ユダヤの歴史に遡るイスラエルの高教育水準
日本が研究や経済の分野で活躍する人物を輩出出来るのは、高い教育水準によるところが大きいと言われていますが、取り分け数学の教育レベルが高い点が国の力を押し上げているようです。
最近はインドの数学教育の高さが話題になっていますが、実は教育レベルの高さが注目を集めている小国があります。それはイスラエルです。
労働者1万人当たりの研究開発従事者数はアメリカを上回り、日本の2倍以上です。これを実現させているのは、確かな数学教育をベースにしたコンピューター教育、特にプログラミングに力を入れているからです。コンピューターサイエンスの授業は高校では必須科目で、最短でも90時間の授業を受ける必要があります。
イスラエルが教育に力を入れているのは、ユダヤの長い歴史によるところが大きいと言われています。長い間、定住地を持たなかったユダヤ人は、何かあった際に何も持たずに居住地から逃げ出さなくてはいけない場面に陥った苦難の歴史があります。その場合でも知識だけは持って逃げられるので、“知識こそ何物にも代え難い財産”と考えるようになります。
この高い教育水準に裏付けされたイスラエル発のあるスタートアップが注目されています。今回は数学教育教材を提供するMatifix社をご紹介いたします。
数学は面白いものと思わせる仕掛け
出典:www.matific.com
Matifix社は2012年に5人の創業者によって、イスラエルのテル・アヴィブに設立されたスタートアップです。主に幼稚園児から小学校6年生までを対象にした数学・科学教育のプラットフォームを提供する会社です。
Matifix社の主力商品は、子供達が数学や科学に興味を持ってもらえるような内容の教材を、パソコンやタブレットを通じて提供するものです。例えば、皆さんも小学生時代、図形を回転させて面積などを計算する問題を解いたことがあると思いますが、頭の中で図形を回転させるのは難しいかった記憶はないでしょうか?
Matifix社が提供するエピソードというオンライン教材は、パソコンやタブレットを使って立体的なビジュアルで問題を解くことを可能にし、生徒達の理解を助けています。
また勉強自体を楽しいものと思える工夫が随所にあるエピソードは、子供達が数学は面白いものだと思うようになることが1つの狙いです。
5人の創業者の知恵が詰まったMatifix社
出典:drive.google.com
5人の創業者達のバックグランドは多岐に富んでいます。オンライン起業家Leon Kamenev氏、教育者のRaz Kupferman氏とShimon Schocken氏、ソフトウェア開発者のShmulik London氏、ゲームプラットフォーム開発者のGuy Vardi氏がそれぞれの強みを活かし、Matifix社の製品は完成しました。
その中でも中心人物のVardi CEOとKamenev取締役は、その世界では名の知れた著名人です。Vardi CEOは過去にヤフー、マイクロソフト、コムキャスト向けなどに、カジュアルゲームのプラットフォームを開発した実績があり、ゲーム業界では有名人です。
Kamenev取締役は、オーストラリアの大手ホテル予約サイトRate to go社を起業したり、オーストラリア最大のオンラインケータリングシステムMenulog社の共同創業者としても有名です。
Kamenev取締役の経歴も注目を集める理由で、ソビエト崩壊後、1990年に難民として家族でオーストラリアに渡ったKamenev取締役は、自分の才覚で億万長者になった人物です。
出典:drive.google.com
多彩な経歴を持った創業者達が目指したものは、Matifix社が掲げるミッションに表されています。Matifix社のミッションは以下の4点です。
1.質の高い数学教育を広める
2.先生や保護者の皆様に力を与える
3.数学を魅力的なものにする
4.科学的思考への門を開く
非常に分かりやすい内容で、幼稚園児から小学生の内に数学教育を身近なものにして、基礎学力を付けることにより、より高度な教育を受ける礎を身につけさせることに貢献する内容です。
企業理念や創業者達の実績に惹かれて、資金も順調に集まります。至近では2015年にSeries AでUS$1,200万(約14億円)、2016年にはUS$4,500万(約52億円)の資金を集めました。
教育界で注目を浴びるイスラエルですが、その中でもMatifix社の今後の発展に注目です。