海外送金に違法地下銀行が使われていた!?
海外送金を行う場合、手数料が高いと感じる方々もいらっしゃると思います。しかし表示されている手数料以外にも、利用者はお金を銀行へ払っていることをご存じでしょうか?
銀行のホームページなどを見ると外貨送金するにあたり、外貨買い値(TTB)、外貨売り値(TTS)と2つの為替レートが表示されています。米ドルの場合、両者には2円の差が付くことが一般的です。実はこの2円が実質の手数料にあたります。
取引量の少ないマイナー通貨になると、このレート差はさらに大きくなります。このレート差は馬鹿になりません。このレート差を小さくすれば、利用者も多くなると考えた非公式の地下銀行が誕生します。歴史的に見ても、非合法ながら、地下銀行は多額のお金を大陸間移動させています。
では、なぜ正規の銀行は実質手数料を安くしないのでしょうか?正規の金融機関でこの問題を解決しようとした人物がいます。それがTransfer Wise社の共同創業者Taavet Hinrikus氏です。
出典:transferwise.com
海外送金手数料を逃れる工夫が起業のきっかけ
Taavet Hinrikus氏は、エストニアのSKYPE社で働いていました。給料はユーロ建てでしたが、Hinrikus氏のベースは通貨にポンドが使われているロンドンでした。
また、後にTransfer Wise社をHinrikus氏と共に立ち上げるKristo Käärmann氏は、ロンドンで働いていましたがユーロ圏のエストニアに自宅があり、住宅ローンをユーロ建てで支払っていました。
両氏は、外貨送金する際の手数料が非常に高い点に不満を持っていました。そこで、 ユーロを持っているHinrikus氏が、Käärmann氏の口座にユーロを入金し、ポンドを持っているKäärmann氏がHinrikus氏の口座にポンドを入金することにしました。
こうすることにより、実質手数料にあたる外貨レート差を支払わずにすみます。Hinrikus氏は、このスキームはビジネスになると考え、2011年にKäärmann氏と共にTransfer Wise社を起業します。
出典:identitydesigned.com
海外送金為替レートは常に1つ
Transfer Wise社の考えた仕組みはシンプルです。2つの通貨を海外送金したい人々をつなぎ合わすことです。例えば日本円を持ちアメリカへ米ドルを送金したいAさんと、米ドルを持ち、日本へ円を送りたいBさんを結びつけます。
AさんはTransfer Wise社の円口座に日本円を送金し、Bさんは米ドル口座に米ドルを送金します。Transfer Wise社はAさんの指定する口座に米ドルを送金し、Bさんの口座に日本円を送金します。こうすることで、国内送金手数料のみで海外送金が完了します。
為替レートも1つにすることで、余分な手数料を払う必要がありません。この為替レートには、既存の銀行にも存在する中値(TTM)を使います。このTTM、テレビでよく聞く「今日の為替は○○円です」という為替情報にも使われています。
出典:transferwise.com
海外送金利用者から大きな支持、そして大物からの出資
Transfer Wise社の手数料は大手銀行の2-3割程度です(為替レート差含む)。海外送金手数料の高さに大きな不満を持っていた利用者に支持を受け、Transfer Wise社の取引量は瞬く間に拡大していきます。
日本でも関東財務局から認可を受けるなど信頼度も上昇したTransfer Wise社は、ベンチャーキャピタルからの資金調達も順調に推移しています。Andreessen Horowitzなどの大手ベンチャーキャピタルに交じって、ヴァージングループから出資を受けている点が目立ちます。
出典:arabianbusiness.com
自らもベンチャーでスタートしたヴァージングループ創業者・リチャード・ブロンソン氏は、自分の眼鏡に適うチャレンジングなスタートアップに投資することでも有名です。ブロンソン氏から投資を受けるということは、一種のステータスにもなり、将来性を約束されたスタートアップという専門家もいます。
歴史的に世界中の多くの人々が不満に思っていた海外送金手数料を、画期的に安くしたTaavet Hinrikus氏は、世界中の人々から支持されるはずです。
利用者を順調に伸ばしているTransfer Wise社の将来は非常に明るいものでしょう。