お金の価値は時間で変わる?
お金の時間的価値の考え方は株価や資産の評価、合併先の企業価値の評価、取引先との決済方法を決める際などに非常に重要になってきますので、しっかり理解しておく必要があると言えます。
また日常生活のおいても今預金すべきなのか、不動産などに投資しお金以外の資産に変えるべきなのかなどの判断ができるようになるので知っておくべき考え方です。
特に『お金の価値は、そのお金をいつ受け取るかで大きく変わる』という考え方が重要です。
今日貰える1円と明日貰える1円の価値は同じでしょうか?答えは同じではありません。ファイナンスでは『今日貰える1円は明日貰える1円より価値がある』と考えます。
それではなぜ同じではないのかを1)複利の考え方、2)将来価値、3)現在価値、4)リスク認識と割引率の考え方を用いて簡単にご説明しますので、それを踏まえながらお金の時間的価値の考え方もマスターしましょう。
複利の考え方
お金の時間的価値には将来価値と、現在価値という考え方があり、この二つに大きく関わってくるのが複利の考え方です。具体的な例で複利の考え方をお話しすると、今手元に元本100万円があり、年率10%であるとします。この100万円を1年間運用すると
100万円×(1+10%)=100万円×1+100万円×10%=110万円 ・・・1年目の運用 になります。
(1+10%)の1は元本を表し10%は利息分を表します。よって1年間の運用で10万円の利息を得たことになります。複利の場合この利息は翌年に繰り越します。ですので元本100万円の2年目、3年目の運用は
(100万円+10万円)×(1+10%)=100万円×(1+10%)+10万円×(1+10%)=121万円 ・・・2年目の運用
(100万円+21万円)×(1+10%)=100万円×(1+10%)+21万円×(1+10%)=133万円 ・・・3年目の運用 となります。
このように複利の場合では利息に対して利息がつく、つまり『利息が利息を生む』という特徴があります。
銀行に預金する際にこの金利を見ることで何年後に預金額がいくらになるかなどの計算ができるようになります。ただし金利が高いから預金すべきだ!とは限りません。
その理由は後ほど、リスク認識と割引率で説明します。
将来価値とは
次に将来価値(フューチャーバリュー<Future Value>)についてお話しします。
将来価値とは今のお金を複利で運用した場合にどのくらいの価値になるか、つまり現在の価格の、将来における価値ということです。上記の複利の考え方で出した例のように、今の100万円を金利10%で3年間運用した場合の将来価値は
100万×(1+10%)=110万 ・・・1年後の将来価値
110万×(1+10%)=121万 ・・・2年後の将来価値
121万×(1+10%)=133万 ・・・3年後の将来価値
となり、これらを一つの式で表すと
100万×(1+10%)×(1+10%)×(1+10%)=100万×(1+10%)=133万
となります。このように将来価値は 将来価値=FV 現在価値=PV r=利率 n=年数とした時
FV=PV(1+ r ) n乗 という計算式で求めることができます。
現在価値とは
次に現在価値(プレゼントバリュー<Present Valrue>)についてお話しします。今回も先ほどの例を元に考えてみると今の100万円を年率10%で運用すると110万円になります。
これは言い換えると、今の100万は翌年の100万より10万円価値が大きいことになります。この差が、お題にもある『お金の時間的価値』です。将来のお金が現在のお金のいくらに値するのかを計算するには、将来のお金を利率で割引くことによって求めることが出来ます。
再び先ほどの例を使って説明しますと、今の100万円を年率10%で運用するとした際の1年後の将来価値は(1+10%)を掛けて110万円ですので、1年後の110万円の現在価値を求めるにはこの計算の逆をすればいいわけです。よって1年後の110万円の現在価値は
110万円÷(1+10%)=100万円
となるわけです。
将来価値から現在価値を求める際に使う利率は割引率と言います。
よって現在価値は 将来価値=FV 現在価値=PV r=割引率 n=年数 とした時
PV=FV÷(1+ r )n乗 という計算式で求めることができます。
リスク認識と割引率の関係
『確実に今100万円貰える権利か、確実に1年後110万円貰える権利のどちらかをあげる』と言われた場合どちらを選びますか?近年の低金利を考えると年率10%の話はとてもおいしい話だと感じて110万を選ぶ方も多くいると思います。
では次に『確実に今100万円貰える権利か、不確実だが1年後に110万円貰える権利のどちらかをあげる』と言われた場合はどうでしょうか?この場合1年後の110万は不確実という点からリスキーだと感じて、今100万円貰う方が多くなると思います。
ここから分かるように同じ額でもリスク認識によりお金の現在価値は変わるということです。言い換えるとリスク認識により割引率も変わると言えます。さらに詳しく説明するとリスクが高くなるにつれて割引率は高くなり現在価値は下がり、逆にリスクが低くなるにつれて割引率は低くなり現在価値は高くなります。
ここでまた預金の話をすると金利が高いからいい銀行だ!とは限りません。金利が高いということは銀行がなんらかの問題を抱えているなどしてリスクが高い可能性もあります。逆に国債などは安全性が高くリスクが低いため金利は低い傾向にあります。預金する場合は金利だけ見るのではなくリスクも考えてみるといいでしょう。
このように利率やリスクの関係から『明日のお金より、今あるお金のほうが価値がある』ということが言えるのです。お金の時間的価値の考え方については理解していただけたでしょうか? 預金する際などには是非この考え方を使って判断してみてください。