組織観は時代の流れと共に変化していくものです。その中でも組織の目標達成、そして結果に大きく貢献するのが、学習する組織と言う言葉です。
組織はどうあるべきなのか。どんな組織が組織としても個人としても成長を促進するのか。
今回の記事では脚光を浴びている「学習する組織」について解説していきます。

 

学習する組織とは

学習する組織とは何か

学習する組織とは、目標にむけて効果的に行動するために、組織としての「意識」と「能力」を継続的に高め、伸ばし続ける組織のことを指します。
M I T上級講師のピーター・センゲが提唱し、数ある組織開発のアプローチの中でも企業や国際機関の経営者から大きな注目を集めています。
個人と組織の学習能力を相互に発展させていきながら、組織の健全性と有効性を高めていくのが、学習する組織なのです。

学習する組織の特徴

では、学習する組織にはどんな特徴があるのでしょうか。学習する組織には何があるのでしょうか。組織全体の観点から解説していきます。
学習する組織の特徴は大きく3つあります。

1つ目は環境に耐えるしなやかさです。
近年、事業環境は急速な変化を遂げています。コロナウイルス感染症の流行により、大きく事業環境は変化しました。そして、これからも変化を遂げていくでしょう。
そんな環境の中でも、学習する組織にはしなやかさがあります。急激な変化にも耐え、更に大きな結果を生み出していく。学習する組織は環境にしなやかです。

2つ目は、環境に迅速に対応する適応性です。
1つ目に似た部分もありますが、学習する組織は環境の変化から遅れることなく、しっかりと適応します。適応スピードも早いです。環境を言い訳に組織の力を落としてしまうのではなく、そこにしっかりと適応することでチャンスに変える。今後の組織にはそれが求められてきます。

3つ目は、「自己組織化」です。
組織に所属する個人個人が、自分自身を組織化し長期に渡ってパフォーマンスを発揮できる状態を作ることが重要になります。主体的に学び、創造する。自分という個人を組織の1員であると考え当事者意識を持つ。学び、自己投資や業務レベルの向上に対して怠ることなく自分を磨く。学習する組織の一員にはこのような姿勢が求められます。

 

学習する組織の考え方

 

このパートでは学習する組織において大切にされている考え方や規律に関してまとめていきます。学習する組織を構築するためにはどんな学習、学びがいるのかについても解説します。5つの学習領域に分け、見ていきましょう。

システム思考

 

学習する組織を構築するために大切なことの1つ目は、システム思考です。組織においても人においても生命システムであるということを前提と考え、当事者意識を持つことが大切になります。組織の中で起こる様々な問題や相互作用も、生命システムの挙動であると考えるのです。ですから立ち振る舞いを自覚したものにする必要があります。組織のメンバー一人一人が全体集合の中の部品であるという考え方をするのではなくて、自分自身の問題であると考えることが求められます。

 

自己実現

 

2つ目は、自己実現です。
個々が自らの仕事や役割を創造的に広げていく取り組みが必要になってきます。
メンバーが絶え間なく継続的に学習、活動していける継続的な学習を必要とします。自分自身のビジョン、将来の理想像を能動的に埋めていく、そこに挑戦していく姿勢が求められるのです。学習と実践を繰り返しながら成長、自己実現に向かっていくのが学習する組織のメンバーです。

メンタルモデル

 

組織やかく個人の奥にある固定化されたマインドイメージが、実際あります。周囲から表面化していない分わかりづらく、捉えにくい場合が多いです。本人さえも無意識である場合があります。このメンタルモデルが目に見える言動や組織目線での構造や挙動を生み出すのでメンタルモデルを理解した上での取り組みが大切になってきます。
特に個人や組織の変革にはメンタルモデルを認識した上での取り組みが極めて重要です。

共有ビジョン

 

4つ目は、共有ビジョンです。
組織や個人が共有するビジョンのことを指します。
チームのビジョンという認識が強いです。組織は個人の集合体であるという前提がある分、組織のパフォーマンス向上には個人の成長が伴います。そのため、個人個人が同じ方向を向いていなければ成長するスピードは下がってしまいます。チームが同じ方向を向いて成長していくために共有ビジョンの存在は欠かせないと言えるのです。

 

 

チーム学習

 

最後に求められるのは、チーム学習です。
ビジョンを共有したチームが、協働して学び合っていく過程のことを指します。大切なのは個人の成長のみではなく、組織の成長です。チームで学び合っていく過程は、学習する組織そのものであると言えます。ともに学んでいくことで個人では成し得ない成長をすることも可能です。

以上5つが、学習する組織においては必要不可欠なことです。

 

 

学習する組織に見るこれからの組織像

 

これからの組織像は大きく変わっていくと見られています。学習する組織から学ぶ、これからの組織のあり方に迫ります。

 

より健全性、有効性の高い組織へ

学習する組織では「人こそ宝」、人を重要視します。そのため組織がいい方向へ向くためには組織においての繋がりの濃さや関係性の質が作用します。個人個人の能力を引き出せる組織であるのか、力が活かされない状況ではないかという観点で組織を見ること、作っていくことが大切です。
組織という車を効率的に回すには、ハード面とソフト面の両方が必要です。

 

何故組織変革はうまく行かないのか?

 

とは言っても、組織改革はうまくいかないことが多いです。組織改革を試みても大半が中止になってしまいます。
それは何故でしょうか。
それは多くの場合が他のメンバーからの抵抗、組織の中の壁にぶつかってしまい消えてしまう、というケースです。
うまくいかない現場に対して機械的に、部品を交換するという考え方をしてしまうとうまくいきません。個人や組織は生産機械、という前提があることがこの考え方に繋がります。
個性、知性、感性が尊重されていないと感じるとチェンジへの抵抗につながってしまいます。
メンバーの感じていることに対してしっかりと考えていくことが重要です。

 

学習する組織を筆頭に、組織観は「機械観」から「生命組織観」へ

 

ここまで、学習する組織に関してまとめてきました。これまでの組織論は先述した通り機械的に組織を捉えることが一般的でした。しかし、学習する組織の登場を筆頭に組織論は大きく変化しました。要素還元からホールシステムへと変わったのです。組織全員が当事者であり、組織へ大きな影響力を持っている。だからこそ学び続ける姿勢が大切である。全てを合わせて1つの生き物、生命システムだと捉えること。それが、個人と組織の成長を加速させる学習する組織なのです。

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