意外と費用が掛かる中高生の部活動
中学高校時代、何らかの部活動を行っていた方も多いのではないでしょうか?では日本の中高生が、部活動を行っている割合はどのくらいだと思われますか?
少年教育振興機構が2016年に発表した統計では、中学生(2年生)では約90%、高校生(2年生)では約80%の生徒達が何らかの部活動を行っていることが明らかになりました(2014年度調査)。この調査から、かなり高い部活参加率であることが分かります。
内訳を見てみると中学生の約70%が運動部に所属して、20%が文化部に所属しています。高校生になると文化部の比率が30%弱まで上昇し、運動部は50%強まで落ち込みます。
中高生を通じて多数の生徒が部活動に勤しむ現在の日本ですが、保護者を悩ますものが活動費です。少し古いデータですが、2008年に文部省が調査した“子供の学習費調査”を見ると、高校生1人に掛かる学校外活動費は公立で年間約16万円、私立で年間約20万円となっています。
ユニフォームや道具に加え、遠征や合宿費、交通費などが掛かり、思いのほか大きな出費となっていることが分かります。
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部活動のそれなりのお金が必要なのは日本だけではありません。北米でもどのように子供達に掛かる部活動費を捻出するのかで、保護者達は頭を悩ませています。その問題を解決したカナダ発のスタートアップがFlipGive社です。
日々の生活から部活動の費用が捻出される仕組み
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FlipGive社は、主に学校の部活動や地域スポーツチームに対し、活動費を捻出するプラットフォームを提供する会社です。仕組みは至ってシンプルです。まずは自分が所属若しくは運営する部活動や地域スポーツチームなどを、FlipGive社に登録します。
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そして自分のチームに所属している選手・コーチは勿論、保護者やその関係者を登録します。登録されている個人達が、FlipGive社と提携している企業で買い物をすると、企業は個人に対してではなく、所属している部活動やチームにキャッシュバックするシステムになっています。
提携企業からキャッシュバックされたお金を積み立てて、部活動や地域スポーツチームなどの活動費にあて、子供達がのびのびと部活動をエンジョイできるようにするためのプラットフォームをFlipGive社が提供します。
保護者の実体験からビジネスモデルを思いつく
FlipGive社の誕生は2008年に遡ります。カナダにあるウェスト・オンタリオ大学のExecutive MBAプログラムに参加した3人が、ビジネスモデルを考えFlipGive社を創業します。その中でも中心人物であったSteve Croth共同創業者兼CEOが当時を振り返ります。
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Croth CEOはミッドキャリアに差し掛かり、お金だけではなく社会に貢献出来る会社を作れないものかと考えていました。当時、小学生2人の父親だったCroth CEOのもとには、小学校の部活動から活動費の支援や募金活動をして欲しいという依頼が、定期的になされていました。
募金活動で出来ることは限られていて、商品を高い価格で無理矢理販売したり、クッキーなどのお菓子を作り販売したり、家でいらなくなったものをオークションに出したりすることぐらいしかありませんでした。しかしこれらの募金活動を行うにしても多くの労力が掛かりますが、見返りはその労力に値するものではないと、Croth CEOは常日頃から考えていました。
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Croth CEOはもっと良い方法があるはずだと考えます。彼がまず注目したのが、小売企業の視点です。小売企業は扱う商品に限らず、常に消費者とより良いコネクションを築きたいと考えているはずだ。そして地域社会に貢献することにより、消費者に良い企業イメージを与えたいとも考えている。
一方消費者は、生活をしていく上で買い物をしないわけにはいきません。日常の一般消費と、小売業が欲している消費者との良いコネクションを組み合わせ、募金活動を実現させたのがFlipGive社です。
最初は父兄達の口コミで広がって行ったFlipGiveですが、現在ではそのビジネスモデルに惹かれて多くの有名企業が提携しています。提携企業はスポーツブランドが多く、ナイキやアンダーアーマーがその代表例です。また日々の消費から部活動の活動費を捻出するというCroth CEOの理念に沿って、スターバックスやドミノピザなども提携企業に名を連ねています。
最大50%のキャッシュバック
一般的な企業のキャッシュバックは商品代金の5-20%程度が多いようですが、靴や革製品のALDOは最大50%のキャッシュバックを付与しています。現在では参加者が50万人を突破したFlipGive社の今年度目標は、同社のプラットフォームを通じてUS$400万を部活動に渡すことです。
Croth CEOの実体験から考え出されたこのビジネスモデルは、部活動に勤しむ子供達を持つ父兄の悩み解消と、消費者に対し良い企業イメージを与えられる利点が兼ね備えており、今後の発展が約束されたものと言えるでしょう。