今回のインタビューは、グラムス株式会社のCEOである三浦大助さん(以下、敬称略)とCOOの山下良一さん(以下、敬称略)に、弊社代表・嶋内秀之がお話を伺いました。
【経歴】
(左:三浦大助CEO)
学生時代バンド活動の傍らヤマハギター講師として活動。 アパレル商社入社後、社内SEとして社内や店舗のシステム構築に携わる。 2010年ファッション商材ECを運営するグラムス株式会社設立。 自社の業務効率化システムを多数開発する中で、現バンドメンバーでもあるBlain HosfordをCTOとして招聘。2013年ZenFotomaticローンチ。 現在公私共にカメラや照明等の撮影技術を学んでいる。
(右:山下良一COO)
大学院修了後、経営コンサルティング会社にて大手消費財メーカーの事業戦略・マーケティング戦略立案や仕組み作りを支援。その後ニコンの新事業開発部門・経営企画部門にて新事業探索、M&A・アライアンス、組織横断的な仕組み・制度設計、産業機器事業部にて商品企画、マーケティングの仕組み作りを経験。2016年2月、COOとしてグラムスに入社。


嶋内:まず、会社と事業についてお伺いしてもよろしいでしょうか?
 
三浦:グラムス株式会社は、もともとはネットショップをやっていたのですが、その中で本当に困っていたことを解決するためのサービスを自分たちのためにつくりました。それを世界中で受け入れていただくことができたので、今事業として運営しています。
意外とネットショッピングの商品写真を加工するのって、本当に徹夜作業で大変だったんですね(笑)
それを苦しんでやっていたところ、たまたま同じバンドのメンバーだったホスフォードが技術者だったので無茶振りしてみた結果、ここまできてしまいました。
技術もさることながら、自分たちの実体験にもとづいている点で、お客さんに言葉要らずで共感していただいている部分が大きいですね。
 
嶋内:撮影したものの背景を自動的に抜く技術ということでしょうか?
 
三浦:細かく言うと、センタリングをしたり、ななめになっているものを認識してまっすぐにすることまでできます。そういった仕事に携わっている方からは、「これが欲しかったんだ」とよく言っていただけます。
このプロダクトによって何が起こるのというと、コストは言うまでもないですが、やはりスピードが圧倒的に違います
eコマースではやはり商品を早く上げるということが大事です。寝ていたら商品が滞留してしまうので。
そういった課題を解消できるということと、みなさんおっしゃる「こんなことをするのはネットショップの人の仕事じゃない」ということが機械でできることによって、もっとクリエイティブなことに時間を使うことができるようになるということで、喜んでいただいていますね。
 
山下:会社の特徴としては、「研究開発型の企業」と言えるかと思います。
コア技術としては、機械学習などを含めた画像認識技術、そして大量の画像データを扱っていますので、そういった非常に大きなトラフィックを処理していくことで、Web・アプリケーションを含めたソフトウェア、そしてインフラなどのデザインも極めて重要になってきます。
そういった今まで誰もやったことのないレベルのものをつくっているので、非常に高度な問題を解決することにチャレンジしたい人にとっては、非常に面白い会社じゃないかなと考えています。
同時に、こちらの製品は単純な研究開発の成果というより、三浦の実体験、そして色々なカスタマーの声を反映してきた、かなりウェットなコミュニケーションの中でできたものなので、これからも研究開発、そしてお客様の声を聞きながら育てていきたいプロダクトです。
 
嶋内:大企業との連携が連日メディアに出ていますが、どうして大企業との連携がうまくいくのか教えていただけますか?
 
三浦:昨今、「大企業とベンチャー」というのは様々に語られるところでもありますし、いろんなイベントでもテーマになっていますが、私どもは、事業を行っていく上で重要だと思っているのはやはりR&Dの部分なんですね。
当然ながらビジネスなので、そこに大きいも小さいも関係ないと。大企業の方に「おう、よしよし」と無償で面倒見ていただけるという話でもなく、その中で一会社として気をつけなきゃいけないこともあると思います。
やはりベンチャー企業で大企業からのお話をいただきますと、どうしても浮き足立ったり、何でも言うことを聞いてしまいたくなってしまうことがあります。まずは連携したという事実をつくりたいという想いが先行するので。
しかし、やはりR&Dの部分でどうしても共有できないことがあったり、今後私たちもビジネスを続けていく上で守らなきゃいけないこともあると思います。そういった意味では、しっかりと法的な部分に十分対応することが大事です。
私が気を付けたところは、例えば契約書や秘密保持契約に雛型があると思いますが、往々にしてベンチャー側の雛型を草案にして物事が進むことはないと思っていいんじゃないかなと。パワーバランスが違いますから。当然大企業は法務もしっかりしていらっしゃいますし、そっちのほうが話が早いというのもあるかと思います。
しかしその中で、さっきのように浮き足立ってしまうのではなくぐっと堪えて、拡大解釈ができないかといったことを、針の穴に糸を通すようなくらい、大企業の担当者がちょっと眉をしかめるほどに、入念にチェックすることが重要です。
自分たちが、正しいと思うこと、守らなきゃいけないこと、飲めないことは必ず優先します。そこに気を付けることで、相手にも本気度が伝わると思います。
やはり最初に齟齬がないようにきっちりとしておくことが、お互いのためにもなるかと思います。
あと、大企業の場合は担当者が変わりやすく、その後契約書に従っていくと拡大解釈ができ、コミュニケーションの問題が起きたり、何かやはり事が起こったときにはそれを私たちも守らないといけないので、そういった備えは必要だと思います。
 
嶋内:では、山下さんにお話をお伺いしたいと思います。
山下さんはグラムスの大企業側のカウンターパートナーでいらっしゃったそうですが、グラムスが大企業と連携していく際にどうしてうまくいっているのかという点について、ご意見をお聞かせください。
 
山下:私から見ても非常に三浦は粘り強く、今言ったようにかなり大企業側も面倒くさがるようなことがありますが、もちろん大企業側も面倒くさいことを言ってくるわけです。それにもかかわらず、きちんと粘り強く話を進めていったというところが非常に大きいかなと思っています。
何で粘り強く進めていったかというと、やはり「お客さんの課題を解決するため」です。
具体的なお客さんの悩みがあって、それは自社だけでは解決できないので大企業と組むことで解決していくため、粘り強くアプローチしていった。と同時に、もともとそこにお客さんがいるビジネスアライアンスのコンセプトだったので、非常に地に足のついたものだったということがあります。
 
嶋内:2社の利益のためというとパイの取り合いになりますが、お客様のためにということで一貫することで説得力を持った交渉ができているということですね。
 
山下:そうですね。説得力とともに、粘り強さ。何とか形にするぞというところですね。
 
嶋内:三浦さんといつもお話しさせていただいていますと、すごく物腰が丁寧でいらっしゃるなと思います。目上の方にはっきりとしたことを話していく上で、普段のコミュニケーションで大事にされていることがありましたら教えてください。
 
三浦:一貫して変わらないのは、年上だろうが年下だろうがとにかくちゃんと社会人としてお会いして、社会に貢献して、給料を得て、税金を納めていらっしゃる方なので、まずはリスペクトから入るといったところはあるのかなと思っています。
基本的に浮足立つことはしないように心がけていますけれども、逆に言うとへりくだりもしないということは重要だと思っています。
ビジネスを円滑に回す上で、そういうロジックみたいなところを大企業の担当者から勉強させていただくことも多いのと、結局最後には、相手の方も一緒になって、結構熱量を持ってやっていただけています。
大企業と始めたプロダクトでお客さんとの成約がいきなり決まったときに、私よりも本当に一回りも二回りも上の方たちと一緒にみんなでハイタッチしたり(笑)
クラブ活動で「勝った!」と盛り上がるようなことをできたというのは1つ大きいのかなと思います。それはやはり「リスペクトがある」というところが影響しているのかなと思います。
 
嶋内:しっかりリスペクトされた上で、ビジネスしていく中では上も下もないと。なおかつ、一緒のチームとなってチームをつくっていくということですね。
では、山下さんから、三浦さんがうまく大企業と連携されている点で、もう少し何かありましたら教えていだたけますか?
 
山下:私も大企業で新事業を担当していたことがあるんですけれども、そういった面から見ても、大企業側のリスクやコストを落とす工夫が結果的にできていたのかなと思っています。
具体的には、大企業側はほとんど人を動かすこともなく、「まずはこのアイデアがうまくいくかどうか試してみましょう」というスモールスタートでやってみたということがあります。
もちろんそういうスモールスタートの段階であれば、大企業側も途中でうまくいかなければ降りることもできますし、それはグラムス側にもメリットがあります。
「スモールでやって、うまくいったらもう一歩前に進めましょう」というのは非常にうまい進め方だったのかなと私自身は感じております。
 
三浦:そういう意味では、やはり大企業も色んなことを進めながらの話だと思いますし、忙しいことに関しては変わりないので、いつもギブファーストと言いますか「相手の信頼を勝ち得るためには、自分が汗をかかなきゃだめだろう」というのは、みんなが思っていることです。
そこを一生懸命、演技じゃなく見せていくということは、相手にちゃんと信頼してもらうための第一歩かなと思っています。
そういったスモールスタートで、相手にも配慮をした形で進めるといったところでご理解をいただけているのではないかと思います。 
戦略的に嫌らしくするというのではなくて、やはりそこに対して自分たちがいかに一生懸命取り組んでいるのかを見せるということです。
やりたいからやるというところを辺に隠さず、表に出すというところかなとは思いますね。
 

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