「IoT」が実現する世界から「IoA」へ
「IoT」(Internet of Things- モノのインターネット)という言葉が世間で用いられ始めたのは1999年からと言われています。
現在、IoTは我々の生活に徐々に浸透し、2013年の国内「IoT」市場規模は11兆1240億円、「IoT」デバイス普及台数は4億9500万台まで大きく拡大しています(IDC Japan調べ)。
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「IoT」を簡単に一言で表すと、様々なモノがインターネットで繋がる技術です。特定の空間内で、モノがインターネットに接続され、情報交換をして相互制御する仕組みです。
大きな特徴は必ずしも人を媒体とする必要性がなく、モノ同士が直接通信を行ったり、人が介在しないところでモノがインターネットに繋がって、人にサービスを提供する点です。
しかし、最近では「IoT」から更に進化した「IoA」(Internet of Ability )が注目を集めています。
「IoA」の第一人者、東京大学大学院情報学環教授である歴本純一氏は、”「IoT」は人の可能性を更に広げる世界を作る”と話しています。
今回は、そんな大きな可能性を秘めた「IoA」に迫りたいと思います。
「IoA」とは?
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1986年に東京工業大学理学部情報科学科修士過程を終了した歴本純一氏は、日本電気、加アルバータ大学を経て、ソニーコンピュータサイエンス研究所に勤務しました。
1999年からは同インタラクションラボラトリー室長の職に就き、2007年より東京大学大学院情報学環教授を兼務しています。
その中で、世界初のモバイルARシステムNaviCamやマーカー型ARシステムCyberCode、マルチタッチシステムSmartSkinを発明して、日本ソフトウェア科学会基礎研究賞を初め、数々の賞を受賞しています。
歴本氏の提唱する「IoA」を簡潔に定義するならば、「人の能力がネットと繋がることによって、より能力を発揮する機会が広がっていくこと」だと言えます。彼は、「IoA」の時代がいずれ到来すると主張しています。
「ヒューマンインターフェイス」を専門とする歴本氏は現在、実世界・人間・コンピュータの関係を考える「実世界指向インターフェイス」に取り組んでいます。
その1つとして、AH(オーグメンテッド・ヒューマン)の研究があります。AHは、例えば人間がスポーツ等を行う際に人間の身体能力を高める機能を増強するものです。
これは単にコンピューターが人間に代わって何かをするのではなく、人をより強化し拡張させる目的があります。
こういった技術が増えていくことによって、歴本氏の提言する「IoA」の時代に近づいていくのです。
「IoA」がもたらすもの
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先ほど述べたものとは別に、歴本氏のAH研究の中にはドローンを使った研究もあります。
このプロジェクトは「フライングヘッド」と呼ばれ、人間が装着しているヘッドマウントディスプレイへ、空を飛ぶドローンの映像を流します。
なんと、人間の動きをドローンに反映させることにより、人間が向きを変えるとドローンもそれに追従するのです。
こうすることによって、自分が空を飛んでいる仮想体験ができます。自分の周りをドローンが飛んでいると、そこには自分が映し出され、いわゆる体外離脱のような体験をすることもできます。
このように、「自分とは違うモノの中に入って、違うことができること」を、歴本氏は総称として「ジャックイン」と呼んでいます。
この技術によって私たちの身近なところで可能になることといえば、ゴルフのスイングやジョギングのフォームを、ドローンを飛ばすことによって後ろからリアルタイムで見るといったようなことが挙げられます。
単なる経験だけでは習得できない能力を、早く正確に伸ばしていくことを可能にするのが「IoA」なのです。
最後に
現在の生活では、「IoT」の技術が我々の知らないところで数多く存在しています。そしてその進歩は、以前と比べると目を見張るものがあります。
進化した「IoA」が身近な存在となれば、人間の可能性は更に広がるはずです。
人工知能が人間の職業に置き換わるという見方もありますが、「IoA」が広がっていくことによって、人間とコンピューターが対立する世界ではなく、お互いをサポートして融合することにより更に力を発揮する世界がくる日もそう遠くはないと言えるでしょう。