今回のインタビューは、プロパティエージェント株式会社の代表取締役社長である中西聖さんに「起業のきっかけ」や「組織構築のプロセス」、「会社で大事にしている価値観」についてお話を伺いました。
2015年12月上場のプロパティエージェント・中西聖代表が語る、投資用不動産販売における2つのユニークな考え方【前編】はこちら
【経歴】
ゼネコンにて現場管理者を経験し、モノづくりについて学んだのち、当社と同様の資産運用 型不動産を販売する会社に営業職として入社。部長職を経たのち、同事業に課題を見出し、 2004 年 2 月にプロパティエージェント株式会社を設立し独立。事業を運営しながら、明治 大学大学院グローバル・ビジネス研究科にて不動産関連の学識を深めつつ、MBA を取得。 創業以来 12 期連続増収増益を達成し、会社を継続的に拡大させている。
起業のきっかけとなった3つのポイント
学生時代に「起業したい」という考えはあまり持っていませんでした。
父親は1代である程度の会社を築いた人間なのですが、影響を受けたのか受けていないのかはわかりません。
私が不動産の営業マンをやっている時には、26歳くらいで部長職にまでつくような仕事をしていたので、役職が少し変わるたびに自分の仕事のインセンティブがどんどん変わっていったんですね。
部長職になった時には、すでに経営の3分の1に脚を突っ込んでいたので、物事を見る目線がだいぶ変わってきていました。
その時に私は、この業界と当時勤めていた会社に対して課題を持ちました。
その課題は何かというと、「顧客の評価を一番高くとりたい」「提供する商品である不動産は、一番いいものでありたい」「どうせやるのであれば売上でも優勝したい」ということです。
そういった想いを前の職場で達成しようとしましたが、実際前の職場の経営陣はあまりそういったところに興味を持つような人々ではありませんでした。
そこで私はその3つを達成するために会社の社長に掛けあって、「とにかく社長を変える。経営を変える」ということで1年間色々頑張りましたが、なかなか変えることはできませんでした。
そのときに、3つの目標を達成していくための手段の1つが起業だったんです。それを達成するためには、会社という器を作らなくてはいけなかったということがありました。
もう1つは、ちょうど私が会社に勤め始めてから『ビジョナリー・カンパニー』という本を読みました。
この本は、非常に偉大な会社を分析している書籍ですが、私が当時持っていた大きな企業のイメージは「素晴らしいアイデアや大金を持っている」というもので、そういったことがあるから素晴らしい偉大な企業ができているんだと思っていました。
ですが、ビジョナリー・カンパニーの本を読むとそれは全然逆で、しっかりとした経営理念があって、それに基づいて事業を進めていくので、結果的にイノベーションにもなっている。そしてイノベーションすることを恐れずにずっとやり続けていくことができる企業が、大きな企業になっていけるのだということを知りました。
なので、長きにわたって偉大な企業を築いていく会社というのは、やはりどんどん変わっていく会社だということです。
それを読んだときに「ああ、素晴らしいアイデアがなくてもできるんだ」と感じました。もちろんアイデアは必要ですが、素晴らしいアイデアと大金がないと偉大な企業は創れないという仮説は崩れたので、私もこういう偉大な企業を作ってみたいと思ったのです。
3点目は、私が企業に勤めていた頃のちょうど2000年、1999年に『SPC法』というものが改正されて、2000年から「不動産の証券化」というビジネスモデルがアメリカから日本にやって来ました。
それと、オフィスを住居に変える、環境にあったものに生まれ変わらせるという「コンバージョン」という手法がアメリカからやって来ました。
そこで私は不動産に、「買う・売る・借りる・貸す」だけではない奥深いものを感じ取ることができました。
不動産のビジネスモデルというものはすごく奥が深く、ちょうど情報革命の真っ直中にあったこともあり、まだまだできる領域があるだろうと思いました。
それをすべて達成していくためには、会社という箱が必要だったので起業をしました。
前職でのお客様の一言で気づいたこと
1つ私にとって役に立った経験というのは、一番初めに契約をしてくれたお客様とのエピソードです。
私はその時営業マンという立場だったので、会社というものが理念から成り立っているということは全然わからない時期だったんです。
営業マンとして一生懸命頑張っていく過程で、契約をしたお客様とずっと付き合っていくわけですが、だいたい2,3年経った時にそのお客様と食事をしていたら、「中西くんは、営業マンとして何故そんなに優秀なの?中西くんの中で変わったポイントや、思うところがあったの?」と言われました。
私はその問いに対して、「営業でお客様に販売するときに、1つのコツを見つけました。そのコツは、お客様にどれだけ素晴らしいプレゼンをするかではなくて、そのお客様の幸せを徹底的に考え抜くことだと気づいたんです」と答えたら、そのお客様が「何言ってるの?そんなことはどの会社でも言っていることでしょ?」と言われたんです。
それを言われたときに「あ、正解だったんだ」と気づき、それ以降はその想いから仕事をしてきて、そこから今の我々の理念が出来上がっています。
これは、前職で働いているときの非常に大きな収穫でしたね。
なので、「会社の経営理念はこうだから」と教えられて理解したというより、「その営業活動の中で見つけた」というところが非常に大きかったと思っています。
会社の成長を取るか、ついてきてくれた人を取るか
会社を創業したあとに少しずつついてきてくれた人は、やはり我々の会社というよりも、「中西が好きでついて行きたい」という人たちでした。
最初は、私ともう1人で新宿2丁目のワンルームのような事務所でやっていましたので、新卒採用にしても中途採用にしても人が来るわけがありませんでした。
なので、以前一緒に仕事をしていた人が私のもとにパラパラと来てくれたんですけれども、それが非常に嬉しくて、とにかく一致団結で朝も昼も夜もずっと一緒にいるような状態でした。
みんなで仕事での目標を達成すれば、1年に1回海外旅行に行ったり、とにかく非常に仲が良くて素晴らしいグループが出来上がっていきました。
しかし、会社が大きくなるにつれて組織化がなされていかなくてはなりません。なので、私がずっと一緒にいるわけではなく、私は新しい社員を採用して、彼らの教育もしなくてはいけません。
そして、会社が大きくなっていけば、私は経営の仕事もしていかなくちゃいけないので、営業や仕入れ、開発という仕事に四六時中一緒にいるわけにはいかなくなってきます。
そうすると、彼らからしてみると「中西が少し離れていった」という感覚を持ってしまいます。
また、当初来てくれたのは非常に嬉しかったんですけれども、そのあと新卒採用や中途採用で力を伸ばしていった人を正当に評価しなければいけない時期がやってきます。
創業時に来てくれたメンバーの実力を抜くような人がきてしまえば、「会社の成長を中心に考えて意思決定をしなくてはいけないのか。それとも、会社の成長は止めても当初来てくれた人のことだけを考えて、そういった采配を振るうか」という選択をしなければいけなかったのです。
そこは非常に苦しいところでしたが、私は強い想いを持ってこの会社を創業しましたので、もとの考え方に立ち止まって、会社の成長を選ぶ決断をしました。そうすると、創業時のメンバーはやはり離れていってしまいました。
その厳しい決断をするのは非常に苦しくて、なかなか夜も眠れない日々を過ごしました。
ある程度好きでついてきてくれたとしても、そこはやはり社長と社員という切り分けがしっかり出来ているということが大切で、「中西さんが好きだから仕事をする」のではなく、やはり会社の理念に共感して「お客様のことが好きだからこの会社で仕事をしているんだ」という考え方になってくれていれば、こういうことはなかったんじゃないかと思います。
新卒採用で求めるのは「主体的に考えられる人」
やはり仕事柄、言われたことだけをずっとやっていくだけでは仕事ははなかなか成り立ちません。
例えば営業においても、マニュアル通りにお客様のところに行けばいいわけではありませんし、仕入れにおいても、我々が事業として成り立つ物件であれば仕入れればいいということでもありません。
その中でスコアリングの評価を使って、いかに顧客に価値を提供できるかという視点で物件の仕入をしなくてはいけません。
ものづくりにおいても、同じ入居率をマークすることができたとしても、それ以上に見えないところでも競争力が高まる努力をしていかなくてはいけません。
そういうことを考えれば、やはり絶対に主体的に考えていくことが求められます。
これはどの業界においても同じなのかもしれませんが、新卒採用をするにおいては、「どれだけ自分の頭で考え抜く力があるか」「そして失敗を恐れずにどれだけそれを実施する力があるか」ということを私は重視しています。
そういった信念を持って、社内で議論をするときに「今日ここで言わないほうが、うまく雰囲気がまとまるな」と思っても、「それだと意味がない。お客様のためにはならない」と考えて、議論できる人を採用していきたいと考えています。
議論は喧嘩をするわけではありませんので、議論を通して最適解を出すという考え方を持つには、やはり自分の頭で考え抜く主体性というものが必要になってきますので、そういうったものを大事にしていきたいです。