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不揮発性メモリの登場で、ビジネスマンの悩みが解消
少し前までパソコンで資料を作成していると、電源が落ちたり、パソコンがフリーズして強制的に電源オフをしなければならない時、作成していた資料は手動保存をしていない限り、全て消えてしまいました。
長時間を費やし作成した資料が一瞬にして消えて、一気にモチベーションが下がった経験をお持ちの方もいたのではないでしょうか?
最近はこのような事はほとんど経験することが無いと思いますが、これはなぜでしょう。以前のパソコンのメモリは、DRAMを主に使用していました。DRAMは揮発性メモリで、電源を切ると中の情報が消えてしまいます。
この揮発性のメモリを不揮発性にすれば、電源が切れても中の情報は消えません。例えば、オフィスで資料を作成していて、電源が切れてもパソコンが不揮発性のメモリを搭載していれば、電源が落ちる直前に戻ることが可能です。
不揮発性メモリの開発は、米国モトローラ社から分社化したフリースケール・セミコンダクター社が、2006年にMRAMという不揮発性メモリを開発します。これにより世界中で、資料作成を行う人々に多大な貢献をしました。
2016年になり、このフリースケール・セミコンダクター社の流れを汲むエバースピン・テクノロジー社が、Nasdaqに上場を果たします。メモリ業界で存在感を見せるフリースケール・セミコンダクター社をご紹介いたします。
セミコンダクター業界の巨人、インテルとも真っ向勝負
出典:www.everspin.com
米国アリゾナ州に本拠を置くエバースピン・テクノロジー社。MRAMを開発したフリースケール・セミコンダクター社から2008年にスピンオフした会社です。主力商品であるMRAMに改良を重ねて、現在では500社以上もの企業がMRAMを使用するまでになりました。
MRAMの最大の特徴は不揮発性ですが、セミコンダクター業界の巨人であるインテルなども最新の不揮発性メモリである3D XPointを発表しています。企業規模で大きく劣るエバースピン・テクノロジー社が、メモリ業界で勢力を伸ばす事が出来たのは、MRAMの技術的な優位性が大きいようです。
例えば、3D XPointと比較すると以下のような点で優れていると言われています。
動作性
フラッシュメモリは勿論のこと、3D XPointよりも高速に作動可能
耐久性
極めて高い耐久性
コスト
単純な三層構造なので、比較的安価で製造可能
その他にも専門的な内容で、3D Pointに優るところは幾つもあるようです。 このようなユーザーフレンドリーなMRAMですが、本来ならば取って代わるはずのDRAMは、まだまだ大量に流通しています。この理由は大きく2つあります。
まずは50年もの歴史を持つDRAMの方が、コストが安い点。そして次に記録密度(単位あたりの情報量)はDRAMが圧倒的に優れている点です。特に記録密度はMRAMの大きな課題と言えます。
しかしエバースピン・テクノロジー社は、これまでのMRAMを大幅改良した1ギガビットのチップを、2016年にサンプル出荷を予定しています。8ギガビットのチップが存在するDRAMとの差はまだあるものの、エバースピン・テクノロジー社としては大きな前進となります。
この勢いに乗じて、2016年10月にエバースピン・テクノロジー社は、Nasdaqに上場します。この上場に大きな役割を果たしたのが、経験豊富な経営陣です。
CEOは米国NECに22年間も勤務
出典:www.everspin.com
Phill LoPresti CEOは、22年間も米国NECに勤務し、副社長まで上り詰めました。エンジニア、セールス、マーケティングと幅広い経験を持つLoPresti CEOは、米国NECを退社後、セミコンダクターのスタートアップKenet社のCEOに就任し、その後、エバースピン・テクノロジー社に転じます。
Nasdaqに上場したエバースピン・テクノロジー社は、US$8/株で500万株を市場に提供し、US$4,000万(約40億円)の資金を集めました。上場後の初値はUS$9.02/株を付け、まずまずの滑り出しと言えます。
競争が激しいセミコンダクター業界で市場から一定の評価を受けたエバースピン・テクノロジー社ですが、LoPresti CEOはそれには理由があると言います。それは同社のMRAMが自動車業界において、大きなビジネスチャンスがあるからです。
広い帯域幅と優れた耐久性を必要とするADAS(先進運転支援システム)に、MRAMは大きく貢献出来ます。
長い歴史を持つDRAMなどに比べると、発展中のMRAMが主力商品のエバースピン・テクノロジー社の今後の活躍に注目です。