神谷氏が語る「CTOの魅力」

リスクを予算に反映するジレンマ


システム開発は基本的に今すぐ使えるものをつくるのではなく、1年後2年後に使うものを作っているので、その時に赤字であれば真っ先に切るのは明日必要なものではなく、来年再来年のものだという話になってきます。
そこにベストな人材をアサインしたいという気持ちと、かといって切ってしまうような状況は絶対に避けたいと思っています。自分が感じるリスクの大きさを予算にどう反映するか、執行においてどういう条件をつけるのかは簡単に説明がつかないことがあります。

「リストラの影響を小さく」は単なるギミック


リストラの影響を小さくするというのは、ギミックにしかならないと思っています。
本当にせざるを得ないのは”膿み出し”なので、その影響を小さくするには、色々工夫してリストラのように見せないということはあるんですけれども、所詮は事業の失敗でしかないので、そのタイミングでどこに力を入れていくのかに絞りをつけるというのはすごく大事だと思います。

CTOになることは、将来のキャリアの可能性を広げること


システム開発というのはどんどん高度になり、楽になっている部分と理解しなければならない部分があまりにも多すぎて、難しくなっている側面もあります。
昔のコンピューターはメモリとCPUしかなかったのに対して、今ではそれにネットワークが加わり、他の人に依存している部分があまりにも多くて、技術部門は経営に関われるほど暇がなくなってきています。そうなってくると、高いレイヤーで商売をするチャンスがなくなってしまうんです。
最近の会社では、どうしても経営層の人たちが圧倒的にリスクを取っているから、圧倒的な報酬を得ているという部分があるんですけれども、技術者はリスクを取ろうとはあまりならないんですよね。永遠に「機械」です。ですが、機械の付属品のようになってしまうようなポジショニングでしかないというのも少し違うなと思っていて、もっと可能性を広げたいと思っています。
自分で起業しようとなった時には、そのレイヤーにいるタイミングになって初めてノウハウやネットワークができてくるものです。CTOをやるというのは、自分の将来のキャリアの可能性を横に広げることのような気はします。

「むかつくけど信頼できる」CTOに


CTOはある意味「マジシャン」みたいな立場になって、エンジニアリングにリソースをかけてしまうことは多々あると思います。とは言うものの、社会はそんなに簡単には変えられないので。
どうしなければいけないかというと、やっぱりCTOとCEOは本質的に対立構造にあるべきで、対立しても仲違いをしない関係を作るためには何をしなければいけないかを考えて欲しいです。
経営メンバーなので、CEOは「よりコストをかけてこういうことがしたい」、CTOは「よりコストを下げてこれだけのことにしたい」という綱引きの状態がバランスを取ると思うんです。
そういう交渉力のあるエンジニアがこの時代にどれだけいるかというと、あまり多くはないですよね。そういう意味では、CTOになりたい人たちに言えることは、自分がより楽するための交渉を日々して欲しいです。どうしても、これが事業だ、サービスはこうだという風に、”仕事依頼先”になってしまうと、CTOとしての役割ではなくなると思います。
経営とは何かという問いに対して、リソースの配分だと考えたら、CTOの役割としてそのリソースの配分を勝ち取り、もしくは守り抜き、そのリソースをもって「お前らがんばれよ」と言える人になって欲しいです。
現場の意見が相応しくない可能性は十分にあるので、査定できる一番高いレイヤーにいるのに全くシステムに関する知識がないというのはダメだと思うし、自分がエンジニアのトップなのか経営チームの情報システム技術担当なのかは全然違うものだし、「最終的にどっちかを選ぶとなったらどっちなのか」という問いを、みんなには事前にして欲しいです。
「うちのCTOはすごいんだよ」というより、「本当むかつくんだよね」というくらいのぶつかり合いがあって、「むかつくけど信頼できて、任せるしかない」と言われるくらいのCTOになって欲しいです。

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