恵まれた奨学金制度のアメリカ
最近、奨学金の返済に行き詰る人々がメディアなどに取り上げられて、社会問題化しています。そして日本の奨学金制度自体に問題があるのではないかという声も上がっています。
確かに日本とアメリカなどの諸外国では、奨学金の定義は少し違うようです。アメリカの例を挙げると、奨学金は返済義務のない給付金であり、貸与するものは学生ローンと呼ばれています。一方、日本では貸与型のものも含めて広義に奨学金と呼ばれています。さらに日本の奨学金の大部分は貸与型である点が、アメリカなどと大きな違いです。
アメリカの大学の学費は非常に高く、名門大学では年間5万ドル(約525万円)もの学費を要する大学も多々あります。高額の学費に対応するため、奨学金制度が発達しているのも理解できます。
アメリカでは奨学金も多種多様なものが存在しますが、それらは大きく分けて2つに分類できます。成績優秀者に送られるメリット型、低所得者やハンディキャップがある方々へのニーズ型です。メリット型、ニーズ型それぞれに、人種、性別、専攻科目などによって対象者が限定されるものも多く存在します。
一方、日本の奨学金は貸与型が主流ですが、その中には無利息型と利息型が存在します。アメリカでは利息型は学生ローンに分類される場合が多いようです。アメリカでも学生ローンの金利が高い点は問題になっています。
日本と比べると、非常に充実した奨学金制度が存在するアメリカでも、お金が問題で教育の機会を得られない若者たちが存在します。その現状を少しでも改善出来ないかと考えた女性がいます。Beth Schmidt氏を紹介いたします。
出典:www.forbes.com
“全ての人に平等な教育機会を” Schmidt氏の理念
高校時代から教育に関する職業に付きたいと考えていたSchmidt氏は、Middlebury大学とLoyola Marymount大学で教育学を学びます。その過程において、様々な理由で学校からドロップアウトしてしまう学生達を目の当たりにします。
この現状を憂い、危機感を感じたSchmidt氏は自分の力で現状を打破したいと考えます。特にSchmidt氏が力を入れたいと考えたのが、才能や情熱があるにも関わらず、金銭的な理由から学業が続けられない若者を救うという点でした。
2010年、Schmidt氏はアクションを起こします。サンフランシスコにWishboneという非営利団体を立ち上げます。
出典:www.wishbone.org
Wishboneは金銭的な問題でドロップアウトしたり、高度な教育を受けられない若者に対し寄付を募り援助する組織です。
Wishboneの理念はSchmidt氏の思いがそのまま表れたものです。“全ての人に平等な教育機会を”という理念のもと、Wishboneはそれを実現させるために誕生しました。
出典:www.ffwd.org
寄付者にも満足を
寄付をする人間が、寄付をして良かったと思える仕組みを作ろうとSchmidt氏は考えます。まず、生徒は学校の教師を通じてWishboneのことを知る仕組みになっています。そしてWishboneの援助を受けたいと考える生徒は、オンラインで申請を行います。その際に幾つかの条件があります。
1. 9年生から12年生(日本の高校生相当)
2. ニューヨーク市、サンフランシスコ市、ロスアンジェルス市、コネチカット州に在住し
ていること
3. 親が低所得層であること
4. ある特定分野に情熱を持っていること(例:音楽、科学、スポーツ、リーダーシップ等)
書類選考を経て面接が行われ、合格者が決まります。合格者はWishboneが提携している質の高い教育プログラムを、受講できる機会を得ることになります。
合格者は自分が将来どのような職業に就きたいか、そのためにはどのような教育が必要であるかをウェブ上で公開します。そして自分の熱い思いも伝えます。これをウェブで見た人々が共感する合格者に寄付をする仕組みになっています。
さらに寄付をした若者がどのような勉強をして、どのように成長しているかをWishboneはレポートします。このような仕組が寄付者の満足度を上げて、さらなる寄付につながる仕組みです。
Wishboneが提供している教育プログラムの1つは、大学のサマープログラムに若者を参加させ、より高い専門的な学問に触れる機会を作ることにより、彼らのモチベーションを上げることを目的としています。
Wishboneではすでに1,019人の若者に援助を与え、その中には自分の夢を実現させようとしている人間もいます。
新しい寄付の形を作り社会貢献を行っているSchmidt氏にも注目が集まり、Forbes誌の”30 Under 30 (30歳以下の注目される30人)”にも2度選出されています。
さらに2014年にはSchmidt氏の行動力が評価され、” People pushing the world forward through doing ( 世の中を自らの行動で前進させている) ”賞を受賞しています。
Schmidt氏の今後のさらなる活躍に注目です。