個人で事業を行っている個人事業主のみなさまは開業届を提出しているでしょうか?
中には開業届を出さずに事業を行われている方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、「開業届って何のために必要なの?」「提出しなかったらどうなるの?」といった疑問に答えたいと思います。
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開業届とは?
開業届は正式名称を「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、新たに事業を始めたとき、事業用の事務所を新設・増設・移転・廃止したとき、または事業を廃止したときに提出する届出書です。
なお、たとえ届出を行わなかったとしても罰則の規定は設けられておりません。
①手続対象者
新たに 事業所得、不動産所得または山林所得を生ずべき事業の開始等をした方。
②提出時期
事業の開始等の事実があった日から1ヶ月以内に提出。
なお、提出期限が土日祝日に当たる場合は、これらの日の翌日が期限となります。
③提出方法
届出書を作成のうえ、納税地を所轄する税務署長に持参又は送付により提出。
(参考URL: https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm)
余談になりますが、開業の届出は税務署のみではなく、事業税に関係するものとして、自治体(都道府県)にも開業の申告書を提出することになります。
ただし、申告しなかった場合の罰則は規定されておらず、また事業税には年間290万円の事業主控除があるため、所得が290万円を超えない限り支払いの必要がありません。そのため、この申告書を提出せずに事業開始する方も多いようです。
ちなみに申告書を提出しない場合でも、確定申告を行うと税務署から自治体(都道府県)に通知が行くようになっています。
「これで事業税分は払わずに済みそうだ」と考えられた方もいるかと思いますが、残念ながらそういうことにはなりません。
開業届を出す必要性~そのメリット・デメリットとは?
開業届を出すか出さないかで一番大きな影響が出るのは、青色申告を行うことができるのかどうかという点です。
青色申告とは、一定水準の記帳(年末に貸借対照表と損益計算書を作成することができるような正規の簿記によることが原則ですが、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳のような帳簿を備え付けて簡易な記帳をするだけでもよい)をし、その記帳に基づいて正しい申告をする人については、所得金額の計算などについて以下のような有利な取扱いが受けられる制度です。
ただし、青色申告をすることができる人は、 不動産所得、事業所得、山林所得のある人です。
・青色申告特別控除
所得金額から最高65万円を控除することを認めるというものです。
・青色事業専従者給与
生計を一にしている配偶者やその他の親族のうち、年齢が15歳以上で、その青色申告者の事業に専ら従事している人に支払った給与は、必要経費に算入することができるというものです。
なお、専従者とは、生計を一にしている配偶者その他の親族が納税者の経営する事業に従事する場合のその従事者を言います。
・貸倒引当金
その事業の遂行上生じた売掛金、貸付金などの貸金の貸倒れ(回収不能)による損失の見込額として、年末における貸金の帳簿価額の合計額の5.5%以下の金額を貸倒引当金勘定として費用計上したときは、その金額を必要経費として認めるというものです。
・純損失の繰越しと繰戻し
事業所得などに損失(赤字)の金額がある場合で、他の所得と損益を通算してもなお、その損失額を控除しきれない部分の金額(純損失の金額)が生じたときには、その純損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の所得金額から控除できるというものです。
青色申告で以上のようなメリットを享受することができます。
ただし、青色申告を行う場合は、開業届を提出していることが前提となります。
仮に開業届を提出していなかった場合は、自動的に白色申告となり、上記の特典は享受することができないことにご注意ください。
(参考URL: https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2070.htm)
書く際、提出する際の注意点
出典:http://www.chefdentreprise.com
①記載例
下記ダウンロード先から用紙をダウンロードして頂き、「書き方」についてもご確認下さい。
(用紙DL先: https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/pdf/04.pdf)
②提出時の注意点
ⅰ)開業届の控えをもらう!
個人事業の場合は開業届の控えは原則渡されません。念のため、控え用にコピーを1枚用意しておき、控えの方にも受付印をもらうようにしておきましょう。
この控えは銀行口座を開設する際などに、開業していることを証明するための資料として利用することができます。
ⅱ)許認可の申請を忘れずに!
独立開業する事業の内容によっては、許認可が必要な場合があります。例えば代表的なもので言うと、飲食店を開業する場合は、食品衛生法に基づいて都道府県知事の許可を受けなければなりません。
許可要件としては、①食品衛生責任者の資格を持った人を店に1人以上置くこと②都道府県ごとに定められた基準に合致した施設で営業をすることが要件となります。
開業届を提出しただけでは、事業を行えない場合もありますので、開業を行う事業に許認可が必要なのかを調べておく必要があります。
ご自身が行おうとする事業に許認可が必要かどうかは「許認可事業」で検索をかけるとすぐに調べることが可能ですので、事前に調べておくことをオススメします。
ⅲ)青色申告承認申請書の提出を忘れずに!
青色申告制度の特典を受けるために、開業届に合わせて青色申告承認申請書も忘れずに提出しましょう。
申請書の提出は業務を開始した日から2ヵ月以内であれば、開業を行った事業年度から青色申告制度の適用を受けることが可能です。
開業届まとめ
これから新規に事業を行っていこうと考えられている方、コツコツと地道にやってきてそろそろ事業として本腰を入れていこうと考えられている方等、色々な方がおられると思います。
新規事業の立ち上げは、不安ももちろんありますが、それ以上にやりがいがあるものと思います。
その大事な初めの一歩の段階でつまずかないように、みなさんのお役に立てれば幸いです。