服の販売員だった山田氏が起業した経緯
起業の経緯
大阪へ戻ってきたあとに、サラリーマンとして再就職しようとしたんですが、実はサラリーマンにちょっと飽きていて。
「サラリーマンにはまた戻れるだろう。いつでも戻って再就職すればいいから、とりあえずやりたいことをやってみようかな」という想いが盛り上がってきました。
そのきっかけとなったのは、大学のときにイベントやラジオのパーソナリティをやっていた経験から、自分が夢中になって集中できることを見つけると、本当に時間はあっという間だと感じていたからです。
僕の中にはルールがあるんですけど、やりたいことを3日以内にスタートできなかったら、たぶん出来ないんですよね。72時間ルールっていうのがあって。
そのルールに沿って「よし、スタートアップするぞ!起業するぞ!」と決めて色々やっていたり、思いついたけどできなかったことは捨ててしまったりとか。
結局2013年の夏に「Startup Weekend(スタートアップウィークエンド)」というハッカソンに出て優勝してしまい、「よし、これはIT系だ」と絞ってからは早かったですね。
事業の決め手
大きい決め手は、自分自身がスポーツをやっていたということが1つあります。
もう1つは、「人間を分析する」というのをとてもやりたくて。
「人間のパフォーマンスをどうやったらあげられるのか」ということはずっと考えていて、強みを活かすしたり伸ばしたりすることにすごく興味がありました。
人間の可能性をより上げていくことを限られたシチュエーションでやっていくには、「スポーツ」というのは割とモチベーションもはっきりしているので、わかりやすいかなと感じています。
自身の野球というバックグラウンドを合わせて、起業当時は野球から切り込んでいったという流れですね。
人の意見を聞いても、決めるのは自分
事業を進めていく中で、「特定の人からの意見だけを聞かない」というのは凄く意識していました。
フェーズや年代、それから距離感。アイデアベースが終わりたてくらいの人と、凄く先の先輩の両方に聞くとか、常にセカンドオピニオンを求めて、アイデアは聞くようにしていました。
というのも、やはり最終的に決めて、責任を取らなきゃいけないのは自分です。
1個の意見だけだと、自分は流されやすかったり影響されやすかったりするので、そこを意識して、ゾーンを分けて、色々なゾーンのメンターの人から意見を聞くようにしていました。
でも最終的に決めるのは自分なので凄く悩みますけれども。
そんな時は悩むんじゃなくて、「どうしたらいいか」と考えて結論を出すことが大切だと思います。
「失敗したら」という不安
起業してからまだ1年半しか経っていませんが、「毎秒お金が溶けている」というのは凄く意識しますね。
チャリンチャリンとポケットに穴が開いているかのようにどんどんお金が流れていっているので、しばらくお給料がゼロの期間もありました。
一番大変だったのは、どんどん資金が減っていって、あと5万円ぐらいしかないというような状況になった時でした。
「支払い待ってますけど、どうしましょう。でも資金調達の話は進んでいますよね?」というタイミングは非常に大変でした。
別に自分のお金を足せばいい話なのですが、「失敗したらどうしよう」という不安が膨れ上がって、相当なプレッシャーがありましたね。
失敗したからといって死んでしまうわけではないのですが、起きてないことに対して不安を抱いて、それにとらわれて考えがまとまらない時期が大変でした。
今思えば、「気苦労だったのかな」という気はします。
「ヒト」については運が良かった
メンバーを集めることに関しては運が良かったと思ってるんですけれども、ほとんど苦労していなくて、知り合いづてに来てくれた人もいますし、紹介してくれた人もいますし。
気がついたら7,8人になっていて、メンバー集めのところは全く苦労していません。
逆に「苦労している」って言っている人達にアドバイスが出来なくて、今度は自分が困るんじゃないかなと思ってるんですけれども。
でもやはり、今までのネットワークでゆるく繋がっておくのが良いんじゃないかなと凄く思います。
起業を志す方に向けて
いくつか自分が最近意識していることがあるんですけれども、「完璧を目指さない」とか「手元にあるカードで勝負する」であったり、時間も限られているので「優先することを必ず3つ決めて、それは必ず今日やる」とか。
あと、コントロールができることと出来ないことを分けて、コントロールが出来ないことを心配しても仕方がないので、考えないようにして、コントロールができることに集中してやっていくとか。
色々失敗もするんですけど、失敗を失敗のままにしておくとただの失敗なので、そこから色々回収して「失敗から学ぶ」ことは大切にしています。
スタートアップって毎日同じことは起きないんですよね。なので、「臨機応変に対応する」ということもあります。
あと、負けそうなときや失敗しそうなときは、いかにダメージを最小限にするかを考えます。立ち止まると大けがをするので、そこは意識しています。
個人的に凄く難しいと思うのは、「ストレス管理」。ファウンダーが正気を保っていられるかどうかがスタートアップの健全性を測る1つの指標になると思っています。なので、ストレス管理、ストレス・マネジメントは大切にしています。
ストレスを受けた分だけ遊ぶ人もいれば、飲む人もいれば、色々いると思うんですけど、自分なりの発散方法とか、管理の仕方が大事かなと。
あと1つは「英語」ですね。日本語で検索してもあまりいいのがなければ、英語で検索すると結構良い情報が出てきたりするので。
あとは英語をしゃべれること。僕はドキュメントの読んだり書いたりは苦手なんですが、話したり聞いたりする部分はある程度できるので、そこはラッキーだったかなと思っています。
それから、チャンスは突然転がってくるので、その瞬間に勝負できるだけの準備をしておくことですね。
そもそも、チャンス自体に気づくことが結構大事かなと思っていて。チャンスが転がってきていること気づかない人と気づく人に分かれますが、自分で気づかない人も、周りの人が気づいている時があるんです。
そのときはその人が「あれ、これお前のチャンスじゃないか?」と言ってくれるので、それに耳をちゃんと傾けられているかどうかというのは大きいことかなと思います。
たとえチャンスを見つけたとしても、準備がなければチャンスはものに出来ないので、このチャンスをものにしようと思うと、普段からどこかに自分の中のちょっとした貯金を積み立てておかないと、つかみそこねて悔しい思いをするので。その経験は僕にも何回かありました。
「今だったのに...」ということが起きないように、「いつ来るかわからないけど、ストックはあります」という状態をキープすることです。
「目の前の勝負はこの手元のこのカードで勝負します」ということを意識していたら、いつか来ると思います。
ただチャンスは不平等なので来るとは限らないですけれども、「来たら絶対つかむ」という心持ちが大事かなと思います。
(インタビュアー:菅野雄太、撮影者:柏原陽太)