事業承継とは違うスタートアップのM&A
ーベンチャーキャピタルから資金調達をする会社のM&Aについて、今、どのようにお考えですか?
荒井:今、ウェイトでいくと、事業承継のお客さまが5割ちょっとで、後継者がいない会社がどうなるかというと、最後はつぶれてなくなります。そこにわれわれが介在することで、次にやってくれる親会社が見つかる、会社が存続する、そういう貢献なわけです。
一方でスタートアップのM&Aは、やや毛色が違うと思っています。スタートアップは新しいものを生み出していますが、どうやればスタートアップの企業がどんどん生み出されていくかを考えていくと、スタートアップのM&Aのマーケットが広がっていかないといけません。日本の場合、起業して失敗するとペナルティーを取らされますが、うまくいってもごほうびはありません。そうすると起業するリスクは高いですよね。
我々がイグジットマーケットをどんどん広げていくことで、もっと起業する人たちが増え、そして新しいものがもっと生み出されていけば、日本の産業構造を変えていくことにも貢献できるのはないかという気持ちで、スタートアップのM&Aを捉えています。
どんどんやっていけばいいと思っていますが、やる側の苦労はあります。事業承継の会社とは全然違いますから。決算書を見てもあてにありませんから。スタートアップのM&Aというのは、先を見てやらないといけないので、売り上げを見て決めるのではなく、このビジネスがどう展開していくのか、この製品・サービスがどういうふうに変貌していくかということを、ある程度予測して、最後は思い切って決断するという世界です。我々が得意としてきたノウハウを変形していかないといけないマーケットだと思っています。
49%は自分、51%は他人に貢献する気持ちが必要
ー採用で大事にされている価値観を教えてください
荒井:採用にあたって、どういう人に入ってほしいかというと、仕事する以上は人に貢献したいという気持ちが一番にあるということです。もちろんそこだけでは駄目で、49パーセントは自分のためでいいけど、51パーセントは人に貢献するという気持ちがないと、多分この仕事はできないです。
このバランスが崩れて、51パーセントが自分のためとなるとアウトです。そういう人は長く続かないですし、仲介業者のためのM&Aになってしまいます。重視していることは、自分のためもあるけれども、まずは人の役に立つという価値観が共有できているかどうかです。M&Aは大きなお金が動くので、ときには道を踏み外す人がいるのも事実ですので、そういうふうにはしたくないということです。
会ったときの印象が一番大きいです。いろいろM&Aの会社がありますし、企業の部門でM&Aをやっている大企業もありますし、そういうところとの競争もありますので、我々自身も入社したいという人たちから選んでもらわなくてはいけません。
そのときに「この会社で働きたい」と思ってもらえるかどうか。基本的には、自立して判断して動けるということを重視していきたいと思っています。自立して「あれやります、これやります」と自分で判断して動いていける、そしてそれを楽しいと思える人が入ってくれると、お互いに価値観が共有できるので、非常にいいと思います。