VCについて調査する
日本のVC(ベンチャーキャピタル)についてどのくらい知っていますか?
VCの意味やビジネスモデルは理解していても、具体的なVCとなるとあまり知らないという人も多いと思います。
有名どころをいくつか知っている、といったところでしょうか。
実は日本には200以上のVCが存在します。
この記事では、まず前半で日本のVCの全体像を紹介します。
後半は主なVCについての紹介です。
*VCについての基本的な仕組みについてはこちらの記事を参考にしてください。
VCの種類は? 全体像を理解する
VC(CVC)の目的を理解する
VCの種類の分け方はいろいろあります。
一番ありがちなのは設立母体による分け方ですね。金融機関系や政府系、通信系などVCを設立したのが誰なのかに着目します。
設立(運営)者に着目することで、そのVCが何を目的としているのかがわかってきます。
いろいろな目的があるとは思いますが、大きく分けるとVCの(ビジネス的な)目的は二種類。
② 本業とのシナジー効果を得る(オープンイノベーション)
すでに理解できていると思いますが、②は本業がある場合に限ります。つまり設立母体が、投資の専門企業ではなく事業会社の場合です。
これがいわゆるCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)と言われるものですね。
CVCはその目的から、本業とシナジーを生む可能性のある企業に投資する傾向があります。
CVCについては別の記事でまとめてあるので、詳しくはそちらを御覧ください。
VCの設立母体について知る
VCの設立母体としては以下のようなものがあります。
- 金融機関
- 政府
- 自治体
- 大学
- (独立)
金融機関の主業務の一つは「投資」です。当然ベンチャー企業投資にも参入します。
また政府や自治体もVCを設立しています。
これは国や地域の経済を活性化するためですね。
さらに大学によるVCも増えてきています。
大学の持つ技術を社会に出していく一環です。
これらとは別に独立系のVCというのも存在します。
設立母体を持たず、独自に資金を集めファンドをつくってベンチャー投資を生業とする企業です。
種類別VCまとめ
ではそれぞれの種類別に主なVCを見ていきましょう。
金融機関系
みずほキャピタル
公式:http://www.mizuho-vc.co.jp/
みずほキャピタルは、みずほフィナンシャルグループに属するVCで、上場した投資先企業も800社以上になります。
1983年から始まりました。
当然のことながら資金面で強いサポート力を発揮します。
それだけではなく、コンサルティングなど多方面での支援が受けられることも特徴です。
大会社などへのネットワークも持っているため、上場を狙うベンチャー企業は検討必須かもしれません。
- マネーフォワード
- リクルートホールディングス
- 鳥貴族
- ファーストロジック
三菱UFJキャピタル
三菱UFJキャピタルは、MFUJグループ所属のVCです。こちらも800社以上の上場企業をサポート実績があります。
2005年に三菱UFJキャピタルとして統合されました。
みずほキャピタルと同じく、資金面の強さと多方面での支援を兼ね備えたVCです。
また、台湾との架け橋になる「日台ファンド」や東北を中心として6次産業化をサポートする「東北6次産業化サポートファンド」なども特徴的です。
- レノバ
- ユーザベース
- CYBERDYNE
三井住友海上キャピタル
三井住友海上キャピタルは、三井住友海上を母体とするVCです。高い資金力と支援力を持っています。
1990年の設立です。
「独自性・革新性・先見性」を投資方針として掲げ、幅広いステージの企業に対して投資を行っています。
ここ数年で急激に投資額を増やしているVCの一つです。
- Aiming
- WHILL
- グッドパッチ
地域系
北海道ベンチャーキャピタル
公式:http://www.hokkaido-vc.com/
北海道ベンチャーキャピタルは、北海道で事業を行う企業に対して投資を行い、北海道の活性化を目指す地域特化のVCです。
1999年から始まりました。
事業の種類を問わない3つのファンドと、農林漁業を対象とした「道銀アグリビジネス投資事業有限責任組合」というファンドを運営しています。
- ジーンテクノサイエンス
- ラクーン
新潟ベンチャーキャピタル
新潟ベンチャーキャピタルは、新潟の企業を応援することで新潟の地域振興・発展を目指して生まれたVCです。
2010年にスタートしました。
「日本のシリコンバレー“新潟” の創出」を理念として掲げています。
新潟県に本店を構える、もしくは新潟の経済に影響を与える企業が主な出資先です。
- ピースオブケイク
- ママスクエア
政府・大学系
中小企業投資育成株式会社
中小企業投資育成株式会社は、中小企業投資育成株式会社法に基づいて政府が設立したVCです。
設立は1963年、日本のVCの草分け的存在といえます。
その長い歴史の中で、2000社以上に投資をしてきました。
東京・大阪・名古屋の3社で全国をカバーしています。
企業の自主性を尊重しているので、経営の自由度が下がりにくいVCです。
一方で中小企業診断士や税理士、公認会計士などの人材も抱えているので、的確なアドバイスを受けることもできるでしょう。
DBJキャピタル
DBJキャピタルは、日本政策投資銀行を母体とする政府系VCです。
1990年に設立されました。
特にグローバル系の企業に焦点を当てながら、幅広く投資を行っています。
研究者らとの連携体制が整っており、技術系ベンチャーにとって良い選択肢となるでしょう。
- スタディプラス
- モジュラス
- ノルミー
東京大学エッジキャピタル UTEC
東京大学エッジキャピタルは、東京大学を母体とする大学系VCです。
2004年の設立から、累計500億円以上を投資してきています。
投資先としては東京大学と関連する技術系ベンチャーとしながら、ある程度幅広く投資しているようです。
技術系ベンチャーの創業からイグジットまでを統合的に支える体制が整っています。
他大学や研究機関とのネットワークも魅力です。
- アイデミー
- GLM
- クオンタムバイオシステムズ
慶應イノベーションイニシアティブ
公式:https://www.keio-innovation.co.jp/
慶應イノベーションイニシアティブは、慶應義塾大学を母体とする大学系VCです。
設立は2016年で、新しいVCといえます。
投資対象は「大学の成果を活用して革新的な新事業を創造するスタートアップ」です。
- シンスペクティブ
- インスタリム
- LUXONUS
独立系
グロービス・キャピタル・パートナーズ
公式:https://www.globiscapital.co.jp/ja/
グロービス・キャピタル・パートナーズは、独立系VCの中でも最大規模のVCとなります。
設立は2006年です。
グローバルなネットワークや、これまでの実績を活かしたアドバイスを強みとしています。
投資対象としてはIT系が多いです。
- ワークスアプリケーションズ
- nanapi
- 面白法人カヤック
JAFCO(ジャフコ)
JAFCOは、野村グループのVCとして開始し、2017年に独立しました。
設立は1973年、現存する民間のVCとしては最も歴史のあるVCです。
上場した投資先会社数は1000を超えています。
長い歴史の中で築いてきたノウハウとグローバルなネットワークに支えられた多角的な支援が魅力です。
アジアやアメリカで活躍する会社にも多くの投資をしています。
- CAMPFIRE
- チャットワーク
- asta*muse
日本アジア投資(JAIC)
日本アジア投資(JAIC)は、経済同友会を母体として設立されたVCです。
1981年に設立されました。
アジアへの投資拡大を目的としており、アジア圏をフィールドとして考えている企業は積極的に検討したいVCです。
特に中華圏に対しては、投資規模の半分を占めるファンドを運営しています。
- アルファフーズ
- M&Aキャピタルパートナーズ
- フェニックスバイオ
VCについて学んでみる
この記事で紹介したVC以外にも多くのVCが存在します。
VCは現代のビジネスにおいて非常に重要な存在です。
多くのスタートアップはVCと関係しながら成長していきます。
VCというと全部同じにも見えますが、よくよく調べてみると設立母体の目的や、投資先の傾向、投資後のコミュニケーションなど、いろいろな相違点が出てきます。
特定の観点を持ってVCを調査してまとめてみても面白いかもしれません。