アメリカ大統領選の裏で行われていた、大麻に関する住民投票の結果は?
医療大麻と聞いても日本ではピンとこないかもしれませんが、アメリカではその存在はある程度認知います。つい最近までアメリカ50州の内、24州と首都ワシントンDCでは医療大麻が合法化されていました。
大統領選挙に沸いた11月8日、日本では余り報道されていませんでしたが、大麻関連の住民投票が幾つかの州で行われました。その結果、フロリダ州、アーカンソー州、モンタナ州とノースダコタ州が新たに医療大麻合法州に加わりました。
アメリカ連邦政府は医療大麻を合法とはしていませんが、これでアメリカ50州の過半数の州で医療大麻が合法化されたことになります。医療大麻は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)やてんかん、パーキンソン病、がん、緑内障に苦しむ患者に処方されるようです。
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しかし実際の医療現場では、合法化されて21年が経つカルフォルニア州でも余り普及していないのが現状だと言われています。
一方、日本人の感覚では驚くことに嗜好用の大麻合法化を問う住民投票も5州で行われ、カリフォルニア、マサチューセッツ、ネバダ、メインの4州で可決されています。
上記のように大麻が身近なものであるアメリカでは、大麻に関連するビジネスも伸びています。その中でも11月にNASDAQに上場したイノベーティブ・インダストリアル・プロパティーズ社(Innovative Industrial Properties=IIP)が注目を集めています。
大麻関連で初めてのNASDAQ上場
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アメリカ大統領選の興奮が冷めやらぬ11月17日、ニューヨーク証券取引所はイノベーティブ・インダストリアル・プロパティーズ社(以下IIP)のNASDAQ上場承認を発表します。一見、何の変哲もない発表に聞こえますが、この発表は医療業界に衝撃を与えます。多くのメディアが騒ぎ立てましたのは、記憶に新しいと思います。
IIP社の事業は不動産投資信託ですが、“カナビス”を栽培する施設に投資を行うことがメインの業務です。“カナビス”というと余り馴染みの無い言葉に聞こえますが、これは大麻の別名です。
医療大麻が合法化されている州が過半を超えたアメリカでは、マリファナ(大麻)という言葉のイメージが悪いため、医療大麻など合法的に大麻を商品化する場合、“カナビス”という言葉を使用するのが一般的です。
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大麻が一部合法化されているアメリカでも、ニューヨーク証券取引所のような主要証券取引所に大麻関連企業が上場されたことはありませんでした。
今回の上場承認に対し、ニューヨーク証券取引所は承認理由を明らかにしていません。憶測ではIIP社アラン・ゴールド会長が、過去に共同創業した2社をニューヨーク証券取引所に上場した実績がある点が関係していると言われています。
IIP社は株式公開で、US$1.75億(約200億円)の資金調達を見込んでいました。この資金を使って、医療大麻企業 PharmaCann社がニューヨーク州で保有する医療大麻栽培施設を買収する予定です。
アメリカでは、大麻ビジネスはその事業性からも密かに注目を集めていました。嗜好用大麻をいち早く解禁したコロラド州では、2015年に大麻からの税収がUS$1.35億(約155億円)にも達しました。この税収額はアルコールからの税収を上回る規模です。
また、アメリカのリサーチ会社によると、2015年の合法大麻市場規模はUS$54億(約6,150億円)で、前年から17%伸びていることが発表されています。
先行き不透明感が漂うIPP社の今後
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ビジネスが広がる可能性を感じさせる大麻業界ですが、世間の評価は必ずしもポジティブなものばかりではありません。
IIP社の株式公開では計画した資金が調達出来ず、計画US$1.75億(200億円)に対し、集まった資金はUS$9,200万(約105億円)でした。
IIP社の株式公開目論見書には、「医療大麻の使用は、連邦法では依然として違法状態にある。そのため、法規制が強化された場合には弊社や弊社テナントの業務の遂行が不能になる場合がある」とそのリスクが記載されています。
IIP社が上場する直前には、大麻情報SNSのMassRoots社が上場申請をしましたが、ニューヨーク証券取引所は上場を却下しました。
このように先行き不透明感が漂うIPP社ですが、トランプ次期大統領がどのような政策を掲げるかにより、事業が大きく左右される可能性があります。
今後のIPP社を取り巻く環境に注目したいと思います。