“隙間”に目を向ける仕組み作りを
“Gap”とは、“隙間”や“隔たり”を指します。誰かが住んでいるはずなのに一度もカーテンが開けられたことがない窓、公園でぼんやりと空を見上げるホームレスの男性、障がい者だった小学校の同級生、社会を少し見渡せば私達のまわりには至るところにそんな人と人の“隔たり”が溢れています。近くにいるのに埋まらない私達と“誰か/何か”をつなぐ取り組みが、一般社団法人リディラバの事業です。
一人の"落ちこぼれ"が作った人と人とをつなぐ新たな取り組み、“社会を変えること”を目指すそんな取り組みをご紹介します。
“関心を持つこと”の重要性
出典:ridilover.jp
一般社団法人リディラバが作られたきっかけは、創業者である安部敏樹が落ちこぼれだった高校生時代に遡ります。学校にも行かずにコンビニ前でだらだら過ごす日々。もちろん成績は大学進学すら絶望的なレベルでしたが、遊び半分に同級生達が立ち上げてくれた“ドラゴン桜プロジェクト”で人にようやく関心を持ってもらえた嬉しさを感じます。それを機動力に現役で横浜国立大学へ合格、1年で退学後、東大を受けなおし合格するという快挙が安部氏に自信を与えたのです。
創業者自身がかつてマイノリティだったからこそ分かる、誰かに“関心を持って欲しい”という思いを実現することがリディラバの事業の根本です。リディラバでは障がい者の方が働く作業所や地方都市の福祉といった“生”の社会見学ツアーに参加できる“トラベル・ザ・プロブレム”の主催と、ソーシャル・イシューに関するニュースや取り組みを紹介するインターネット・メディア “トロプロ”を運営しています。
世界には大小様々な社会問題があり、それらは全て解決されるべきものです。しかし、一人が全てに関心を持ち解決するのは難しい、だからこそリディラバのような問題とそれに関心を持つ人をつなぐ“マッチング”としての場所が今最も必要とされているのです。
自称"落ちこぼれ"から社会起業家へ 安部敏樹氏
出典:ridilover.jp
「リディラバ」というネーミングは、“ridiculous things lover”(ばかばかしいことが大好きな人)という言葉から名付けられました。これは、かつては落ちこぼれだった安部氏自身が東大へ入ってから感じた、“東大に在籍する恵まれた人たち”というカテゴライズ化への反逆精神でもありました。
安部敏樹氏は1987生まれ、京都府出身、現在は東大博士課程で複雑系や脳と社会的関わりについて研究する傍ら、学部生向けの授業も担当しています。学生時代に始めたボランティア団体から始まったリディラバの活動は、「社会の無関心を打破」することが目的です。落ちこぼれだったからこそ分かる、無関心の怖さ、東大生という世間的に恵まれた環境ゆえに社会に還元せよという言葉の嘘くささや社会の枠組みを変えることの難しさ、そんな思いが一つになり、安部氏を社会起業家へと駆り立てたのです。
社会を変えるためにできること
安部氏がリディラバの活動を通じて感じたのは、たとえ東大のような優秀な大学生でも、新たな問いを作ることは上手ではないということでした。日本人が受けてきた予め用意された答えにどれだけ近づけるかという考え方では、確かに社会を変えるような新しい動きは生まれにくいのかもしれません。
だからこそ、“もう一歩”相手に近づく取り組みを、私たち全員が改めて考えていくべきなのではないでしょうか。