今回のインタビューは、株式会社スマートバリュー・渋谷順さんに、「家業からIPOを目指したきっかけ」「IPOに向けた最大の苦悩」「IPOを目指す人へのアドバイス」を伺いました。
【略歴】
平成26年3月大阪経済大学大学院 経営学研究科 卒業
昭和57年4月株式会社菱和商工入社
平成18年10月株式会社SDVホールディングス(現:当社)代表取締役社長就任
株式会社スマートバリュー 代表取締役社長就任(現任)

事業内容

株式会社スマートバリューという会社です。創業から88年経っていまして、私の代になって20年間ぐらいで、少し業態を転換しました。元々は町工場ですが、今現在はクラウドのソリューション事業と、モバイルの事業、このふたつのセグメントで事業を構成しています。

IPOを決断したきっかけ

創業から88年で、私は3代目ですが、引き継いだのが20年と少し前です。その頃から、たまたまモバイルや、インターネット、今のクラウドの方向に、新しい分野に道が開けたのですが、そこへうまく進むことができて、当時社員20名程度の町工場からは業態の転換が図れて、それなりに規模が大きくなりました。途中では、それこそインターネットITの事業の部分では、アントレプレナーとして、新規にベンチャーを立ち上げたりしていましたが、そのときには非常に苦しいこともありました。事業を継承するということと、ベンチャーを立ち上げるということと、両方を私は経験をしてきました。
20年位かけて、一定のところまできたところで、次のステップとして、例えば、100周年、2028年が創業100周年になりますが、もっというと、その後200年、300年というような継続性を鑑みたところ、これからの事業の展開も含めて考えると、ガバナンス、コンプライアンスをきちんとすることと、事業の成長性に対して、資金調達をしっかりすることや、多様な取り組みが必要だなと考え始めていたときに、そのようなことを手掛けていくのであれば、IPOというひとつの選択肢があるということで、そこに向けてチャレンジをした、という経緯です。
3代目で、家業から業態展開をしましたが、それなりにいろんな方々との関係性もある中で、「上場する必要なんかまったくないでしょう」と言われました。上場する直前まで資本金1000万円で、私と私の兄、親族だけで100%運用していた会社ですので、「上場する必要、ほんとないですよね」ということは、盛んにいろんな方に言われましたが、それでもこれから先を見据えた際には、永続するということも含めて見据えた際には、判断として、上場する、IPOをする。しかしながら、きちんとしたオーナーシップは持ちながら、事業の承継はしっかりと行っていく、という選択肢をとりました。

IPOに向けた最大の苦悩

大変なこと、本当にたくさんありましたが、上場の準備をしてから上場までの時間軸では、「絶対最短でやるんだ」ということを決めていたので、3年間しかやらない、というぐらいの心意気でやり始めたので、実際3年間でちょうど上場できました。しかし、あやふやだったものが、すべて明確になっていった、というプロセスだと思っています。
それは様々な統制活動、内部統制も予算統制もそうですが、今までなんとなく属人的に、なんとなくぼんやりとやっていたことが、すべて明文化されていったり、その過程では良いことと悪いことがはっきりしすぎた、ないしはできる人とできない人、ということはないですが、ある程度、いろんなものが明確になっていく中では、やっぱり辞めなければならない事業があったり、場合によっては、去らなければならない人が出てしまったり、そういうようなことがありました。今までなんとなく、ふんわりと、ぼんやりと、なんとなくうまくやれていた関係が、明確になりすぎたことで、離れる社員が大分いました。これはすごく辛かったことですし、すごく反省もしました。他にもいっぱいありますけど、一番辛かったのはそこだと思います。

IPOを目指す人へのアドバイス

事業システムの付加価値の高さがあるかないかによって、その数字のリアリティーや、実際の成長性は、ある程度分かってしまうので、それをきっちりとお持ちの会社であればなんとでもなると思います。
実際IPOをしている会社で、素晴らしい会社、何社もありますけど、私自身は実はそうではなくて、BtoB、ないしはBtoGと呼ばれる分野で、ひとつひとつ積み上げながらやっていくようなビジネススタイルでしたので、着実に成長するという、そういうスタイルでした。
いろんな過程の中では、数字のプレッシャーもあれば、いろんなことを整備しなければならないというプレッシャーも非常に強くて、当たり前ですが、しんどいことがたくさんあります。しんどいことがたくさんあったときに、あきらめずに、そこを乗り越えられるだけの強い信念が必要ですが、そのときに僕がすごく感じたのは、人間の欲求、根源的な欲求に紐付いた動機付けが、どれだけ持ててるかということが、実はすごく大事だと思っています。これだけ辛いことがあると、上っ面だけでやってる人たちはしんどいです。そして、楽なほうに流れたり、もっと軽く考えたり、あきらめてしまうケースも非常に多いと思っています。本当に自分が決めた時間軸で、ここまでに必ずやるんだと決めたのであれば、なぜそう決めたんだ、という、自分の心の中、自分の生き様に対するストーリー性というか、根拠みたいなものが、どれだけ強く持てているかによって、それを乗り越えられるかどうかは決まると思っていますので、そういう心持ちだけは、しっかりと大切にしていただきたいと思います。それがあれば、IPOは絶対できますね。
 
スマートバリュー・渋谷順代表:IPO達成を支えた「座右の銘」とは?【後編】はこちら

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