起業は若者だけのものではない

スタートアップというと、どうしても”若者がチャレンジするもの”というイメージがあります。
実際、40代、50代がスタートアップを試みるというのも、あまり多くはないでしょう。近年では、アメリカのシリコンバレーで起業する日本人も増えましたが、その中心はやはり若い世代です。
しかし、シリコンバレーで日本人起業家が活躍する数が、今よりも圧倒的に少なかった1990年代、ある日本人がシリコンバレーで起業して成功を収めます
日本人の成功が比較的少なかった時代で、その人物の年齢が話題になったのです。
今回は、定年後にシリコンバレーに渡り起業した、曽我弘氏のチャレンジについて紹介していきます。

新日鉄に32年勤務した後、シリコンバレーに渡る

img_e5b10527d5db51562d5f246714bfd2a314983出典:diamond.jp
1932年生まれの曽我氏は、静岡大学工学部を卒業すると、1社を経たのちに新日鉄に就職。
以後、1991年に退職するまで、主にエレクトロニクス事業部に在籍し、コンピューター周辺機器事業を推進します。
計測制御研究センター所長などの要職を歴任した曽我氏は、定年退職後、新日鉄のプロジェクトのためにシリコンバレーへと渡ります。
当時バブル崩壊の影響を受けて、新日鉄も米国プロジェクトから撤退を検討する時期だったため、曽我氏は新日鉄のサポートを得ながら自ら法人を立ち上げました。
しかし、新日鉄は関連事業を縮小して行った結果、曽我氏自身も一時日本へ帰国を余儀なくされました。
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出典:www.dice.com
しかし、シリコンバレーでの可能性を実感していた曽我氏は、1996年に再渡米し、Spruce Technologies, Inc.というスタートアップを設立します。
この会社はDVDオーサライジングシステムを開発・販売する会社で、1500万米ドル(約17億円)のシードマネーでスタート。日本電子計算社60%と曽我氏40%のジョイントベンチャーの同社は、「DVD Maestro」という商品を発表して、高い評価を得ます。
会社は85名の従業員を抱えるまでに順調に成長。しかし、従業員を雇い続けるには資金が足りないと感じた曽我氏は、同社を売りに出します。
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出典:www.zdnet.com
確かな技術を持つ同社に対し、マイクロソフトやアドビなどが買収に手を挙げたといいます。
そんな中、少し遅れてアップルがSpruce Technologies, Inc.に興味を持ちました。マイクロソフトが社内検討をしている間に、スティーブ・ジョブズ氏が迅速に行動に出たのだそうです。
ジョブズ氏が曽我氏にコンタクトした翌日には、2人が直接会い、交渉が始まりました。そしてその数日後、売却が合意。
それから、アップル社に移籍したSpruce Technologies, Inc.の社員は、これまでの製品に手を加え、MacBookのiDVDへと進化させました

今も起業を支援する曽我氏

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出典:kapion.net
Spruce Technologies, Inc.をアップル社へ売却した後も、曽我氏はシリコンバレーに留まります。日本人のシリコンバレーにおける 起業を支援する非営利組織の SVJEN (Silicon Valley Japanese Entrepreneur Network)を立ち上げ、スタートアップのバックアップをし始めました。
また、ベンチャー企業の顧問を務めたり、メンターとしての活動も続けていましたが、彼の妻が「晩年は日本で過ごしたい」と言ったことから、2010年に帰国します。
 
80歳を前にさすがに引退かと思われた曽我氏ですが、その情熱は衰えることを知りません。帰国後、株式会社カピオンを設立し、技術系スタートアップ向けに資金調達プログラムを提供する活動を、今も精力的に行っています。

熱い情熱とマネージメント力

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出典:www.huffingtonpost.ca
経験豊富な曽我氏の目からみて、「起業家に大切なことは、創業者の熱い情熱とマネージメント力だ」と力説しています。技術力さえあれば起業できると思うエンジニアがいるようだが、これは大きな間違いだと言います。
技術はもちろん必要ですが、それ以上に良いチームを作って、それをマネージメントする能力というものが最重要事項なのです。
ビジネスをするという視点を常に持つことが必要で、リスクを取ってチャンスをつかむ姿勢を忘れないことも必要だとコメントしています。

最後に

20年近くシリコンバレーで、起業家として活躍していた曽我氏の言葉には重みがあります。曽我氏のコメントは起業家向けだけではなく、ビジネスパーソン全般に言えることだと思います。
年齢を重ねて体力が衰えるのは自然の理ですが、曽我氏の活躍を見ると、気力やモチベーションは高い水準で維持することが可能であることがわかります。
「何を始めるにしても年齢的に遅すぎるということはない」ということを、曽我氏から学ぶ必要がありそうです。

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