市場選択のミスから学んだこと

市場選択のミスから学んだこと


-現在に至るまでにどのような失敗がありましたか?
一番の失敗は、市場予測を立てずに意思決定してしまったことです。また音楽の話ですが、僕が14歳の時はまだインターネットが発達していませんでした。最高にCDの売り上げが上がっていた時です。そのタイミングで、絶好調の時に僕は手を出してしまった、これが一番大きな失敗だったと思います。
自分がプロ活動を始めた2002年頃は、音楽業界のCDの売り上げが約10分の1程度に下がっていました。まずは、ビジネスモデルを考える、事業を選択する中で一番重要視されるものは、市場が伸びる成長産業に対して手を出さないとダメだなということをこの5年間で痛感しました。
もし僕が推測を立てることでき、今後ITが伸びると分かっていれば、間違いなく僕はシステムエンジニアと経営の勉強をしていただろうなと思います。その時の情報不足と市場選択のミスが僕の一番のミスです。
逆にそれに早い段階で(失敗だと)気付けたのが良かったと思います。市場の選択をいかに見誤らないかというところは、現在も活かしています。20~30年その産業に費やしても、ちゃんと時代が押し上げてくれれば事業は成長します。これは孫さんから学んだやり方ですけどね。
-選定ポイントというのはやはり成長性なのでしょうか?
市場が勝手に押し上げてくれるというのと、No.1が取れるということですね。しかもただのNo.1ではなくて、圧倒的なNo.1が取れるかというところを非常に重要視しています。
二番や三番でいいと思えば完全に市場に淘汰されてしまうという危機感を持ちながらやっているというのが一番の失敗だと思います。

働きやすい環境を

-人の面で、何か失敗はありますか?
いっぱいあります。自分の器のなさで、意思決定をミスして非常に悲しい思いをさせてしまって社員が辞めてしまった経験もあります。
僕はヒト・モノ・カネの中で一番ヒトが大事だと思っています。世界で有名なGE(ゼネラル・エレクトリック)はだいたい売り上げの0.6%を教育予算に使っていると起業する前から知っていたので、「じゃあうちは教育予算に1%使おう」と決めました。
社員にはMBAスクールや英会話教室に通ってもらっています。
福利厚生面でも家賃手当を会社から半径3kmまでで3万円出したり、社員の60%を占める女性がいかに働きやすい環境をつくるか、30%いる外国人の社員のためにダイバーシティ理論を早期に取り入れました。
ヒトの失敗のリスクを減らすために土台を作りながらやっています。僕が営業会社に勤めていた時は90%が男性だったので、うまく男女比率、外国人比率をコントロールしながら採用活動を行っています。

すぐに実践に活かすことの重要性


-グロービスの経営大学院に通われている経緯や、そこで感じるメリットなどを教えていただけますか?
マッキンゼー流やハーバード流のマーケティングや会計理論を実践しながら本で学んでいましたが、絶対漏れがあるだろうと感じていました。
今後は我々も、世界でどのように戦っていくのかを考えた時、世界共通で戦えるフレームワークを体型的に学んでおかないと、後々リスクになると思い、経営大学院の門を叩きました。
メリットというと、良い面でも悪い面でもあったりしますが、実際実務で使える内容は良い意味で20%もないと思っています。むしろそれで十分だなと思うところがあります。
正直言うと全て覚える必要がないので、3時間授業があると30%はパソコンを打っています。先生が10教えてくれたことを僕は2を学べば、後の8を全部切ります。
そしてその2を実践で活かすにはどうしたらいいのかを、その3時間の内に徹底的に考え、それを実践・行動・計画マップに落とし込んでやるという構成を組みます。
3時間ある中で2つか3つは実践で投下できるようにやっているので、人よりもアウトプット、すぐに技術につながるという方向性で学ぶことができているところが僕の中で感じるメリットです。
実は昔からこういう学び方で、実践に使えないものはすぐに切り捨てるという方法論を取り入れてやっています。
-様々な業種の方が参加されていると思いますが、どういう方に一番適している学びの場だと思いますか?
やっぱり即実践じゃないと意味がないとい思っています。
特に会計理論やファイナンス理論は数学的な論理を活用します。これは多分使わないと1~2年で忘れてしまうんじゃないかなというのがあるので、「即実践に使えるのか」、「自分の中に体系化できるのか」というところを意識しながら動ける人が一番メリットが高いのではないかと思います。
グロービスで学ぶ内容は非常に濃いもので、実戦で使えるものが沢山あるのですが、逆に情報量が多すぎることによって実際何をやったらいいのかわからない人が意外に多いと思います。
僕はそれをその3時間の中でも3つ仕組化・体系化しています。
-経営者に役立つフレームワークというのはありますか?
僕は孫さんを基礎の土台として勉強しているので、経営者で一番大事なのは、「経営者はコックピットの中にいるイメージを常に持て」という言葉だと思っています。
常に自分の周りに情報が集まる状態を作り、それを異常か正常か見極めて意思決定をするという状態をいかにスムーズに作るかというところを常に意識しています。
これはフレームワークというか、そういう状態を作り、自分で考えて決めることが自分の仕事だということを意識しながらやっていることです。

-その他に、経営者として大事にしていること、実践していることはありますか?
簡単なことですが、健康を大事にしています。運動は優先順位が第一です。実は僕は運動が一番嫌いなので、嫌いなことを先に終わらしておくと、会社での経営が簡単に感じます。
運動をするとメンタル力も鍛えられます。いざ経営で意思決定するときはメンタルが大事です。
これはGMの熊谷さんがそう言っていたので真似をしました。この一年間、週1~2回パーソナルジムに通い、朝は毎日ストレッチをすることで、過去最高の体力とモチベーションを維持しています。
あとはやっぱり本ですね。高校の時から月に10冊ぐらい読んでいました。本は読めば読むほどどんどん知識レベルが上がってきて、読むスピードも吸収レベルも速くなるので、気づいたら今は月に100冊程度、1冊10~15分ぐらいで本の本質を理解します。
それぞれの本から3つ抜き出して実践に投下するという流れがうまくできつつあるので、どんどん本を読むのが速く、楽しくなってきています。そしてやっぱり大事にしているのは圧倒的な知識量です。
本を通していろんなクオリティの高い情報をいかに集め、それを自分の中に投下して意思決定するかが大事です。
-企業のステージに関係なく、嫌なことは先に行うということなんでしょうか?
そうですね。むしろ忙しいときほど運動して、本を読もうという意識をもっています。忙しいから本を読めないのではなく、読まないから忙しい、逆だと思っています。先に勉強する時間、運動する時間を取ると逆算して考えられるようになります。

成功しようと思わないことが大事


-最後に、起業志望者の方や、勢いのあるベンチャーで働きたいと思っている方に何かメッセージをお願いします。
成功しようと思わないことかなと思います。
10回失敗する覚悟を決めて起業すれば自ずと成功するんじゃないかなと。「僕は絶対成功する器なんだ」と思わないでやっていくのが大事なんじゃないかと思います。
10回失敗して回成功したらいいんじゃないかなという覚悟でやると、意外と上手くいきます。
また、上手くいっている時はほとんど運が良かっただけだと思っています。その中で調子に乗らずに、運が良い時に運が悪くなったときのための投資をどう行うかというところを意識してやると、自ずと成果は出てくると思います。
特に学生起業家は「自分を中心に地球が回ってるんだ」というふうに勘違いして、周りへの感謝の気持ちや謙虚さを失う方は多いので、9回ぐらい鼻を挫かれる覚悟を持ってやるのがいいんじゃないかなと思います。
-ベンチャーで働きたいという方に、勢いのあるベンチャーの見極め方などありますか?
ビジネスモデルが時代の整合性にあっているのかということと、やっぱり経営者の器じゃないですかね。何を目指しているかということや教育体系が備わっているのか、あとはチャレンジできる環境にあるのかということです。
自分が発言した内容に対してすぐに決まっていくのか、その代わり責任も与えられる環境があるのかというのが重視すべきポイントなんじゃないかと思います。
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