先週の関西ベンチャー界隈は、チャットワーク(兵庫県神戸市)の上場承認に湧きました。今年に入って47社目、関西拠点の企業としても7/5に上場承認を受けたステムリム(大阪府茨木市)以来の上場となります。

 

起業tv ではIPO(新規株式公開)を果たした企業の経営者に対してインタビューを行なっていますが、企業のエグジットはIPOだけではありません。M&A(合併・買収)で株式を売却し、創業者が利益を得ることを目指すことも1つの戦略です。

 

世の中にはシリアルアントレプレナーと呼ばれる方もいますし、経営者がその会社、その事業を通じて「何を、どこまで成し遂げたいか」という目的意識の差で戦略が変わるのは当然だと思います。

増加傾向にある日本企業のM&A

実際にM&Aはどのぐらい行われているのか知っているでしょうか?M&A仲介サービス大手のストライク(M&A online編集部)が上場企業の適時開示※を基に集計したデータによると、2019年上期(1~6月期)のM&Aは394件で、前年同期を67件上回りました。上期としては2年ぶりに増加に転じ、2009年以来10年ぶりの高水準に達しています。

M&A online編集部の調査結果より自主作成
※適時開示は上場企業に義務付けられた「重要な会社情報の開示」のこと。ストライクの調査では、経営権の異動を伴うM&A案件(グループ内再編を除く)が対象

 

上期のM&A件数は、2009年に約440件で、リーマン・ショックに端を発した世界的な景気後退のあおりで2010年は100件以上落ち込みました。2012年に370件まで持ち直しましたが、以降は300件台前半でおおむね推移していたところ、ここ数年、日本企業によるM&Aの勢いが一段と強まっていることがグラフからわかります。

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2019年上期M&Aの金額トップはソフトバンク

この表は2019年上期に実施されたM&Aの取引金額が大きかった上位20件をまとめたものです。上期の取引金額トップはポータルサイト国内最大手のヤフーの子会社化を発表したソフトバンクです。この買収はITと金融を融合したフィンテックなど非通信分野を強化するのが狙いとみられています。

M&A online編集部の調査結果より引用

これに次ぐのが日本ペイントホールディングスによる豪州の塗料大手デュラックスグループの子会社化です。日本ペイントはこれまで欧米や中国の有力塗料メーカーを相次いで買収し、グローバル展開を進めてきました。2017年には約700億円で米ダン・エドワーズを傘下に収めましたが、今回の豪社買収は同社として過去最大となります。

 

日本電産によるオムロンオートモーティブエレクトロニクス(OAE、愛知県小牧市)の買収は国内企業同士として1年ぶりの1000億円級の大型M&Aとなりました。OAEは1983年にオムロン車載電装事業部として発足し、2010年に分社化した会社です。日本電産はCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)に代表される自動車業界の技術革新やビジネスモデルの変革に対応するため、買収したと考えられます。

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IPOできる企業はわずか一握り

一方、日本のIPOはどうでしょうか?グラフは2009年から2018年までのIPO件数の推移です。2009年から2015年までは増加傾向にありますが、2015年以降はほぼ横ばいです。今年も上期のIPOは38社なので、おそらく前年と同水準となるでしょう。

日本取引所グループの公開データより自主作成

 

また、IPOに適した事業とそうでない事業(スケールするかどうか)もありますし、その時々のトレンド(最近ならフィンテックとかAI)や景気も影響します。
そういった様々な要因が絡み合った結果なので一概には言えませんが、日本の上場企業が約4000社、年間100社も上場していない状況を見ると、IPOが本当に狭き門だということはわかります。

経営者が知っておくべき「M&A」

M&Aが活発になっていることは、先ほどのグラフや表から感じ取っていただけたかと思います。その背景には、少子・高齢化に伴う国内市場の縮小やサービス業を中心とする人手不足があります。M&Aは買い手にとって、シェア拡大や労働力の確保、海外事業展開を図るための手段です。自社にないリソース(ノウハウや技術力を含む)を獲得することで、組織としての基盤を強化する狙いがあります。金額は大きくないものの、技術力のあるスタートアップを大企業が買収する案件も、最近聞くようになりました。

 

こういった状況を考えると、企業の経営者はM&Aの売り手となる可能性があるので、M&Aに関する知識を知っておく必要があります。多くの経営者、特にスタートアップ経営者は会社売却の経験はないと思います。ある程度の知識がないと買い手と売り手同士の交渉はうまくいかないでしょう。「企業価値の算定方法」「M&Aのスキーム(株式譲渡、株式交換、第三者割当増資等)」「会社売却の準備」等、学ぶべきテーマはたくさんあります。

 

もちろん信頼できる仲介会社に依頼することも大事なことではありますが、M&Aが活発になっている今こそ、ご自身でM&Aを学び、IPOと比較して「自社はどの方向性を目指すべきか」を考えてみてはいかがでしょうか。

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