治せない病がある限り
どれだけ科学や医学の研究が進んでも、新しい問題や病は次から次へ出てきます。そう考えると科学と科学者はイタチごっこを続けているようにも見えるかもしれません。難しい問題だからこそチャレンジのしがいがあり、難しい病気だからこそ誰かがやらなければいけない、そんな見方もできるかも知れません。
今回は、そんな難しい病の治療薬を効果的に脳に届ける装置を開発したイスラエル発のスタートアップ企業をご紹介します。
鼻から脳へ
出典:www.sipnose.com
イスラエル発のスタートアップ企業Sipnose 社が開発したのは、鼻から直接脳へ作用させる装置「Sipnose」です。鼻は薄い骨一枚で直接脳に繋がっており、その骨には小さな穴が開いていることから鼻から噴出させた薬剤を直接脳へ届けることができる仕組みです。
噴出させる薬剤は中枢神経系(CNS)疾患への薬剤です。CNS疾患は世界の薬剤マーケットの約3割を占めており、神経疾患や精神疾患など多くの病気を引き起こします。しかし、効果的な治療法がないまま、十分に満たされていない医療ニーズの残っている分野の一つなのです。
また、CNS疾患はその治療の難しさも課題です。CNSは脳と脊髄によって構成されており、わたし達の身体をコントロールするための中枢として多くの神経細胞が集まっている場所でもあります。そのため、強いバリア機能が神経細胞を守るとともに、化学治療に必要な物質さえも上手く届けることが困難だという課題がありました。
Sipnose社の画期的な装置は安全にかつ効果的に薬剤を脳に届けることができるため、現在多くの製薬メーカーが積極的に活用しようしています。
スペシャリストが集うSipnose社
出典:www.sipnose.com
Sipnose社は科学者、経営、投資の専門家達によって運営されているスタートアップ企業です。2011年にイスラエルを拠点に創業され、研究・開発を続けてこられました。
CEOのIris Shichor氏は、生化学・生理学・神経科学のスペシャリストで博士号を持つ科学者です。イスラエルのヘブライ大学で博士号を取得、ハーバード・MIT共同の科学者育成プログラムで研究経験を持ち、農業・食品科学のスタートアップ企業ClearFarma社で研究開発部長を経て、Sipnose社を創業に関わりました。
CTOのDaniel Shahaf氏も同じくヘブライ大学を農学部動物生理学専攻で卒業した呼吸器系用の医療プラットホームの分野のスペシャリストです。
CBOのEric L.Keller氏はバイオテクノロジー・材料科学・ソフトウェア・メディア業界で実務経験が豊富です。このように、Sipnose社はスペシャリスト集団なのです。
世界の科学的課題はリケジョが救う
日本ではまだまだ女性の科学者や起業家の数は少ないですが、世界に目を向ければ、多くの女性が様々なシーンで活躍しています。Sipnose社CEOのIris Shichor氏もそんなリケジョで起業家の一人です。世界という大舞台で活躍する女性は、美しく輝いてさえ見えます。
日本でも、日本の素晴らしさや繊細な技術を世界に発信していける、そんな大和撫子の活躍が今後ますます期待されそうです。