今回のインタビューは、ソーシャルワイヤー株式会社・代表取締役社長である矢田峰之さんに「事業の変遷」「上場プロセスで大変だったこと」「今後の成長戦略」について伺いました。
【経歴】
1974年静岡県出身。1997年関西大学工学部卒業後、ソフトバンク株式会社に入社。イーバンク銀行(現:楽天銀行)、IT系ベンチャー企業を経て、2006年ソーシャルワイヤー株式会社設立、同社代表取締役就任。2011年に海外進出し、現在は日本も含めアジア7か国11拠点でビジネスを展開。創業以来9期連続増収、会社を継続的に拡大させている。2015年、東京証券取引所マザーズ市場に株式公開。
事業内容
「アジアでクロスボーダー取引をする企業のためのサービスを揃えていこう」という理念のもと、現在、企業の「プレスリリースの配信」というPR系サービスと、『CROSSCOOP(クロスコープ)』というどこでもサテライトオフィスを構えられる「レンタルオフィス」サービスを展開しています。
日本の企業だけではなく、インド、シンガポール、インドネシア、フィリピン、ベトナムなど、アジアのいろいろな国で仕事をしようと思ったとき、必ず我々のサービスを活用する環境を作っていきたいと思っています。
ニュースワイヤー事業はプレスリリースの配信事業で、発信元である企業は、去年度において約3000~4000社でした。全て有料です。そのほとんどが直接取引という形をとっています。
一方、レンタルオフィスは、いわゆるスタートアップ向けのサービスです。
初めて起業する人向けのスタートアップにも使われていますし、例えば日本の上場企業がフィリピン・マニラの地でスタートアップをするときに活用するケースが最近増えています。
仕組みで伸びるサービスにピボット
私が過去に企業の管理畑、いわゆる財務とか経営企画で仕事についていた経験があったことと、当時(約9年前)は資本も何もなかったので、ベンチャー企業の管理部門向けのコンサルティングサービスからスタートしました。
ただ、やっているうちにスケールできないことに気付きまして。例えば10倍にするためには10人雇用すればいいわけではなく、おそらく15人ぐらい雇わないといけません。結局、人が原価になるサービスなんですよ。
こういうサービスは、何とか人をいっぱい採用し、ナマモノを仕入れるようなもので、私には思うようにスケールさせる能力がないと当時痛感しました。
そこから、「仕組みで伸びるサービス」にしようと業容を完全にピボットし、プレスリリース配信サービスとレンタルオフィスサービスをM&Aしました。小さく買って大きく育てるという概念ですね。
実は、創業のきっかけは今の事業に繋がっていないのですが、「これから事業をスタートする企業を支援しよう」という理念、それ自体は今も活きています。
上場企業じゃないと話を聞いてくれない
「これはいける」とか「いかないとだめ」と思ったのは、ちょうど我々が、まさにアジア展開し始めたときです。
ベンチャー支援のためのPR配信サービスをしていますし、レンタルオフィスのサービスをしていましたが、「この土俵をアジアでやろう」と踏み込んだのが、ちょうど5年ほど前です。その瞬間から自分の視座がグッと高くなり、「東京でどうこう」ではなく、「アジア全域で何かものを考える」、となりましたね。
また、実際現地に行くと、日本の上場企業じゃないと話を聞いてくれない、ということもありました。
そこで、「信用力がある程度担保できるような形で名刺交換をしないといけない」、「このままではパートナーも見つけることができない」と感じたので、「これはもう上場しないとだめだ」となり、一方、業績自体もその時期かららグッと伸びてきたので「これはもう上場できるだろう」と感じました。
「しないといけない」し、「できる」という、この2つが組み合わさったのが5~6年ほど前でしたね。創業してから4年ほどで本格的な意識をし始め、10年目で上場という感じです。