BPOという手段
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企業のグローバル化・巨大化で事業や部門が細かく枝分かれしていくにつれて、一部の業務がアウトソーシングされることも増えてきました。しかし、日本では家族会社としての風土を残す企業も多い中、アウトソーシングに対しては心理的な反発も多く見受けられるように感じます。
そんな中で近年注目を集めている“BPO”というアウトソーシングがあります。
様々な形で企業が自社の競争力を高めようとしている現代において、BPOを通して企業はどのような道を歩んでいくのでしょうか?
BPOとは?
“BPO”とは、Business Process Outsourcingの略語です。
主にバックオフィス業務と呼ばれる総務、人事、経理、給与計算、データの入出力といった業務を外部の専門的な企業に委託することで、業務の委託を通してそのプロセスを見直すと共に、コスト削減や経営効率の向上を目指すことを目的に行われています。
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BPOでは、企業の非中核的な事業や部門を外部企業へ委託することで、自社の競争力の中核となる重要な箇所へ資金や人材を再配置することができ、生産性を向上させることができるという魅力があります。また、業務改善の過程の中でその企業の本質的な中核を担う業務自体も見直すことができ、企業の競争力をより強固にできるというメリットもあります。
BPO市場(日本)
あなたの会社のコールセンターも沖縄にあるのではないでしょうか?
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沖縄県は1998年から通信費などの補助を目玉に、コールセンター業務の誘致に成功している自治体です。これまでに約70社が県外から進出してきており、1万5千人以上の雇用を生み出したと言われています。
日本では財務・経理業務やコールセンター業務がBPOとして外部の企業に委託されており、地価や最低賃金が低い沖縄や北海道の他に、中国や東南アジア諸国でも外部委託が行われています。しかし、日本語でのコミュニケーションや複雑な法律が課題となり日本のBPO市場は外国に比べて非常に小さなマーケットに留まっているのが現状です。
BPO市場(海外)
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アメリカの調査会社・XMG社 の調査によると、世界のBPO市場はここ10年で約2倍に拡大・成長することが見込まれています。BPO先にはインドが世界のトップのシェアを占めており、特に東南アジア諸国は先進国の約5分の1の人件費しかかからず、旧植民地国も多いため英語を話す文化から主に欧米企業の委託先になっています。
業界1位はアメリカのアクセンチュア、2位は中国のInfosys Technologies 社とコンサルティング系の会社が占めていますが、特にIBMは強力なIT力を武器に多くの企業から外部委託を受注されており、自治体から医療界まで幅広くBPOを実施しています。BPOとITを上手く結びつけた時代の流れに即した企業戦略と言えるでしょう。
BPOベンダーの課題
日本におけるBPOベンダーの課題としては、日本の顧客の品質に対する要求の高さ、日本語のコミュニケーションや日本文化への理解、エキスパート社員が多いバックオフィス業務のマニュアル化の難しさ、個人情報も多い管理業務を外部委託することへの心理的反発、情報守秘への懸念が挙げられています。
日本という独自の企業風土が強い企業にとっては、管理業務を外部委託することの重要性に気付けていない経営陣も多く、日本でのBPOマーケットの拡大には今しばらく時間を要するでしょう。
しかし、BPOベンダーの中には、そんな細かな日本の顧客への要求に応えるべく、昨年度から始まったマイナンバーに対応する複雑な業務へのサービスの提供、携帯電話・情報端末等の持ち込み禁止、個人を特定できないように複数人がバラバラのデータを処理する等様々な工夫が講じられています。
BPOの今後
世界はもちろん日本国内でも、今後ますますBPO市場の拡大が予想されています。特にIT業務はTEC業界だけでなくどんな分野の企業にも避けては通れない重要な役割ですが、IT大国インドはもちろん中国でも情報工学系の大学卒業者数は日本の25~40倍にも上り、毎年優秀な人材が大量に輩出され、世界中のIT業務を担っていこうとしています。
このように企業の中核を担う部門が激しい競争を勝ち抜くために熾烈な戦いに身を投じる現代では、バックオフィス部門もよりシビアに企業の競争力を伸ばすために努力していくことが求められるのではないでしょうか。