筆者が未経験で居酒屋を起業し、大失敗した事例は、過去記事に掲載させてもらいました。
その後、居酒屋経営を失敗したら借金漬けになるの?というお問い合わせをいただくことがあったため、前回の記事の続編として、その後の一部始終を記載させていただきます。
「失敗」の定義をどう定義するかによりますが、ここでは「赤字で資金が底をつき閉店に至ったこと」と定義することにします。
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借金漬けにならないための費用の払い方
出典:constructionlawsignal.wp.lexblogs.com
せっかく開業したお店が赤字となり閉店した後も、様々な費用を閉店後に支払っていかなければなりません。
例えば、仕入代金の支払いや店舗の原状回復費用等の支払い、水道光熱費の支払い、従業員への給料、リース会社への支払い、フランチャイズの場合だったらロイヤリティ、廃棄物の処分費用などです。
このうち、従業員への給与、店舗賃貸借契約の解除に伴う原状回復費用や保証金の償却、リース会社への解約時の残債務清算などは、優先して支払うべき費用です。
◯従業員への給与
従業員への給与は、法令上も優先して支払う旨が定められていますし、支払いがなされていない場合、従業員に労働基準監督署にかけこまれるなどして、不払いの際の法的なリスクが高い費用でもあります。
また、閉店するとしても、オーナー1人で店の片づけやすべての対応をするのも現実的には厳しく、ボランティアでかつての従業員に手伝ってもらったり、売却できない在庫や備品等について従業員に分配してしまうほうが廃棄費用も削減できるなどのメリットがあります。そのためにも、心理的にはもっとも辛いところですが、経営者として従業員に対して誠実に閉店の事実を伝え、閉店までの給与はきちんと支払うようにしましょう。
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◯厨房機器等に関するリース会社への解約時の残債務清算
これを支払わないと、リース物件の処分ができないので店舗の現状回復等の閉店作業に支障をきたします。
また、リース契約の際には、おそらくオーナー個人とあわせて親族等の連帯保証を差入れていたり、保証会社の保証がついていることが大多数であるので、従業員の給与と同じように優先して支払う費用といえます。
◯ 店舗賃貸借契約の解除に伴う原状回復費用や保証金の償却
原状回復費用は、店舗の賃貸人の指定業者かそうでないかにより変わってきますが、だいたい坪8万円~くらいの費用は必要とお考えください。
保証金の償却とは、店舗を借りる際に、概ね月額賃料の10か月分以上の保証金を納めさせられていると思いますが、居酒屋等の飲食店を閉店して退去する場合に、先に預け入れた保証金から一定額を強制的に控除するという商慣習です。
理論上は、償却後の保証金からさらに原状回復費用を引かれた後、残額があれば、手元にそのお金は戻ることになります。
しかしながら、これまで閉店した飲食店を見ていると、事前に差入れた保証金だけでは足らず、現状回復のために多少の追加費用を支払っていることがほとんどです。
そのため、店舗賃貸借契約についても、実務上は、閉店を決めたら速やかに解除通知をして、費用の新たな発生を止めつつ、原状回復の工事を開始できるように償却後の保証金で足らない原状回復費用を支払うことが重要です。
また、店舗賃貸借契約についても、リース契約と同様に保証会社が保証をした上での契約だったり、連帯保証人をつけさせられているので、借主側で支払い時期や金額を調整しづらい費用といえます。
その一方で、フランチャイズであればロイヤリティ費用、業者への仕入れ代金、水道光熱費は個別に支払時期、支払方法の調整が利きやすい費用です。
閉店すると、色々な取引先や業者から取り立てが来ますし、閉店準備で精神的肉体的に参っている時期であるとは思います。
しかし、先に述べたとおり優先的に払うべき費用を支払った後は、結局は閉店してしまうわけで、売上もなくなってしまいます。
かっこつけようにも無い袖は振れません。なので、取引先や業者への支払の時期や金額は、腹をくくって個別に交渉していきましょう。
例えば、「分割払いにしてくれないと現実的に仕入代金を支払えない」とお願いするとか、業者の締日ごとに優先順位を決めて、締日が先の業者は後回しにしておくとかです。
水道光熱費も、多少遅延してもすぐに止められるわけではないので、とにかく閉店作業や他の債務の整理を優先し、一連の閉店作業が落ち着いた後に支払うようにしましょう。