日本の若者は本当に内向きなのか?
「近頃の若者は...」という嘆きは古代エジプトのピラミッドの落書きにもあることですが、数千年の時を経た今の日本社会でもそんな嘆きをよく聞きます。
「気迫がない」「内向的」...ときにそんな批判を受ける現代の若者ですが、今回はそんな現代の若者のイメージを払しょくする取り組みをご紹介します。
国際教育支援NGO「e-Education」の創業者、税所篤快氏です。彼は失恋と一冊の本をきっかけに、バングラデシュへ渡った若き起業家です。
世界規模のドラゴン桜「e-Education」の取り組み
出典:eedu.jp
国際教育支援NGO「e-Education」は、当時早稲田大学の大学生だった税所篤快氏によって創業されました。バングラデシュから始まったこのプロジェクトは現在、ヨルダン、ルワンダ、パレスチナ、フィリピンなど教育格差が激しい多くの国々で映像授業を通して貧困地区に住む高校生を大学に送り届けています。
教育の平等性は、日本人なら誰もが当然のように享受しています。しかし、多くの発展途上国では、未だ都市部と農村部の間で大きな教育格差が存在していることが問題になっています。一部の都市に住む富裕層のみが豊かな教育を受け、大企業や政府の要職に就き、その子弟がまた豊かな教育を受ける、というスパイラルがずっと続いています。
このようなシステムは、教育の偏りを引き起こすだけでなく、社会の元気をなくし、国の在り方にさえ影響します。
バングラデシュという国で一人の日本人の青年が起こした取り組みが、この流れに一石投じたことで、一国を巻き込むプロジェクトにまで発展したのです。
世界を背負うリーダー候補・税所篤快氏
出典:eedu.jp
税所氏は東京都足立区出身の1989年生まれ、現在はロンドン大学教育研究所(IOE)修士課程に在籍しています。落ちこぼれだった高校時代、予備校・東進ハイスクールの映像授業をきっかけに早稲田大学教育学部に入学を果たした彼自身が、ドラマにもなった「ドラゴン桜」そのままの学生でした。
晴れて大学生になったものの今度は失恋という経験を得て、彼女を見返すために社会起業家という存在に興味を持ち、様々な本を読み漁る中で「グラミン銀行を知っていますか」という一冊の本に出会います。
感銘を受けすぐに著者に会いに秋田大学へ行き、インターンを見つけた税所氏はそのままバングラデシュに渡ってしまうという驚きの行動力を発揮します。
さらに、インターン中のプロジェクトから始まった「e-Education Project」では、4年連続で貧困地域の高校生を国内最高峰のダッカ大学に入学させるという奇跡を起こし、現在はバングラデシュの教育省と連携し拡大を目指されています。
さらに、アフリカの未承認国家ソマリランドで大学院を作るというプロジェクトも進行させている税所氏は、これからの世界を背負っていく間違いなくリーダーの風格を持った人物なのです。
寛容的な社会が新しいリーダーを生む
何度も諦めそうになった時、税所氏のがんばりを支えてくれたのは仲間とチャレンジさせてくれた社会の存在でした。
「e-Education」以前にチャレンジした日本でのプロジェクトは周囲の反対から頓挫させてしまったという日本社会の不寛容さと、例え途上国でも見知らぬ外国人の青年に機会を与えたバングラデシュの寛容さは大きな隔たりがあるように感じます。
日本社会の元気を奪っているのは、外ならぬ大人の私たち自身なのかもしれません。