近年の日本の起業環境はどうなっているのか?
渋谷という起業環境
そもそも渋谷を選んだのは、やっぱり「熱の違い」です。
インターネットが普及すると、「全国各地でどこでも起業ができる」と言われたりします。ですが一方で、本当に事業で成功しようと思うと、最先端の情報が頭の中にあるかどうかが重要です。最先端の情報というのは口コミや雑談の中に落ちていることが凄く多いと認識しています。
渋谷は「道玄坂を歩けば起業家に当たる」と言われるほどのエリアで、ここでの雑談・コミュニケーションから新しいイノベーションが生まれていると私は捉えています。
我々が入っている新大宗ビルでいうと、例えば隣の部屋にはイーストベンチャーズというベンチャーキャピタルが入っていて、そこが投資していらっしゃる起業家も沢山入っています。
以前は上の階で孫泰蔵氏がやっているミスルトの投資先が入っていたり、あとは5階にスカイランドベンチャーズというベンチャーキャピタルが出資している企業が入っているなど、「ベンチャーの園」と言われたりしています。
ここのエレベーターの中の雑談によって新しい兆しが生まれたりするので、こういった場の特殊性が渋谷の良いところだと捉えています。
起業する人の母数自体は大きく変わっていない
日本全体の起業環境でいうと、過去にも何度か「起業ブーム」があり、起業したい人の数はブームによってかなり増減します。ただ、実際に起業する人の数はなかなか変わりません。そこに対して私自身は課題認識を持っています。
最近「日本は資金面や人材の面、社会的なインフラの面で起業しづらい環境だよね」と言われることもありますが、お金の面では創業補助金がありますし、ベンチャーキャピタルの数もかなり充実していて、資金面でいうと起業できない理由にはならないと思うのが正直なところです。
じゃあ何が根本的な問題かというと、心理的なハードルがボトルネックになっているのではないかと思っていまして、それを解消するための取り組みを我々がやっています。
学生起業が起業率向上の鍵
最終的に起業している人のプロフィールを紐解いてみると、やはり在学中に起業経験がある人が凄く多いです。在学中に起業していた人も、大学卒業してから約6割が就職しますが、就職しても在学中に起業経験がある人はもう1回踏み出します。
ただ、在学中に起業経験がない人は、一旦就職すると起業への心理的ハードルが凄く高くなってしまい、ずっと踏み出せないという構造になっています。「とにかく在学中に起業経験を積む人を増やそう」というのが、我々が行っていることです。
ではなぜ在学中に起業経験がある人が生まれるのかということをヒアリングしてみると、これも共通点がありました。
我々は起業体験と呼んでいますが、例えば文化祭を経営者の視点で自ら立ち上げてみるとか、eコマースで転売するとか、ちょっとしたビジネスをゼロから立ち上げて成功体験を積んだ人が多いのです。
「自分でもここまでできるのなら、会社立ち上げもできるかもしれない」と思って学生起業し、一旦就職してまた起業家になっているという構造になっていました。
ただ、起業体験というのは放っておいても自分でやる人しか今まではやらなかったので、「誰もがそれを経験できるようなプラットフォームを作りたい」というのが1番の想いで、今このビジネススクールを運営しています。
(インタビュアー:菅野雄太、撮影者:高田梨菜)