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世界の食品廃棄は毎年13億トン
ノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさんが“もったいない”という言葉を世界に浸透させようとしていたことを覚えていますか?
マータイさんの活動は世界に広がっているものの、世界で毎年廃棄される食料は今日でも膨大な量のままです。国連食糧農業機関 (FAO)の調べでは、現在、毎年13億トン(全世界で生産される食料の1/3)の食料が世界で廃棄されているといいます。
出典:www.ecofoodrecycling.co.uk
先進国での廃棄が目立ちますが、欧州では「欧州資源効率化計画(ロードマップ)」を2011年に策定し、2020年までに食料廃棄率の半減を目指します。
一方、日本での食料廃棄は、年間1,700万トン(平成22年度)に留まりますが、本来食べられるのに廃棄になるもの、いわゆる食品ロスは年間500-800万トンと、他国と比較して大きな値となっています。
そもそも食料廃棄の一定量は、食料を腐らせてしまうことによって起こります。これは発展途上国でも深刻な問題になっています。
そこで、食料の鮮度を長く保たせる製品を開発した若き女性がいます。それが今回、ご紹介するカビタ・M・シュクラ氏です。
出典:www.youtube.com
全てのきっかけはインドの水事情
インドにルーツを持ちドイツで生まれたシュクラ氏は、その後、家族でアメリカへ渡ります。
12歳の時に祖母が暮らすインドを訪問したシュクラ氏は、周囲から絶対に水道水を飲んではいけないと言われていたにも関わらず、誤って水道水を飲んでしまいます。
出典:www.infrastructurene.ws
周囲から厳しく注意をされていたため、シュクラ氏はパニックになってしまいます。それを助けたのが、彼女の祖母でした。様々なハーブやスパイスを混ぜたお茶を作ってくれた祖母は、それをシュクラ氏に飲ませます。
出典:www.youtube.com
西洋育ちのシュクラ氏は、このようなものに本当に効果があるのか半信半疑でした。しかしそのお茶を飲み続けたシュクラ氏は、健康を取り戻します。
シュクラ氏は当時を振り返り、祖母は教育も余り受けておらず、比較的貧しい暮らしをしていたのに、大切な生活の知恵を持っていた点を鮮明に覚えていると語ります。
食品廃棄を防ぐ魔法のペーパーを開発。しかしタダでも売れない
メリーランド州の自宅に戻ったシュクラ氏は、祖母が与えてくれた液体を自分でも作ろうと、様々なハーブやスパイスで実験を繰り返します。その過程において、一部のハーブがカビやバクテリアの繁殖を抑えるということを発見します。
そのハーブを練り込んだペーパーをシュクラ氏は作ります。僅かU$25(約2,750円)で出来あがったその製品は、食料をそのペーパーに置くと腐るまでの時間が飛躍的に長くなる効果がありました。
17歳の時、シュクラ氏はある科学イベントでUS$1500(約17万円)の賞金を得ます。そのお金を基に、後にフレッシュペーパーと呼ばれるこの製品の特許を取得します。
ハーバード大学へ進学したシュクラ氏はNPOを設立させて、この製品をタダで世界中に配る活動を始めます。しかし世間からの共感を得ることは出来ず、運営資金は集まりませんでした。
出典:www.fenugreen.com
ダダものではない人気へ
NPO活動は上手くいかなかったシュクラ氏は、ハーバードを卒業した後、スワループ・サマント氏と起業します。これが今日のフェヌグリーン社です。
出典:www.kienyke.com
シュクラ氏とサマント氏はお互い、数百ドルを出し合い、フレッシュペーパーを1,000枚製造します。それを小規模のファーマーズマーケットで自らの手で販売します。初日に手にしたUS$600(約66,000円)の売上を、今も忘れないとシュクラ氏は語ります。
その後、フレッシュペーパーは口コミやメディアに取り上げられ、飛躍的に販売が伸びます。現在では全米の有力チェーンストアーでも販売させるまでになったフレッシュペーパーは、世界35カ国でも販売されています。
「食品廃棄を防ぐ」NPOの理念を忘れず
一度は挫折したNPOですが、シュクラ氏の心の中には世の中に貢献したいという気持ちは、色濃く残っています。
一部のチェーンストアでフレッシュペーパーが8パック売れるたびに、1パック分の売上金をアメリカフードバンクへ寄付をしています。また国際的には、発展途上国の収穫効率を上げる活動にも取り組んでいます。
インドやアフリカでは未だに飢えに苦しんでいる人々がたくさんいることを嘆くシュクラ氏は、これからも社会に貢献する活動を行っていくと力強くコメントしています。