組織拡大に対する創業メンバー間での対立
ースケールするまでに事業面・組織面で苦労されたのはどういうことですか?
荒井:ネットで会社を売るということを、日本では私が最初に始めましたが、98年10月、その当時からアメリカではネットで会社を売買するということをやっていました。決して真新しい話ではなく、20年前からアメリカではやっていたことで、私もそれを見よう見まねでやりました。
半年後ぐらいにお客さまになっていただく会社が出てきて、そこから最初の1件を成約するのに1年半かかりました。見よう見まねだったので、時間がかかりました。今なら同じお客さまが来られたとしても、おそらく3カ月でできる自信はあります。当時は不慣れで、お客さまに迷惑を掛けてしまいました。
1件うまくいって、2件、3件と繰り返すうちに、お客さまが増えていきましたが、あるときに「これでいいのか」と思いました。当時プロフェッショナルファームみたいな、M&Aのブティックというものはそうなんだという考えで、パーヘッド(1人あたり)の生産性なんだという、今からすると青臭い考えですが、そういう方針でやっていました。
ところがあるときふと、これでいいのかと思い始めました。大きな仕事をやるためには、もう少し組織化をしなくてはいけないのではないか。その先に1人当たりの収益性、採算を改善していけるわけで、1人で1をやるのではなくて、2人で4をやるという方向に行ったほうがいいのではないかと思い始めました。
創業のころからやってきた人たちと意見が対立して、「もう荒井さんにはついていけません」と辞めていった人と、私のほうから辞めてもらった人と、10人ぐらいの小さい会社でしたが相当がたがたしました。その間にリーマンショックが来たので、もう夜も眠れませんでした。自分から辞めていった人も、僕から辞めてもらった人も、2人とも優秀な人で、今でも彼らがいたら、違った会社になっていただろうと思いますが、お互い年を重ねてきたので、今は普通に飲んだり、会ったりしています。
ー経営者として一番しんどかったとき、どんなふうに乗り越えられましたか?
荒井: 創業からやってきたメンバーが辞めていった、あるいは辞めてもらったタイミングが一番辛かったですが、振り返ってみると自然というか、鈍くできているんだと思います(笑)そのときには、のたうち回っていましたが、時間がたつと自然と忘れますし、先に進むしかないので、「絶対に明けない夜はない、前を向いていくしかない」とそういう気持ちだったと思います。
多分、経営者の人はどこか鈍いと思います。大きな壁をよじのぼろうと思ったら、手が滑って転落して、大けがして、またのぼり直すという人もいると思うので、繊細すぎると駄目だろうなという気はします。