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配車アプリが普及しつつある
ITベンチャーの中で「近年、最も成功している企業は?」とアメリカ人に聞いたとき、Uber社を挙げる人は多いようです。日本では認知度が高まりつつある段階ですが、アメリカの都市部では、Uberは生活の一部として定着しています。
Uber社の企業価値は600億(6.9兆円)を超えると言われており、この数字を見る限りUber社は成功しているといっても過言ではないでしょう。
日本ではUberを参考にしたと言われている“あるもの”が次第に普及しています。それは配車アプリです。大手タクシー会社独自のアプリや中小タクシー会社連合のアプリは勿論、Lineなどの異業種までが参入しています。
年末年始の忘年会シーズンや悪天候の時、タクシー乗り場には長蛇の列が出来ていて、テンションが下がってしまう経験をされた方も多いと思います。そのような時に威力を発揮するのが配車アプリです。配車アプリで予約していれば、長い列に並ぶストレスから解放されます。
タクシーユーザーのニーズは万国共通です。タクシー事情が余り良くない東南アジアで、存在感を見せている配車アプリサービスがあります。今回はシンガポールに拠点を置くGRAB社をご紹介します。
“マレーシアではタクシーを拾えない”この一言からビジネスを思いつく
出典:www.grab.com
ハーバード・ビジネススクールに通っていたAnthony Tan氏は、クラスメイトからマレーシアでタクシーを拾うのがいかに大変か頻繁に聞かされていました。このクラスメイトの愚痴を繰り返し聞いていたTan氏は、あるビジネスを思いつきます。
Uberを参考に、Tan氏は配車サービスのビジネスプランを練り上げます。2011年、そのビジネスプランでハーバード・ビジネススクールのビジネスプランコンテストに参加します。結果は2位でアジア人のチームとしては、過去最高の評価を受けます。
2012年、クラスメイトのTan Hooi Lingを誘い、Tan氏はGRAB社を立ち上げます。MyTeksiと名付けた配車サービスをマレーシアでスタートさせたGrab社は、ユーザーから予想以上の評価を受けます。Tan氏に愚痴をこぼしていたクラスメイトと同じように、多くのタクシーユーザーが現状に不満を持っていたのでした。
三方良しを実現したGrabのビジネスモデル
出典:www.grab.com
マレーシアでの好感触を踏まえ、Grab社は東南アジア隣国にサービスを広げて行きます。GRAB TAXIと名称を変えて、2013年にフィリピンへ参入します。その後、シンガポール、タイ、インドネシア、ベトナムへもサービスが広がっていきます。
GRAB TAXIの成功は、タクシーの運転手と利用者、そしてGrab社の三方良しのビジネスモデルにあるのでないでしょうか?シンガポールの場合、GRAB TAXで配車を頼むと手数料として、お客は3シンガポールドル(約240円)を支払います。この内、GRAB社の取り分は僅か0.25シンガポールドル(約20円)だけで、残りはドライバーのものとなります。お客もタクシー待ちのストレスから解放されるので、3者がメリットを享受出来る形になります。
東南アジアでタクシーを使うと、国によっては不当な料金を請求される場合がありますが、GRAB TAXIならその心配はありません。なぜなら、GRAB TAXIで配車をすると、その料金が表示されます。さらに料金をクレジットカードで払う事が可能で履歴が残るため、ボッタクリにあう確率が減るのです。
ソフトバンクから東南アジアで最大規模の資金提供
東南アジアで普及が進むGrab社ですが、特にシンガポールでは人々の生活には欠かせないものとなりつつあります。6カ国合計で35万人のドライバーが登録され、アプリは1900万回ダウンロードされているようです。
勢力を拡大するGRAB社は、投資対象としても注目を浴びます。2012年の創業以来、大手ベンチャーキャピタルなどから順調に資金を集めたGRAB社でしたが、2014年12月にソフトバンクからUS$2.5億(約290億円)の資金提供を受け、世間を驚かせます。ソフトバンクからの投資は、東南アジアのIT企業では最大規模のものでした。
さらに2016年12月にはホンダから戦略的投資を受けたGRAB社は、シンガポールで自動運転タクシーサービスを提供しているnuTonomy社と提携を発表し、次の一手も打っています。今後のGRAB社の発展に注目しましょう。