今回は、生きがいラボ株式会社 代表取締役の福留幸輔氏に、ノーレイティングの概要と生まれた背景についてお話を伺いました。
(聞き手:株式会社アントレプレナーファクトリー 代表 嶋内 秀之)
格付けや点数付けをしないノーレイティングとは?
嶋内:皆さんこんにちは。今日は福留さんにノーレイティングについてお話をお伺いしたいと思います。福留さん宜しくお願い致します。まずそもそもノーレイティングとは一体何なんでしょうか?
福留:人事制度で、レイティングというものがあるんです。レイティングというのは社員さんに点数を付けたりとか、あるいは格付けしたりする事をレイティングというんですが、それをNOで打ち消している通り、格付けとか点数付けをしない人事制度をノーレイティングという風に言います。
嶋内:なるほど。このノーレイティングというものが生まれてきた背景とか理由というのもあると思うんですけど、この辺をお伺いしても宜しいですか?
福留:ノーレイティング自体は、皆さんもよくご存知のような大きなグローバル企業がやり始めたんですが、その会社さんがどういう背景でやり始めたかというと、昔のようなアメとムチでモチベーションを上げて、仕事のパフォーマンスを高めてもらおうというような業務が少なくなってきたというのが一番ですね。
例えば創造性を発揮したりであるとか、新規事業とか新商品や新サービスの開発なんかは、アメとムチの動機づけを外発的動機付けと言いますけど、外発的動機付けで何か行為をしている人の視野は狭くなったり、あるいは創造性が著しく落ちたりっていう事が脳科学や心理学の研究でわかってきています。
とは言え会社の中でやってほしい仕事がどんどん創造性が求められる、新しいアイディアが求められる仕事がどんどん増えてきたという所で、制度とその業務、求められる仕事の能力というのが乖離してきたわけなんですね。
なので、やはりアメとムチで何かモチベーションを上げようとするその人事制度の在り方、根本的な所を変えていかないといけないという背景がありまして、だったら点数付けして、それが昇給やボーナスに連動するようなそういう仕組みはやめましょうと、グローバル企業が大きく舵を切って、日本の企業も導入している会社さんも増えてきたというような感じです。
嶋内:なるほど。そういう欧米企業から変わってきたという事なんですね。
福留:そうですね。特に普通の人事制度は半年とか1年間の目標設定して、期首に目標設定して期末にそれを点数付けして、それが昇給やボーナスに連動すると。
なのでこの昇給額を得たかったら、それだけの成果を上げて下さいねというでそういう仕組みで、非常に理にかなっているようではあるんですけれども、半年1年追いかけ続けられる目標がまず設定できなくなってきて、状況の変化が激しくて。
ただその制度自体は期首に立てた目標を期末に評価しないといけないんで、やってない目標をずっと評価していかないといけないとか、非常に制度疲労が激しかったわけなので、画一的な目標を設定してそれに対して点数を付けるというそういうテクニック的な人事制度のそういう面も無理が生じてきて、
実際にはグローバル企業を中心に例えば1年とか半年追いかけられ続けられる、目標設定できない、あるいは期首に目標も柔軟に修正していかなければならない、かつ例えきちんと点数を付けられたとしてもそんなにモチベーションに繋がらない、創造性に繋がらないんだったらもうそれいっその事やめてしまいましょうというような考えですね。
嶋内:なるほど、単純な目標達成型の人事制度が有効に機能する業務が少なくなってきたと。
だから過去において機能してた事についてそうじゃないというわけではなくて、そういう事で機能できる仕事が減ってきた、今求められるスピード感やするべく仕事と、そういった過去に有効に機能した制度が不具合を生じていると。
福留:特にグローバル企業は、元々は成果主義ですから、成果を図る根本的な制度に支障をきたすと、その成果主義人事制度自体が意味をなさなくなってきますので、そういった文化的な背景もあると思います。
嶋内:成果主義である点と、ノーレイティングが必ずしも仲違いはしないという理解で大丈夫なんですね。
わからなかった部分、やっぱり外種系の企業ほど成果を測定していく上で、これまでの制度では上手くいかなくなったという事で、このノーレイティングという事が広がってきていて、それがやっぱり日本の企業においても同様に求める成果とそれを測定する技術が合わなくなってきていて、注目を浴びているといういう事をよく理解できました。福留さんありがとうございました。