
ビジネスの世界で行われる「レンタル移籍」とは
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「レンタル移籍」という言葉を知っていますか?
「レンタル移籍」とは、サッカーなどでよく用いられる言葉で、期限付きで選手を他のチームに貸し出すタイプの移籍のことです。
実は、このレンタル移籍、ビジネスの世界でも行われているのです。
その仕組みを作り出したのは、株式会社ローンディール。彼らは従来の子会社・関連企業などと行う「出向制度」とは異なる、新たな企業間レンタル移籍プラットフォームを築きました。
しかしこのレンタル移籍、貸出側の企業からすれば人材を期間中失ってしまうだけではないのでしょうか?
それでも大企業がレンタル移籍を行うのはなぜなのでしょうか?
今回は、企業間レンタル移籍プラットフォーム「LoanDEAL」と、レンタル移籍のメリットについて紹介します。
ローンディールの考え方
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ローンディールの運営するプラットフォーム「LoanDEAL」には、受入企業として100社以上のベンチャー企業が登録されています。
貸出側の企業は、この中から自社の社員に合った契約先を選ぶことになります。
ローンディールの目的は、“出向制度をオープンかつ戦略的に活用し、イノベーションを推進できる人材を育成“することです。
出向制度は、一般に、自社の子会社・関連会社などに社員を派遣することを指します。つまり、クローズな制度です。ローンディールが目指すのはよりオープンな出向制度、それがレンタル移籍なのです。
もう1つの戦略的という点ですが、ローンディールはレンタル期間中のプロジェクトの設計やレンタル期間中のメンタリングなどを行います。
レンタル移籍が確実に成果を生むようにするため、経験の明確化・言語化にこだわっているのです。
そして、レンタル移籍の最大の目的は、社員の育成です。サッカーでも同様ですが、貸出側のメリットは社員を自社の外部で育成できることなのです。
LoanDEALはNTT西日本や富士ゼロックスにも使われています。
次からはレンタル移籍のメリットについて詳しく見ていきましょう。
三方よしの武者修行
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レンタル移籍に関わるのは「受入企業(ベンチャー企業)」、「貸出企業(大手企業)」、「移籍者本人」の3者です。
「受入企業(ベンチャー企業)」は、人材確保に苦しんでいることが多いです。優秀な人材確保となるとなかなか簡単にはいきません。
レンタル移籍を利用すれば、大手で経験を積んだ人材の助けを借りることができます。
「貸出企業(大手企業)」では、人材はある程度集まってきています。しかし、人数がいる故に、十分な育成機会が得られないことが多いようです。とくに管理者・リーダーとしての経験はなかなか積めません。
レンタル移籍を利用すれば、ベンチャー企業でのプロジェクトに社員を参加させることができます。
それにより、ベンチャーならではの感覚やリーダーとしての能力を身につけてもらうことが可能になります。
「移籍者本人」にとってのメリットは何でしょうか?
レンタル移籍はあくまでレンタルですので、転職のようなリスクはありません。
つまり、そういったリスクなしで会社の外に飛び出し、新たな経験・スキルを得ることができるのです。
受入先はベンチャーなので、一部の業務にとらわれず、より全社的な視点を獲得できます。
ちなみに、取締役のレンタル移籍も行われたようです。
テクノライブ株式会社の取締役、後藤幸起氏が株式会社LOUPEにレンタルされたのです。
後藤氏の移籍は週3日LOUPEで働くというもので、それ以外は自社で働きます。
ベンチャーの中で事業立ち上げのノウハウを体感し、すぐに自社で試してみる。そんなこともレンタル移籍では可能なのです。
このように、ローンディールが促進するレンタル移籍は、まさに三方よしの取り組みなのです。
ローンディールが生み出す可能性
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ローンディールはオープンな「レンタル移籍」のプラットフォームを作ったことで、人材育成の新たな可能性を生み出したように思えます。
これまでの企業内での教育・成長手段は3つ。教育の3本柱ともいわれる「OJT(現場教育)」、「Off-JT(集合研修)」、「自己啓発」です。
「OJT(現場教育)」は職場で業務を遂行しながらの教育です。現場に即した知識・技能を学べることが長所です。短所は、良くも悪くも職場内の教育に終始しがちだということでしょう。
「Off-JT(集合研修)」は座学やグループワークなどで行う研修のことです。長所は体系的に知識・技能をインプットできること。一方でその知識が現場にすぐに応用できるとは限らないのが短所です。
「自己啓発」は社員それぞれが自分自身で読書・セミナーなどを通して高みを目指すものです。
厳密には企業内での教育ではありませんが、企業として奨励・支援するという意味で3本柱に加えてもよいでしょう。
その自由さが何よりの長所ですが、短所として企業のコントロールが効かない、継続的な実施は大変などがあげられます。
日本ではOJTが中心で、Off-JTで補強するというのが一般的な形です。
「レンタル移籍」はこの3本柱に続く第4の柱になるかもしれません。
レンタル移籍は、実務を行いながら、普段とは違う新しいことに挑戦できる成長手段です。
現時点ではローンディールのサポートも受けながら計画的に経験を積むことも可能です。
新たな人材育成法に期待
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戦国時代には、多くの武芸者が各地を巡り歩き、他流派との交流を通じて新たな技・流派を生み出しました。
レンタル移籍によって、ビジネス人材の動きがより流動的になり、「新たな武者修行の時代」が来ることに期待します。