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リードタイム-膨らむ在庫、落ちる品質-
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リードタイムは生産管理でよく使われる単語で、工程に着手してから完了するまでの時間のことを指します。調達にかかわる調達リードタイムや、生産リードタイム、販売リードタイム、全てを合わせたトータルリードタイムなどに分かれています。
リードタイムが長くなると、仕掛品(未完成の部品)や在庫が増え、保管コストも増え、結果的には品質の低下にもつながります。
リードタイムの短縮にあたってはリードタイムの中身を2つの時間に分けます。それは、「加工時間」と「停滞時間」です。
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「加工時間」はその名の通り、実際の加工やそれに伴う作業の時間を意味しています。「停滞時間」は、検査時間や運搬時間、前の工程を待つ手待ち時間などのことを指しています。
一般的に、この「停滞時間」をいかに減らせるかというのが、リードタイム短縮の主な焦点です。今回はこのリードタイム短縮に使われる考え方、「ECRS(イクルス)の原則」について紹介します。
ECRSの原則は製造業のリードタイムの短縮だけでなく、あなたの仕事のムダの排除にも役立ちます。この機会に心得ておきましょう。
ECRSの原則-なくして、あわせて、替えて、単純化-
ECRSは4つの考え方から構成されています。
E:Eliminate 排除できないか
C:Combine 統合できないか
R:Rearrange 並べ替えられないか
S:Simplify 単純にできないか
上記4つは上から順番に改善効果が高くなっています。したがって、ECRSの順番でそれぞれの観点を考えていくのがECRSの原則です。
E:Eliminate
まず1つ目のEliminateでは、作業をなくせないか、やめられないか考えます。目的を再確認し、目的に対してあまり必要のない作業は排除します。コストや手間がほとんどかからないのがEliminateの特徴です。
C:Combine
2つ目のCombineでは、複数の作業をまとめて同時に行えないか考えます。作業を統合して行うことで、より効率的なプロセスができ、リードタイムの短縮につながるのです。Combineも比較的コストがかからない改善手法となっています。
R:Rearrange
3つ目のRearrangeでは、作業の順番を変更できないか考えます。工程の変更によってリードタイムの停滞時間が大幅に削れるケースもあります。ジョンソン法などが有名です。Rearrangeはある程度の変更を強いることになりますが、全体的に見れば小さなコストです。
S:Simplify
4つ目のSimplifyでは、もっと簡単な作業、単純な作業にできないか考えます。作業の一部を省略しても、生まれる成果は同じである場合があるので、その場合は積極的に単純化、簡潔化を狙いましょう。
Simplifyは前の3つに比べると作業そのものを変更していくので、多少のコストにはなりますが、リードタイムの短縮にとどまらないコストカットも期待できます。
ECRSは取り組むためのコストが低いものばかりなので、積極的に活用していきましょう。
ECRSと整流化でリードタイムを短縮する
リードタイムの短縮法は一般的に4つあるといわれています。
- 整流化 :工程間の分岐・合流の簡潔化する
- 同期化 :工程間の作業時間や生産量を無駄が出ないよう揃える
- ライン化:設備を工程順に並べる
- 1個流し:1個ずつ加工できる設備にする(小ロット生産)
この中で、ECRSの原則を最も適用しやすいのが「整流化」です。その名の通り、流れを整えるのが整流化の目標となります。
ECRSの活用例を挙げます。
【Eliminate】
必要でない工程BをEliminateしました。
【Combine】
類似した工程B,CをCombineしたことで、運搬時間、保管時間が抑えられます。
【Rearrange】
工程Aと工程Bの順番を入れ替えることで、より効率的な運搬経路の確保や在庫管理のムダの削減を狙います。
【Simplify】
今まで溶接で行っていた接合工程をビス止めに変えることで、コストを抑えます。
このようにしてECRSはリードタイム短縮のために活用されています
ECRSであなたの仕事も整流化?
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ECRSの原則やリードタイムの考え方は生産現場だけに当てはまることではありません。あなたの生活プロセスや、仕事のプロセスを振り返ってみてください。
やらなくてもいい仕事をやっていませんか? ⇒Eliminate
まとめて一気にやれば効率的なことはありませんか? ⇒Combine
順番を見直せば捗る仕事はありませんか? ⇒Rearrange
もっとシンプルな仕事に改善できませんか? ⇒Simplify
メインの業務から、メールのチェック・返信、資料の整理やミーティングなど、改善できる部分、無駄に長いリードタイムはいたるところに存在します。仕事の流れを整えて、生産性向上を図りましょう。
覚えておこうECRSとリードタイム
ECRSの原則とリードタイムについて紹介しました。製品のコストカットは大量生産や経験効果だけでなく、こういった様々な手段で支えられています。
また、私たちの日々の仕事・生活にも生産管理の考え方は活用できます。ぜひ、生産管理について学んでみてください。
⇒「仕事の5Sとは?」