修業のプロセスが変わりつつあるサービス業
シェフや料理人、ホテルやレストランなどのサービス業というと、下積みを長く経験して技能やノウハウを取得し、1人前に成長して行くという古くからのイメージがあると思います。
現在もそのような方法で優秀な人材を育成する方法もありますが、比較的短期間で専門的な技能を学校で習熟し、その道のプロとしてお客様に接するケースも増えています。
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日本でも少し前に、寿司学校に3カ月通っただけの店長がいる“鮨 千陽”がミシュランの星を取ったことが話題になりました。この寿司屋は4人の職人が在籍していて、全員が寿司学校に1年未満しか通っていない点が世間を驚かせました。
目を世界に向けると、日本のように下積みを経験して1人前になる昔ながらのケースもありますが、体系的にサービス業を学ぶ大学の卒業生達が、ホテルやレストランで活躍しています。
その中でもスイスには、昔から良質の大学が複数あるという定評があります。実際、ホテル業界人が選ぶ大学評価ランキングでは、トップ3をスイスの大学が独占しています。
質の高いスイスの大学の中で、世界中から生徒が集結する大学があります。約90カ国の留学生が在籍するグリオン大学は、ホテルサービス産業、フードサービス産業などのホスピタリティ業界の専門家を育成する大学です。
学士課程と修士課程を保有するグリオン大学の卒業生は、ホテル、レストラン業界で活躍していますが、ニューヨークでチョコレートブランドを立ち上げたパティシエが注目を集めています。
Artisan Chocolates, LLC社創業者兼シェフのAditi Malhotraをご紹介いたします。
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インドにルーツを持ち、レストラン業を営む一家
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Malhotra氏はインドにルーツを持ち、ニューヨーク近郊で生まれます。祖父、父はインドレストランをニューヨークで営み、典型的な北インド料理を提供していました。
Malhotra氏は高校を卒業すると、ホスピタリティ業界に進むことを決意します。まずはスイスにあるグリオン大学で、ホスピタリティとツーリズムの学位を取得します。その後、マンハッタンにあるFrench Culinary Instituteで、レストラン経営全般を学びます。
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French Culinary Instituteはフレンチ料理のシェフを育てる学校でもあり、併設するレストランで生徒が作った料理を提供します。日本にも寿司学校で同じような形態の学校兼レストランがありますが、French Culinary Instituteがオリジナルと言われています。
レストラン経営、ホスピタリティ、シェフと全ての教育を受けたMalhotra氏は満を持して実践の世界に飛び込みます。
Malhotra氏の経歴でユニークなのが、様々な分野の経験を短期間経験している点です。ペイストリーシェフを3カ月、レストランマネージメントを3カ月、日本料理店でシェフを1年と幅広い経験を積みます。
有名なチョコレート職人との出会い
そしてMalhotra氏に転機が訪れます。フランスの著名なチョコレート職人であるChristian Vautier氏が、自分の名前を使ってマンハッタンにチョコレートショップを開業してよいというオファーを提供したのでした。
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Vautier氏はMalhotra氏の親族の友人で、このオファーが舞い込んできたのでした。Malhotra氏は直ぐにパリに飛び、Vautier氏のお店で修業します。
2011年にArtisan Chocolates, LLC社を立ち上げたMalhotra氏は、翌2012年にマンハッタンのロワーイーストサイドに“Tache Artisan Chocolate”店をオープンします。
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パリでも人気の味を再現した“Tache Artisan Chocolate”は、瞬く間にニューヨーカーから人気を得ます。ダークチョコレート、トリュフチョコを専門とし、高級感を醸し出す“Tache Artisan Chocolate”のチョコレートは予想以上に世間に浸透します。
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Malhotra氏は、まずレストランガイドで有名なZagatから、”30 Under 30(30歳以下の注目の30人)”に選ばれ、2014年にはForbes誌からも ”30 Under 30”に選ばれます。
経営者のみならずシェフとしても高い評価を受け、Forbes誌から“アメリカで最高の若手シェフ”にも選出されました。
Malhotra氏は、サービス業に関わる様々な分野に、期間は短いと言えども携われたことが成功した理由だとコメントしています。ニューヨークのライフシーンをリードする存在にもなったMalhotra氏は、自分の好きなレストランや料理などをメディアに紹介して、人気を得ています。
さらなるMalhotra氏の活躍に注目です。