている国です。
「労働人口」「生産性」の両面から「人」に関するアプローチが迫られています。

リモートワークは、そのアプローチの1つです。
全ての企業・職種でリモートワークが導入できるわけではありませんが、部分的な導入は可能かもしれません。

リモートワークのメリット、デメリット、事例について知っておきましょう。

リモートワークとは

リモートワークとは、オフィスではなく別の「遠隔地」にて仕事をするスタイルのことです。

例えば、企業に雇われたエンジニアのAさんがいたとします。
Aさんは週に1回、チームミーティングのためオフィスに出勤していますが、それ以外の日は家で働いています。
連絡が必要な場合はSlack(チャットツール)で、対面が必要な場合はZoomなどのオンライン会議ツールを用います。

子供が生まれたばかりのAさん。
リモートワーク制度のおかげで、家事や育児を協力しながら行うことができ、非常に満足しているようです。

この例のようにリモートワークは、「家で働く」という選択肢を導入することで、より従業員の生活に合わせたワークスタイルを実現することが出来ます。

リモートワークにもその形態によっていくつかの種類があります。

  • ハイブリッド・リモートワーク :週の何日かはオフィスで、残りはリモートで働くスタイル
  • フルタイム・リモートワーク : 全勤務時間がリモートワークであるスタイル
  • リモート・アウトソース : 正規雇用者でない従業員のフルタイム・リモートワーク
  • テンポラリー・リモートワーク : 一時的・短時間のリモートワーク

ちなみに、リモートワークと同じような言葉に「テレワーク」というものがあります。
違いとしては、リモートワークが「企業における働き方」を指すのに対し、「テレワーク」はより純粋に場所が固定されない(遠隔での)働き方を指すものです。
とはいえ、完全に区別して使われているわけでもないので、あまり気にする必要はないでしょう。

リモートワークのメリット

リモートワークのメリットは以下のようになります。

コストの削減(通勤やオフィス)

リモートワークの場合、通勤する必要がありません。そのため交通費がカットできます。

また、リモートワークが盛んな企業であれば、オフィス設備を充実させる必要はなくなります。光熱費等も抑えられるでしょう。
アメリカのある企業では、従業員一人あたり約110万円のコスト削減になったという話もあります。

生産性の向上

オフィス環境には業務を阻害する要因も多くあります。
人間関係等もいろいろあるでしょう。

リモートワークはそれらの要因から離れた業務を可能とします。

さらに通勤にかかるストレス軽減も期待できます。
通勤による健康への影響は意外と大きいです。またある報告では離婚率の上昇も確認されています。

人材の確保(採用、流出の阻止)

リモートワーク最大のメリットともいえるのが、この「人材の確保」です。

リモートワークであれば、海外だろうと地方だろうと、地理的な制約に縛られることなく優秀な人材を採用することが出来ます。

また、育児やその他の事情で退職せざるをえなかった従業員にも働いてもらえる可能性があります。
せっかく育ててきた優秀な社員たちが流出するのを防げるのです。

リモートワークのデメリット

リモートワークには当然デメリットも存在します。

合わない人・職種がある

エンジニアやデザイナー、編集や営業などはリモートワークと親和性が高いです。
一方開発部系の人はどうでしょうか?

全ての職種・企業がリモートワークを導入できるわけではないのです。

また、リモートワークは自己管理を求められます。
自宅での業務では様々な誘惑に耐えられないような人には難しいでしょう。

コミュニケーション・ミスが起こる

リモートワークの一番怖い部分は「コミュニケーション」のミスです。
チャットツール、つまりテキストベースでのコミュニケーションが主となるため、オフィスでの直接対面するのに比べてコミュニケーションの精度が落ちてしまいます。

オンラインミーティングやオフィスとリモートを仮想的に繋ぐツール(日産などが導入)を駆使することで対策は可能ですが、やはり注意すべき部分の1つとなるでしょう。

評価に不安を覚える人もいる

また人事評価への影響もあります。
上司が部下の仕事ぶりの全てを見られるわけではなくなるからです。

人によっては、自分の頑張りが認められていないのでないかと考えてしまう人もいるでしょう。
逆にリモートワークをしている人に対して、微妙な感情を抱く人もいるかもしれません。

ツールなどの整備だけでなく、制度設計・文化の浸透にも焦点を当てる必要があります。

人材育成には向かない

また、リモートワークは基本的に人材育成には向きません
もちろん可能ではありますが、フィードバックの質・量は落ちてしまうでしょう。
企業文化の浸透をどのようにして補うかも考えなければなりません。

リモートワーク導入前に考えたいこと

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リモートワークのメリット・デメリットは理解いただけたでしょうか?
リモートワークを導入する前にどのようにデメリットに対処しメリットを最大化するか考える必要があります。

具体的には以下のような焦点があるでしょう。

  • その人・仕事はリモートワークに適しているのか?
  • コミュニケーション手段(ツール、フロー)は万全か?
  • 評価制度は正しく設計できているか?
  • リモートワークの文化を社内に浸透できるか?

人・ツール・制度・文化。

リモートワークを成功させるためにはこれらの観点すべてを検討し、対策しなければならないでしょう。

リモートワーク導入事例

最後にリモートワークの導入事例を3つ紹介しておきます。

リクルートホールディングス

リクルートホールディングスは、リモートワークを上手く活用している代表的な企業です。

全社員に対してリモートワークを許可し、ITツールの貸与やサテライトオフィスの整備なども進めています。

実際に半数以上の社員が生産性の向上を感じているようです。

主な原因として「コミュニケーションの効率化」。
以前は近くの社員と雑談などをしていたようですが、リモートワークでは必要な内容にしぼってコミュニケーションができているようです。

人間関係の意味では代替手段が必要ではありますが、生産性向上の好事例といえるでしょう。

トヨタ自動車

日本の代表企業、トヨタ自動車もリモートワークを導入しています。
トヨタの場合は全社員ではなく、「リモートワークによってコスト削減・生産性向上」が見込める職に対してリモートワーク制度を敷いているようです。とはいっても50%以上の社員が対象になっています。

トヨタのような大企業でもリモートワークに対応できるのだ、と見せてくれる例です。

eXp Realty

最後は海外から変わり種をひとつ。

北米の不動産会社「eXp Realty」です。

この企業、なんと物理的なオフィスを持っていません(厳密には法律上のオフィスはあります)。

では社員はどうしているか?

バーチャル上のオフィスに出社しています。
社内の専用ソフトを使うだけで、バーチャル上に構築されたオフィスに出社し、そこで他の社員と「対面」して仕事に取り組めるのです。

場所に縛られることがないので、世界中から優秀な人材を採用できます。
実際、eXp Realtyは急成長を見せているようです。

「変わり種」と言いましたが、この先VR等の技術が発展し、5Gなどインフラも整備されていけば、オフィスの主流がバーチャルに移る可能性もあります。

「リアルオフィス? 平成だね!」

と言われる時代が来るかもしれないのです。

リモートワークで柔軟なワークスタイルを!

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リモートワークには様々な乗り越えるべき壁が存在します。
人・ツール・制度・文化と検討しなければならないことは多岐に渡り、導入の方法によっては初期コストも相当にかかることでしょう。

しかし、これからのビジネスはより一層「人」にフォーカスする必要があります。
リモートワークはその手段の一つ。

一度も検討していない、というのでは「人」を大切に思う企業とはいえないかもしれません。
ぜひ一度、リモートワークと自分の会社について考えてみてください。

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