TIME誌も注目した東大発ベンチャー企業
東大発のベンチャー企業というと華々しい感じがしますが、製品・サービスが社会に普及して我々の目に触れるまでになるものは、まだそれほど多いとは言えません。
そんな中、論文を発表した段階でアメリカ・TIMES誌の「The 50 Best Inventions」(2011年)に選ばれたものがあります。
TIMES誌の影響で、製品化の開発の段階から注目を浴びた「PossessedHand」を開発したのは、2012年に東大発ベンチャーとして起業したH2L社です。
このPossessedHandの技術を使用して製品化されたのが、触感型コントローラー「Unlimited Hand (アンリミテッドハンド)」というものです。
出典:iotnews.jp
UnlimitedHandは、仮想物体を触った時に本物の物体を触った感触を体感できる装置です。
実際は触れていないにも関わらず、手に小鳥が乗っている感覚を味わったり、TVゲーム内で起こる衝撃を体感できる、驚きの技術です。
今回は、このようなヴァーチャルな体感を実現する「PossessedHand」とH2L社の今後に迫りたいと思います。
UnlimitedHandの疑似体験を実現させる技術
出典:iotnews.jp
PossessedHandは、腕にベルトを巻き付け、そこに電気刺激を与えることにより人の手の動きを制御する装置です。
簡単に言うとコンピューターから信号を送り、自分の意思に関係なく手を動かすというものです。
装置の名称「PossessedHand」とは、“操られる手”という意味を持ちます。
専用アプリケーションを使って、手の動きのパターンを認識させ、何処に電気刺激を送るとどのような手や指が動くかを把握させます。
その後、アプリケーションのコントロール画面を使って動かしたい手や指を指定すると、電気刺激が流れてその通り手や指が動きます。
出典:www.nikkei.com
この装置の開発のきっかけは同社チーフリサーチャーの玉城絵美氏が入院した時に、「ベッドにいても外の世界と触れ合いたい」と思ったのが始まりでした。
玉城氏はその後、東京大学大学院でロボットハンドコントロールのプロラム研究に携わります。
研究室の後輩であり同社代表取締役の岩崎健一郎氏と、体に微弱な電気を流す遊びをしていた時に、PossessedHandの原点を思いつきました。
開発段階から多くの研究者から製品化の要望があったことから会社設立を決意した玉城氏は、2012年に当時理化学研究所脳科学総合研究センターに勤務していた岩崎氏と共にH2L社を立ち上げます。
本格的な開発を経て、2013年2月に大学や研究機関を対象としたPossessedHandの販売に漕ぎ着けたのです。
出典:fabcross.jp
当初「PossessedHand」を見た人は、医療向けの利用を想定する方が多かったようです。
怪我をした箇所のリハビリに使用したり、脊髄損傷等などで動かない片手を動く方の手で「PossessedHand」を操作して、動かしたりすることを想定していました。
しかし、玉城氏と岩崎氏は新しいインターフェースとしての可能性を見出すために、この技術を応用させたUnlimitedHand を開発したのです。
H2L社の今後の可能性
出典:image.itmedia.co.jp
H2L社は、一般消費者向けにも製品を発売しています。
「Smart Nail」と呼ばれるこの製品はネイルに装着するネイルパーツで、LEDが埋め込まれており、電子マネーで支払を行うとこのLEDが光るという、何とも遊び心がある製品です。
海外の大学発ベンチャー企業の活躍が目立つ中、日本の大学ベンチャーは海外に比べると少し地味な印象を受けます。
しかし、日本の技術力はノーベル賞受賞などでも実証されています。
H2L社のように、最新技術を可能性の広がるものに製品化する力を持った大学発ベンチャーが今後登場してくることに期待したいです。