日本ベンチャー大賞に選ばれた大学発ベンチャー企業
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研究者出身の起業家という経歴を持ちながら、先日、日本ベンチャー大賞において最も高い評価である内閣総理大臣賞を受賞した大学発ベンチャー企業があります。
CYBERDYNE(サイバーダイン)です。
サイバーダインは工学博士である山海嘉之が率いる筑波大学発のベンチャー企業です。
身体障害者の歩行支援や建築や介護の場面で作業負担を軽減する装着型ロボット「HAL」を手掛けています。
研究者出身の大学発ベンチャー。そして誰もが実現できるわけがないと思っていた先端技術の実現。
成功への道のりは決して平坦なものではありませんでした。
しかし、ある一つの信念が山海氏の原動力となり、HALは今現在、多くの歩くことのできなかった人をもう一度歩かせることを可能にしたのです。
今回がそんな山海氏の信念、そしてサイバーダインが描く未来について触れていきたいと思います。
HAL誕生の原点
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山海氏がロボットに興味を持ち始めたきっかけは、小学3年生の時に読んだアイザック・アシモフの『われはロボット』でした。
そこから子供ながらに山海氏は「人とテクノロジーが一体となった新領域」を思い描きます。
やがてロボット研究の博士になることを目指し、後に筑波大学で工学博士を取得しました。
しかし、学会に所属していると研究に追われ自由なテーマを決められません。
そこで山海氏がとった選択は「学会論文を書かない」というものでした。
「論文をかかない」という行為は若い研究者にとって命取りともいえる選択です。もちろん周囲からの反対の声も多くあったでしょう。
しかし、山海氏は世界初のサイボーグ型ロボットを生み出すことを決意し、その研究に全精力を注ぎこみました。
HALの誕生には、幼い頃からのロボットに対する関心や、今自分が何をするべきか、固定概念にとらわれない最適な取捨選択を行う背景があったのです。
研究者でありながら起業を選んだ理由
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山海氏は研究に研究を重ね、身に着けることで身体機能を改善するロボットスーツHALを作り上げます。
HALは世間でも評価され、大企業からの共同開発の打診もありました。
しかし、山海氏は「意思決定、事業化までのスピードが遅くなる」と断り、自らサイバーダインを設立したのでした。
なぜ研究者でありながら起業の道を選んだのか。
もちろん既存の企業では迅速な実用化が難しかったからなのですが、その根底には山海氏の「人や社会の役に立ちたい」という信条があったのです。
やがてその努力が実を結び、2013年にはHALがドイツで医療用として保険適用が認可され、日本でもALSなどの難病を対象に実用化されました。
現在HALは、障害者のリハビリテーションや、介護や建設業など身体の負荷がかかる仕事など様々な分野で活躍し、世界から脚光を浴びています。
サイバーダインが目指す未来
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「HAL」の開発から様々な分野で活躍を見せているサイバーダインですが、この企業の目指す未来とはどのようなものなのでしょうか。
「人に寄り添うテクノロジー」を世の中に広める。それが社会問題を解決し、また新たな産業を生み出す。この循環が新たな開拓者を育てる。
「社会や人の役に立ちたい」
この信条が山海氏の原動力となり、ベンチャー企業として社会に貢献し続けているのでしょう。
信念を貫き、決して挑戦を恐れない山海氏の生き方は、研究者・経営者の目指すべき姿でもあります。